「俺だ」
「オレオレ詐偽なら間に合ってます」
「…赤井だ」
「ハナからそう言え」

いや、本当は声で分かったけど、今まで連絡がなかった事と、いきなり電話してきた事への当て付けである。
というか何年振りだ?二年くらいか?
ライがFBIの赤井秀一であると組織にバレ、逃げたと兄伝に聞いてから今の今まで連絡がなかった上に開口一番で俺だ。とかオレオレ詐欺まがいのことやってきてんだからこれ位いいだろう。

「お久しぶりですね。日本に戻られたんですか?」
「ああ、まだ君への借りも返していないからな」
「首を長くして待ってたんですから、利子もたっぷりついてるんで頼みますよ」
「きっちり耳を揃えて返すさ」

嗚呼、赤井さんの存在がこんなに安心するとは…
ジン捕獲作戦とやらの失敗とNOCだと分かったと兄から聞いたときはそれはもう、一瞬絶望したよね。
だって私が知る唯一の正義の味方がこの人だったし、兄にバレないように情報まわしてたのも赤井さんを頼りにしていたからこそだ。
シルバーブレッドと恐れられてる程の人だ。そんな人を失うのは惜しい所の話じゃない。

「次こそは必ず仕留めてみせるさ」
「期待してますよ、シルバーブレッド」
「ああ、そういえばもう一人心強い仲間ができてな」
「その情報だけで三徹は余裕で働けそうです」
「無くてもそれくらい働くだろう君は」

当時は五徹という地獄も味わっていたが、その頃を知る赤井さんからしたら予測済みなんだろう。

「どんな方なんです?」
「とても優秀な少年だよ」
「おっと、そこから先はやめてください。未成年はちょっと関わりたくないんで」
「聞いて仕舞えば君にとって護る対象になってしまうからな」

いやほんと仰る通りで。
いくら頼り甲斐があれど未成年となれば常に気を張って護ろうとしてしまう。
そうなればただでさえ自分の事で精一杯なのに更なる多忙を極める羽目になる。
少年の動向を四六時中追いながら、組織が感づかないように常に気を張るなんて無理だ。
ここは聞かなかった事にすべきだ。

「近々会いにいく、部屋は以前と同じか?」
「変わってませんよ。シフトの調整と兄が来るタイミング外せるようにしたいんで、携帯準備できてたら早めに連絡入れといてください」
「ああ、また連絡する」
「お待ちしております」

さて、希望はまだまだ捨てたもんじゃないな。
あの時からかわったことと言えば、医者としての腕が上がって更に多忙を極めた事くらいか。

「焦らずゆっくり確実に頑張りますか」

ちょっとでもボロが出ればバレる。
そうなってしまえば全てが水の泡だ。

「うし、がんばるぞー」

少しだけ、気分が楽になった気がした。






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