約束通りお酒を奢ってくれるらしいライに着いて行くと、入ったことないようなお洒落なバーでした。
普段外で酒を飲むとなると騒がしい居酒屋が殆どだった為、いかにも落ち着いた大人の空間に一気に緊張が押し寄せる。

「どうした、目が泳いでるぞ」

くつりと笑うライに完全に面白がられている事だけはよく分かった。
つーかこの人モテそうだもんな。
長い足を組みながら座る姿は様になり過ぎて意味がわからない。

「お子様にはファミレスの方が良かったか?」
「流石に私キレていいと思うんだけど」
「冗談だよ。酒はあまり飲まないのか?」

この野郎、一週間世話してくれたとは言え完全に人のこと馬鹿にしてるな。
ここまで冗談言う奴とは思っていなかった。
私の周りにはこんなのしかいないのか?
労働基準局がこい。

「家か居酒屋でしか飲んだことないからビビっちゃったんですー。綺麗なお姉さん連れ込んで飲み慣れてそうなライとは違うんですー」

くそ、ガキの戯言みたいに笑って流すのやめろ。

「なんなら初めてテンション上がってるよワクワクしてるよお子様で悪かったな色男」
「お褒めに預かり光栄だ」
「嫌味だよ」

なんなのこの人ほんと腹立つんですけど。

これをきっかけにライとは酒飲み仲間となった。
やったね、お友達が増えたよ!
増えるんなら苗字名前のお友達がよかったですね。
何が悲しくて潜入先の幹部と仲良くなってるんだろう。

…気絶していた時に現れたかつての友人の話では、ライはFBIの赤井といういう男である可能性が高いが、それを鵜呑みに出来るほど私が置かれている状況は簡単なものではない。
目の前にいるライよりも髪は短かったが、これは現実だ。
例え前世にあったフィクションの世界に似ていても、私は今生きているし、周りも同じ血の通う人間だ。
それに私が居る時点で全てがあのフィクションの内容通りに行くとは限らない。
私は私が見たことを、経験したことを信じたい。
前までは実用的な知識をくれとは思ったけど、今はその話を聞くのが怖い。

まぁあの腐れ友人は腐った話ばかりするので、上司のホモ話は聞きたくないというのも本音だったりする。
だってあの人私の先輩であり現上司だからね。
そんな身近な人が腐女子によってホモにされる話はちょっとしんどい。

いっそ前世の記憶なんて持たずに産まれたらよかったのに。
なんて思うのは罰当たりなのだろう。
命と引き換えに産んでくれた母に申し訳がたたない。

忠犬は忠犬らしく、ご主人様の元へ帰る事だけ考えればいい。
そうすれば死なずに戻ってこれるのだから。



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