なんやかんやあって纏まった休日を5日ほど手に入れた社畜ですどうも。
医院長である父が私の労働環境に見兼ねて優秀な医師を5日だけ呼び寄せたおかげである。
本当に父には頭が上がらない。
休み明けは五徹する気持ちで頑張ると告げたら休みの意味わかってるのかと怒られたので、三徹までにしようと思う。
「名前さんって好きな人とか居ないんですかぁ?」
そして私は何故、女子高生と喫茶店で恋バナをしているんだろうか。
ちょっとよくわからない。
コナンくん繋がりでいつの間にか知り合いになった蘭ちゃんと、これまた繋がりで知り合った園子ちゃんの二人と、私を呼びに来たコナンくんの三人で座っている。
なんだこれ。
「ねぇコナンくん」
「ごめんね名前さん。断れなくて…後で昴さんの所一緒に行くから許して」
「さてコナンくん、食べたいものがあったらなんでも注文していいよ」
「昴さん?もしかして名前さん沖矢さんと知り合い?」
園子ちゃん耳いいのね。
そして昴さん顔広くね?
「沖矢さんも素敵ですよね」
「昴さんの良さがお分かりですね蘭ちゃん。あの人はずるいと思うんだ。理想を詰め込み過ぎて惚れる以外の選択肢が存在しないと思うんだよね」
「名前さんって昴さんみたいな人がタイプなんだ。因みに安室さんもすっごいイケメンだけどどうなの?」
「いや、安室さんはないかな」
「ちょ、名前さん!聞こえますって!」
「いや、だって安室さんだし。断然昴さんかな」
焦る蘭ちゃんにそう返せば、引きつった顔のコナンくんに袖を引かれた。
「どうしたの?」
「流石に耳に入っちゃうからやめた方がいいよ」
「でも事実だし」
「だからそれ、それもヤバイって」
「え、だって昴さんむちゃむちゃ素敵じゃん。惚れるじゃん。結婚したい」
「へぇ、名前さんの好みの男性のお話ですか?是非僕にも聞かせて欲しいなぁ」
「あ、安室さん!?」
いつの間にか席にいた安室さんに、驚くコナンくん。
来たなイケメンナルシスト。
「名前さんってインテリ系が好きみたい」
「インテリ系ですか。それはまた名前さんとは真逆の方ですね」
ねぇ今喧嘩売られた?
悪気のない笑顔で喧嘩売られた?
「で、でも、名前さんってお医者さんだし、頭もいいから沖矢さんとお似合いですよね」
「あー、確かに、沖矢さんって落ち着いてるし、包容力ありそうよね」
「そうそう、名前さんお仕事忙しくて疲れ気味だし、沖矢さんみたいに全部受けて止めてくれそうな人が合ってそうですよね!」
「やっぱり?そう思う?そうだよね、昴さん素敵だよね?結婚したいくらいには好き」
思わず勢いで零した言葉に、女子高生二人が黄色い声を上げた。
あ、やばい、私なんかまずった?
視線でコナンくんに問えば呆れた顔で頷かれた。
しょうがないじゃん事実だもん。
「け、結婚ですか!?」
「うん、料理もできるみたいだし、最高だよね」
「でも料理なら安室さんも上手よね。ギターだって弾けるし!」
「いや、別にそんなスキル要らなくない?料理できて優しいって完璧じゃない?やっぱ昴さんだよ」
「僕は名前さんにとって優しくはないんですね…」
あ、まずったわ。まずった。完全に私やらかしたわ。
流石の私も自覚した。
これ後が怖いやつだ。
「僕、できれば名前さんとはもっと仲良くなりたかったんですが…」
「きゃあ、もしかしてこの展開って…!」
「ちょっと、どっちにするのよ名前さん!」
やめろ近づくな私の手を握るな安室透。
その態とらしい悲しげな顔をやめろ。
あと騒ぐな女子高生やめろ。
他に客がいないからって好き放題するな。
助けを求めるようにコナンくんを見れば、僕トイレーと言って逃げられた。
あのガキ、覚えとけよ。
「名前さんが食べたいと言うのなら、料理だってお作りしますよ?」
「あのほんと、近い、近いんで一旦離れてもらっていいです?」
「名前さんの元気な姿をもっと見ていたくて…」
きゃーって言うな騒ぐな女子高生二人。
悲鳴を上げたいのは私の方だ。
勿論恐怖で。
人の頬に手を当ててにっこりと甘くとろけるような笑みを向けてくる安室透。
こいつ絶対楽しんでやがる。
「ちょ、名前さん!早く決めなさいよ!」
「園子、そんなに急かしたらダメよ…!」
いやほんと、全くもってその通りである。
ここで下手に答えたらその後会うのが恐ろしいが、嘘を言う気もなく、ならば本音しかないか。
「普通に昴さんがいいけど」
ぴしり、目の前の笑顔と、トイレ帰りのコナンくんの動きが止まった。
あ、やばい、またミスったなこれ。
「じゃあ昴さんに告白するんですか!?」
「もしかしてもうしたとか!?」
「うん、した」
きゃー!と再び上がる歓声。
「なんなら結婚したいとまでいった」
今度は手を取り合ってはしゃぐ女子高生に、恋バナって格好の餌なのだと悟った。
「ね、ねぇ名前さん、僕お外行きたいなぁ。名前さんも一緒に行こ?」
「それで、返事はもらったんですか?」
「そうそう、どうだったのよ!?」
「うまくいきましたか!?」
一番押し気味できたのが安室さんなのはビビったんだけど。
まぁ赤井さん疑惑はまだ完全に消えてはいないっぽいしな、その関係もなきにしもあらずってとこか。
「未だに私の片想い」
「ええっ、それってフラレたってこと?」
「それでも好きって事なんですか?」
「好き好きむっちゃ好き。会うたび言うくらいには好き」
「名前さんって押しが強かったんですね…」
「なんか意外だわ…」
いや、あれが実在する人物だったら言わないけど、中の人が居るってわかると変に吹っ切れて言えちゃうだけだからな。
だけどそんなこと言おうものなら赤井さんの変装であるのとがバレそうなので黙っておく。
「叶わないと分かっていて、思い続けるんですか?」
「まぁ、アイドルのファンみたいなもんですかね」
「「へ?」」
安室さんの質問に答えれば、さっきまで騒いでいた女子高生二人がこちらを凝視する。
え、そんなに変な事いった?
「だってあんな素敵な人が恋人だったらときめきすぎて心臓止まるし。それに言うだけならタダだし言いたいだけ言ってチヤホヤしたいなって」
「それって…」
「ただのファンじゃん」
「ミーハーな園子ちゃんには言われたくないんだけど」
どうせ安室さんにも怪盗キッドにも昴さんにもキャーキャー言ってたんでしょ貴女。
「さて、じゃあコナンくん行こっか!」
「う、うん」
「安室さんお会計お願いします」
なにやら不満そうな女子高生二人の分も先に支払って、昴さんの元へ向かうことにした。
「ねぇ、もし昴さんの正体バレた時どうするの?」
「なんで?バレるの?」
「いや、そうじゃないんだけど」
「ほら、抱っこしてるから届くでしょ?ピンポン押して!」
「…うん」
「こんにちは、コナンくんと名前さん」
「こんにちは!」
「…こんにちは」
うん、やっぱり昴さん素敵だぞ。
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