突然だが私はまどろっこしいことが苦手である。
普段から程よく手を抜きながら常に学年ぴったり10位くらいの目立ちそうでいて目立たない場所をキープするのに全力を注いでいたので、人間関係においてはドストレートだった。
そこまで気を遣える程の器用さはない。
なので降谷先輩のクラスを聞き、休み時間に突撃をかましたのである。

「失礼します。降谷先輩いらっしゃいますかー!」

上級生のクラスにいきなり突撃して大声で見知らぬ先輩を呼ぶという快挙をした私を誰か褒めてくれてもいいのよ?
がやがやとした教室内から此方に歩み寄ってきた一人の先輩。

「降谷は俺だけど、何か用か?」

誰だこいつ。
という顔を隠しもせずに来てくれた先輩は、成る程、流石おモテになるだけはある。
色黒の肌に色素の薄い髪。
男のくせにすべすべな肌と耳に馴染む優しげな声音はまるで王子様である。
口調は全く王子様じゃないけど。

「一年の苗字名前です。私の為にどうか顔見知り程度になっていただけませんか?」
「…は?」

そりゃそうですよね。
私もいきなりこんなこと言われたらは?ってなるよ。

「お、なんだよゼロまた告白か?」
「違う」
「じゃあなんだ?」
「俺が知るかよ」

友人なのか茶化すように割って入って来た男子生徒に肩を組まれ、煩わしそうに叩き落とす様はどう見ても王子様とは程遠かった。

「いやほんと、お付き合いしてくださいとかお友達になってくださいとかじゃなくて、ただの顔見知り程度になってほしくてご挨拶に来ただけなんで。私はこれで失礼します」

さようなら!と一方的に手を振って教室を後にした。
いやほんとすみませんでした。
でもこれ私の為なんで、先輩には犠牲になっていただきます。




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