倉庫




 ベルモットが失踪した。
組織内部は大混乱に陥っていた。もちろん安室自身も、微かな予感と予想はあったにせよ、混乱していた。おそらくベルモットは彼の所に居るに違いない。つい、と混乱の中ひっそりと部屋の隅にたたずむサンブーカに視線を向ければ、やたらと気障ったらしく片目をぱちりと閉じて返事をされた。

 始まったのだ。そう理解した。
近いうちに間違いなく、エテルノはボンゴレの力によって潰えるだろう。機を逃すことはできない。すぐに動けという、無言の通達だと安室は理解した。
 ベルモットが失踪した直後、最もベルモットと近しかったサンブーカはすぐさまジンに疑いを掛けられ、暫く組織の監視下で生活することとなった。しかしサンブーカは慌てもしなければ怪しい行動を取るわけでもなく、少しでも人手の欲しい状況でいつまでも幹部を使えない状態にしておくことはできず、早々にサンブーカの監視は外れることとなった。

 組織の連携が崩れ始めるのに、それほど時間はかからなかった。エテルノの勢力も削られ始めた今、体制の崩れた片方がもう片方に寄りかかって頼ることは難しい。両者を孤立させたうえで、この二つの組織は別々に壊滅させなければ、今後もきっと深く根付いた依存関係によって力を取り戻す。
 そんなことは日本を守る警察が許さないし、イタリアの裏社会を統治するボンゴレも黙っていない。全てをここで終わらせる必要があった。

始めはウォッカだった。崩れ始めた組織の中で無理を通し始めたジンが、既に逮捕された組織の構成員を解放しようと警察に対して強硬策をとった際、バーボンとして作戦に参加していた安室に隙を突かれたために逮捕されることとなった。同時期にはエルシオ側からエテルノの殲滅がほぼ完了したとの知らせも入っており、いよいよ頼る宛の無くなった組織のボスやRAMは逃亡を始めた。

 統制の取れなくなった組織の末端構成員たちは、司法取引目当てで次々と自首しては幹部たちの逃亡先の情報やこれまでの組織の悪事を吐き出した。そのあまりの人数の多さに、一体どれだけの人間がこの組織に関わっていたのだろうかと頭が痛くなるほどだった。それらの情報によって、さらに数人の幹部が捕縛されることとなった。

 この頃にはすでにサンブーカは組織を抜けていた。バーボンはジンにひたすらににらまれ続けながらも、肝心のボスの居場所が分かるまではと精神をすり減らしながらも組織に留まり続けていた。エルシオ経由でベルモットにボスの居場所に関する詳細を尋ねても、ベルモット自身も普段はメールや通話がほとんどで、実際国内に居るのか海外に居るのかすらもあやふやなことが多かったらしい。

 いよいよ戦力も余裕も底を尽き、どれほど信頼を置けずとも幹部の座に座るバーボンやキールにRAMやボスの護衛を任せなければならなくなった、そこが終わりだった。
正式に操作の許可をとったFBIの機動力に、全国に捜査の網を張る日本警察、組織の内部から全てをリアルタイムで監視し続ける安室、わずかな情報から黒の組織という存在の全てを暴く聡明な頭脳を持つ、小さな名探偵。
ジンの思考能力も、神経を数か月すり減らし続けたことによって明らかに低下していたのだろうと考えられた。遠距離で敵の勢力を削ぐことのできるキャンティやコルンはすでに捕らえられた後。末端の構成員たちはここぞとばかりに逃げ出し、少しでも罪を軽くしようとありとあらゆる情報を吐き出し続ける。依存先のマフィアはとうの昔に殲滅されてしまったという。
余力らしい余力など、残っていなかった。ジンは一人、組織を立て直そうとしていたのだろう。その結果、バーボンに組織の中枢たるRAMやボスへ繋がる情報を渡してしまうこととなった。

 終わりは呆気なかった。何一つとして奇跡などではなく、全てが緻密に計算しつくされた末の勝利だった。

 エテルノに関する処理をすべて終えたエルシオが日本に戻ったときには、幾人もの諜報員たちの命を奪った黒の組織に関する一連の事件は、収束していた。


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