赤井秀一は、FBIの任務でこのホテルへと来ていた。このホテルの一室で、赤井たちFBIがずっと追っている例の組織の取引が行われるらしい。
阻止はしないが、何らかの情報をつかめれば、という魂胆だった。
取引に使われるだろう部屋を割り出し、組織の取引相手の部屋に盗聴器を仕掛けた。
その盗聴器で盗聴している間に、このホテル内に大量の爆弾が仕掛けられていることが分かった。
どうやらその取引相手は、組織との取引を、爆発で騒ぎを起こすことでなかったことにしようとしているらしい。
そんな程度で手を引く組織じゃないというのに。
大量に仕掛けた、ということは、早めに見つけなければ処理するにも解体するにも時間が足りなくなってしまう。何とかして回収しなければ、と、同じくホテルにいる仲間にその旨を伝え、爆弾の回収を始めたところだった。
その途中だった。
スタッフ専用の扉から、両手に大量のプラスチック爆弾を持った、小柄で茶髪の少年がこそこそと出てきたところを目撃した。
膨らみ方から見るに、腰のバッグにも爆弾が詰め込まれているようだった。
どういう事かと、その少年に近づき探りを入れるために声をかけようとした瞬間、少年の肩がビクリと震えたかと思うと、赤井に向けて少年から蹴りが繰り出された。
(気配を感じ取った……?)
驚いている暇はなかった。赤井は拳銃を構え、振り向いた少年の額にそれを思いきに押し付けてやる。
少年は驚いたように、赤井の顔を見ていた。
「悪いが、その手と、バッグの中に入ったソレについて、説明してもらおうか、少年」
脅すように低い声で少年を問いただした。
少年は数秒あわあわと視線を泳がせた後、小さな声で言った。
「爆弾を回収してました……」
「…君がか」
「えっとその…はい」
「何故爆弾があると?」
「…………一つ、見つけてしまったんで。と、トイレの中で」
明らかに今思いついた嘘だろう。
視線が泳ぎすぎだ。
赤井は、少年の手の中の爆弾に目を落とし、そのタイマーの残り時間に小さく舌打ちをした。ここでこの少年を尋問している時間はなさそうだ。
「あの」
この爆弾をどうするべきか考えていた赤井に、少年はおずおず声をかけた。
「まだあと少し、爆弾が残っているはずです。多分、この上のフロアのどこかに。タイマーはまだ四十分ありますし、それだけあれば解体もできるでしょう。俺、残りの爆弾回収してきますね、じゃあ!」
「おい、待て!!」
さすがの赤井でも、処理しきれないことが立て続けに起きていた。
何故あの少年は、まだ爆弾が残っていることを知っているのか。そして何故その在り処を知っているのか。
この量の爆弾を、三十分程でどう捌ききるのか。赤井だけでは到底間に合わない。解体できる人間も、今日ここへ来ている仲間の中にはいない。応援を呼んでいる時間もない。
あまりにも詰んだ状況に 、思わず口汚い言葉を吐いた。
「おーい!!お兄さん!」
すると、爆弾を探すことを理由に逃げたと思っていた少年が、そう時間も経っていないのに、言った通りいくつか爆弾を手にしてこちらへ駆け寄ってきていた。
「あの、爆弾、多分これで全部です。残り三十分ですよね。お兄さん解体は出来ますか」
「……ああ」
「なら良かった。工具持ってますか?」
「ある」
ライフルバッグの中から工具を取り出す。
どういうことか、少年の言う通りにことが進んでいく。
聞きたいことは沢山あるが、今は爆弾が先だ。
少年は淀みなく、驚くようなスピードで的確に線を切っていく。相当手慣れているように見えた。
赤井も同じように、一つ一つ爆弾を解体し始める。
人に見つかっては叶わないので、スタッフ専用の扉から入り、人の立ち入らなさそうな場所まで移動していたため、近くに人の気配はお互いのみだ。
最後の一つの爆弾を解体し終えた時、残り時間は五分だった。
二十数個の爆弾を、この短時間に解体しきってしまったのだ。
取引の方は仲間がうまくやっているだろうと信じて、赤井は目の前の少年に目を向けた。
「少年、名前は」
「レオーネです。それと、少年じゃありません。俺は二十歳ですから!」
「なんだって?」
名前を訪ねたところ、衝撃的な事実も一緒に知ることになった。純粋に驚いた。
「童顔ですよどうせ!お酒もタバコも出来るんですから!…で、お兄さんは一体?」
プリプリと怒った表情から一転、少年…、レオーネの空気は、赤井への警戒に染まった。
「俺は赤井秀一。ここへは任務で来ていた、FBIの捜査官さ」
「えふ、びーあい?」
「ああ。さて、レオーネ。君はその爆弾の解体技術、一体どこで?」
思ったよりも、探るように声音が低くなってしまった。
赤井の言葉に、レオーネは軽く眉を寄せて、うぅん、と唸ってこう答えた。
ナイショです。
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