「ひーくーん」
「あいつらまたか…」

ドアを開けた先には何時ものように避難してきた雫の姿。
兄であるあの双子が喧嘩をする度に来るからか、すっかり我が家にも馴染んでいた。

「で、今回はどっちだ?」

自主避難かゼロに言われてかのどちらかで駆け込む雫に問えば、零兄さん。と返ってきた。
つまり今回は透が何かやらかしたパターンか。
つーかあいつはいい加減ゼロのフリして女を口説くのやめた方がいい。
醜い妹争奪戦の始まりは殆ど透がふっかけているせいだ。
自主避難の時は大抵あの二人が喧嘩に夢中になって妹を放ったらかしにした時。

「まぁ何もないけどゆっくりしてけよ」
「うん、ありがとうひーくん」
「どういたしまして」

さて、今頃喧嘩に勤しむ双子は知っているだろうか。
自分達が取り合いをしている可愛い妹が俺の膝の上で寛いでいることを。
あぁ、多分これ見られたら俺殺されるんじゃねぇかな。って思いもするが、にこにこ笑ってギターを弾いてくれとせがむ姿を見たら何も言えないのも仕方がない。
幼い頃はあんなに可愛げのなかった子供は、今では愛想のいい可愛らしい少女へと育ったわけだ。
しかもこの無邪気な顔が向けられるのはテレビの中のヒーローか、兄や俺等の身近な存在に対してのみときたらそりゃあもう可愛がるのも当然だろう。

「ひーくんすごいね」

後ろから抱きしめるような形でギターを弾けば、不意に振り向いた顔。
普段は不安になるくらい青白い頬はうっすらと赤みを帯びていて、きらきらと輝く瞳が至近距離で俺を見つめる。
…これが無自覚だからあいつらの教育はどうなっているのやら。
まぁ他の野郎には絶対にしないし、そもそもこんなに近づくことはないが、それがまた俺を悩ませる。

「…はぁ」
「ひーくん?」

そんな顔を至近距離で見せられてキスするなって方がどうかと思う。
流石にまだ死にたくはないのでギターを手放して抱きしめるだけに留めた俺は実に理性的だと思う。
あの双子だったら絶対キスしてる。特に透はする。絶対にする。なんなら触れるだけの軽いものでは済まない気がする。
かと言ってゼロは何もしないかと言えばそれはあり得ない。
透がやったらあいつも絶対に手を出すだろうし、あいつは流れができたら一気に押すタイプじゃないか?

「…お前の兄ちゃん達どうなってんだろうな」
「なにが?」
「…いや、やっぱなんでもない」

結局のところ、俺もあの双子同様このかわいいお姫様に骨抜きにされたってことか。
もう一度溜息を吐き出して、その薄っぺらい肩に顔を埋めた。
ボロボロになった双子がお姫様を迎えにくるまであと数分。
それまでは俺が独り占めしたって問題ないだろ?

ーーーーーー
双子セコムの唯一の盲点は景光くんでした。
かっさらっていきそうなスコッチについてコメントくださった方ありがとうございました!
こっちの降谷お兄ちゃんはナイトだけどひーくんは王子様になれる気がする(笑)




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