倉庫




綱吉の思ったとおり、ルカはイタリア人だった。
数年前から此方に住んでいるらしい。何か奢る、といってくれた彼に、綱吉は、「奢らなくていいから、少しだけ金を貸してくれ。すぐに返す」と頼んだ。
出会ったのも何かの縁だろうしな、と快く承諾してくれたルカを伴って目指すのはラスベガス。
何をするか予想はつくだろうが、もちろん、借りたお金を基にしての手っ取り早い大儲け、つまりカジノである。

綱吉は、ルカに自分は二十歳だと嘘をついた。
当然、童顔な綱吉をルカは嘘だろ、と疑っていたが。
確かに、日本人としては成人していないが、国籍がイタリア人の今、十八歳は成人である。
酒もタバコもOKなのである。
それはともかく、今は何とか生きるために必要なお金を稼がなければいけない。
…軽くイカサマ的な方法ではあるが、ここは綱吉の持つ超直感をフル活用させていただくとしよう。
「なんでまたラスベガスなんだ、アラック?」
「諸事情で無一文なんだよね、俺。幸い勘はいいから、手っ取り早くカジノで儲けようかなぁと」
なんてことないように答えた綱吉に、ルカはぽかんとした表情をして、次いで弾けたように笑い始めた。腹を抱えて苦しそうにひとしきり笑ったあと、ルカは笑っているうちに出てきた涙を拭った。
「いや、最高。クールだぜアラック!面白いやつだなぁお前!あっははは!!ひぃっ」
「ルカ、笑いすぎ!死活問題だから!稼げなきゃ俺餓死しちゃうからね!」
落ち着いたかと思えば再びぶり返して笑い続けるルカを伴い、綱吉はカジノに足を踏み入れた。





ルカ・グレーコは、夢を見ているのかと自分の目を疑った。
勘は良いほうだと自負していたアラック。童顔で、二十歳だと言われても到底信じられないような見た目をしている彼が、カジノで大儲けできるとは、正直思っていなかった。
…今のこと状況を目にするまでは。
「っテメェ、絶対イカサマしてやがるな!?」
「だから、してません!勘がいいだけですってば!」
アラックは見事、ルカの貸したほんの少しの金から、ここまで大儲けして見せたのだ。しかも、全勝で。
そりゃあイカサマを疑われるわけだ。
ルカも多少のイカサマまがいのことは出来ないこともないし、見破るのは得意だ。アラックをずっと見ていたが、イカサマをしている様子はなかった。
バカみたいにイカサマが上手いか、それともアホみたいに勘がいいのか。
ともあれ、どうやら自分にはとんでもなく面白い友人ができたようだとルカは思った。
「マジかよアラック。一体何のカラクリだ?」
「ルカまで疑う?!もー、単純に勘だってば!……まあ確かに、反則技っぽくはあるけど……、っていうか、出禁にされた。来るなって。まあ当面の生活費はできたしいいんだけどさ…」
「出禁?!うっそだろ!」
しょんぼりしたアラックに、これがさっきまでカジノで大儲けして見せた男かと疑う。
まったく見ていて飽きないものだ。
「あ、そうだルカ、これね、さっき借りたぶんのお金。助かったよ、ありがとう」
「ん?あー、いいぜ、返さなくても。そんくらいな。詫びの意味がなくなっちまうだろ?それよりアラック、お前部屋はどうすんだ?聞くつもりはねぇけど、何か訳ありなんだろ?探すくらいなら手伝えるぜ?」
「ホント!?すっごい助かる。ルカとぶつかって良かったよ!」
こんなヒョロいアラックだから、面倒事に巻き込まれた時のために警察から近い場所に住んだ方がいいだろうかと考えを巡らせる。ほんの数時間ほど前に会ったばかりなのに、アラックとはあっというまに昔から知っている友人のように会話をしていることに驚いた。
同じイタリア人という共通点からくる親近感もあるのだろうが、その理由は何より、アラック自身の空気にあるように思えた。
初対面でぶつかって、いきなり怒鳴りかかられた相手と、こうも親しく出来るなんて相当な物好きだ。
いい表現が思いつかないが、強いていうなら彼に惹き付けられる、と言ったところだろうか。
理由もなく、きっと長い付き合いになるんだろうなぁと思った。
「ま、そりゃ明日だな。俺んちはきょうだい多いから泊めてやれねぇけど、近くにホテルはあるぜ。金はあるだろうし、二日三日平気だろ。あ、通帳とかねぇなら現金は絶対手元から離すんじゃねーぞ。スられるぜ」
「OK!ありがとうルカ。明日から部屋探し、なるべく早く見つけるよ。本当にありがとう、助かった!」
にっこりと、改めてどう見たって成人済みに見えない童顔を綻ばせてひらひら手を振るアラックに、同じように手を振り返してから、俺は自宅へと帰った。
……今更だが、明日以降どうやって合うのかを決めていないことに気がついた。


*前次#



作品一覧


/ronnnnnxxx/novel/8/?index=1