Act.5

ついに来てしまった。

Act.5

何故か目の前にある扉から火花が散っている。
スタンドが蔓延っている学校で可笑しい、というのはどうかと思うが、やっぱりおかしいだろう。
扉に触れた時私はどうなるのだろうか。
触っていいものなのだろうか。
キャットが勝手に出てきてやめておけ、と言ってまた消える。
流石にそれには賛同するしかないようだ。
とりあえず蹴ってみる。

「たーのもー」

もう一度キャットがひょっこりと出てきて制服の端を掴んで引っ張ってきている。
逃げようと言ってくるが、このまま帰ると担任が何を言ってくるのか想像したくないので、帰るわけないだろう。
中からの反応が無いのでもう一度蹴ろうとしたのだが、扉が急に開き腕が伸びてきて私の足を掴む。

「誰だ」

頬に変なあざのようなものがある生徒が出てきた。
あざ?模様?
少なくとも普通に一般人とはかけ離れているのはパッと見でわかる。

「あー、テレンスとかいう奴から」
「・・・!あぁ、油か」

ありがとう、とその生徒は言いながら手を離し扉をガラリと開ける。
何故扉を開けなかったのかと聞かれたので、火花が散っているのに開けられるわけないことを伝える。
生徒は苦笑いをしながら扉のそばに立ち、教室の中に腕を伸ばしている。
それはまるでエスコートの様だ。

「入れよ」
「あまり気乗りしないな」

仕方ないと言わんばかりにゆーっくりと足を教室に入れる。
視界を2組の内部に向けると思わず足が止まってしまう。
有り得ない光景がそこには広がっている。
何故コーラの蓋やらスパゲッティの麺やらがそこらかしこに飛び交っていた。

「どうかしたのか?」
「どうかしたじゃねーだろ・・・」

静かに怒りが湧いてくる。
それに合わせてかキャットが姿を現し、生徒のすぐ側に寄っていく。
目元が見えないことからガンを飛ばしているのかどうかは分からないが、多分飛ばしている。
本体の私が飛ばしているんだから多分している。
だが、生徒はそんな目の前にいるキャットに視線があっていない。
無視しているのか、それとも見えていないのか。
全員が全員スタンド使いではないと仮定して、見えていないという可能性は高いだろう。
生徒は私の方を見て若干微笑みを見せて口を開いた。

「確かにそうかもな。始めてくるセニョリータにはちと刺激が強いか」

生徒は少し考える素振りを見せて、おそらくはどんちゃん騒ぎの原因であろう大暴れしている生徒の方を向きもう一度口を開く。

「ジョセフ」

ジョセフと呼ばれた生徒は顔だけこちらに向けてニカッと笑った後、こちらに小走りで向かってきた。

「お、シーザー!それって油だろぉ?やーっと修行できるな!」

【目もくれず】

(私はこういう男は苦手だ)
(例に漏れず二人共だ)

(2017/10/15)歌暖

乱雑カルテット