:閑話2
「そういえばさぁ、沢田が言ってた“好きな人は後にも先にも一人だけ”って、彼女でもいるの?」
「…そういえばそんなこと言ってたな」
「えっえっなにソレ。俺知らないんだけど、いつ話してたの!?」
「テメーがクソ寒い一発芸かましながら生き返る直前のことだよ」
「アッハイスミマセン」
「で?ちゃっちゃと吐きなさいよ」
六つの目から視線を向けられ、綱吉は思わず縮こまる。せっかく仲良くなった同期達に前世がどうのこうのと話をして、引かれて縁を切られでもしたらたまったものではない。
「えぇと…ちゅ、中学の時…好きな子がいて」
「ふんふん」
「…俺、その頃何やってもダメダメで。周りからダメツナって呼ばれてたくらいダメな奴だったんだけど。その子はめちゃくちゃ優しくて、笑顔がすごく眩しくてかわいくて。当然いろんな人から好かれてて、その時は俺もその子に憧れてる奴らの内の一人だった」
ぼんやり宙を眺めながら、懐かしい記憶に思いを馳せる。
「詳しく話すと長くなるから色々省くと、俺とか俺の周りがゴタゴタしてたときもその子は笑って支えてくれて。…ほわほわしてるのに、以外と鋭く人のこと見てて、時々びっくりするよう視点から助言をくれたりして…」
「あーあーあー甘っっっったるいわ!それで!?」
「どういう感情!?俺このまま話していいの!?」
「話せよ」
「伏黒君こういう話好きなんだ…」
詳しく話そうとするとどうしても年齢や年数に齟齬が出て、それはいつの話だと突っ込みを入れられかねないので、ある程度フェイクを入れながら続きを話す。
「えっと…まあその、詳細は話せないんだけど父方の家の方のあれこれでイタリアに住むことになって。そのときそれなりに仲良かったその子とは、国も離れるしこの先どれだけ会えるかもわからないから距離を置こうって思ったんだけど。…でも、来たんだよね、その子。イタリアにさ」
「えっ!その時って付き合ってなかったんだろ?その子と沢田って」
「まあ、俺がヘタレで告白しないままずるずるしてた状態だった。それで、イタリアに乗り込んできて、ツっくんのヘタレ!って怒られて、それで付き合い始めたかな」
「ツっくん??」
「ツっくんん!?」
今の聞いた!?とでも言いあうかのように虎杖と釘崎が復唱する。
「…その彼女は、今どうしてんだ。沢田は急に呪術界に引きずり込まれたわけだろ」
「確かに。説明するにしても危険だし…」
「……今は、いないよ。…いや、いるといえばいる、んだけど」
この世界の彼女は綱吉と心を通わせた彼女ではない。
それを曖昧に暈して言葉にした結果、綱吉は釘崎達にとんでもない誤解を植え付けることになる。
(…なあ、彼女さん、今は、いないって)
(いや…別れたってことじゃないの…?)
(馬鹿か、沢田追っかけてイタリアまで乗り込んでくるくらいだぞ。何がどうなったら別れるんだよ。…つまりこういうことだろ…)
沢田綱吉は彼女と死に別れ、彼女への想いを抱いたまま生涯を終えるつもりなのだという、とんでもなく酷い誤解を。
:閑話3
ピン、と金属を弾く音がした。
丁度通りかかった談話室から聞こえたそれが気になって顔を覗かせると、ソファに向かい合った虎杖と伏黒が何やら真剣な顔をして見つめ合っている。それを遠くからけだるそうな顔をして眺める釘崎の姿まで確認することができた。
「…なにしてるの?」
異様な光景に思わず声をかけてしまえば、二人は綱吉に顔を向ける。
「買いだしコイントス。沢田も参加してくれ」
「俺買いたいもの特にないよ?」
「まあまあ。沢田が買い出し係になったらジュース奢るから!」
ぐいぐいとソファの方まで引っ張られた綱吉は、そういえばコイントスか、と眉を寄せる。
「ジャンケンじゃダメなの?」
「虎杖の頭おかしい動体視力で全部見破られるからナシになった」
「あー…。それならコイントスもダメ。俺負けないよ」
「え。どゆこと?」
「俺、勘が良くて。こういう二分の一を当てるゲームとか、ポーカーみたいな対人カードゲームとか、全部わかるから…、ダメ」
試しに五回当てようか、と尋ね、宣言通り五回とも裏表全て間違いなく当てて見せる。
手品の類かと目をふさがれ手を拘束されて何度か挑戦させられたが、変わらず結果をたたき出す綱吉に、離れて見ていた釘崎まで加わってがやがやと騒ぎ始める。
「あれ、なーにしてんの君たち」
「五条せんせぇ!ちょ、知ってた!?沢田の!」
「なになに」
「コイツコイントス一回も外さないんだけど!」
「ああ!綱吉の超直感ね!それガチモンだよ。だって綱吉、悠仁が生きてるってそれで見破ったんだもん」
「マジで?」
「マジで」
しばらく綱吉が占いやらおみくじ扱いされたというのは、言うまでもない。
*前次#
作品一覧
/ronnnnnxxx/novel/8/?index=1