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 先生の引率で大広間へ入ってロウソクが浮遊する下を進んでいく。先生たちが座る前方テーブルまで行き、一年生を横一列に並べたあと、マクゴナガル先生は四本脚のスツールとボロ臭い煤けたとんがり帽子を持ってきた。大広間中の皆が固唾を飲んで見守る中、帽子は一瞬ぶるりと震え、くしゃりとした皺がパカッと口のように開いた。
 
 “私は綺麗じゃないけれど……”
 
「(そういえば映画ではこのシーンなかったっけ)」

 随分明朗として歌うなあ。この帽子、プライド高そう。誰が作ったんだろう。レイブンクローの人かな。
 そんなことを考えているうちに帽子が歌い終わり、いよいよ組み分けが始まる。誰かがゴクリと唾を飲む音がやけに大きく響いた。
 
「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子を被って椅子に座り組分けを受けてください。……アボット、ハンナ!」
 
 最初に呼ばれた女の子が怯えたように壇上へと上がる。帽子はややあってから「ハッフルパフ!」と叫んで女の子を組分けた。セドリックの寮だ。私もそこになるんだろうか。……帽子を被るだけ、と思っていたのになんだか今更ながら緊張してきた。不安を和らげるために両手を胸元でぎゅっと握った。
 
 それぞれの寮が自らの新入生を大きな歓声で迎え入れていくが、その中でも一際歓迎が激しかったのは当然彼だった。
 
「ポッター、ハリー!」
「……──グリフィンドール!」
「「うおぉぉお!!」」
 
 帽子を取ったハリーは傍目から見てすぐに分かるほど安心した顔付きだ。どこかおぼつかない足取りでグリフィンドールのテーブルまでフラフラと進んでいった。沸き立つ獅子寮に反して、周りの寮からはどこかがっかりしたような雰囲気が流れている。

 遂に残るは四人だけになった。みんな不安そうな顔をしていたが、その中でも特にロンは顔を真っ青にしていまにも倒れてしまいそうな様子だ。その顔色はグリフィンドールに組分けされたあとも暫くは変わらなかった。
 
「ワイアット、エレナ!」
 
 威厳ある声が私の名前を高らかに宣言する。マクゴナガル先生の声に、例の如くホール内は静まり返る。うう、雑談を続けていてほしかった。人に見られる中でやる必要あるのかなこれ。個室でやろうよ……。何百という目に晒されてすごく緊張する。足元がふらつかないようにと気を付けて歩くので精一杯だった。ふーっと息を吐きながら浅く椅子に腰掛ける。
 
「なんと! 二魂持ちとは!」
 
 帽子を被せられ、触れるか触れないかでそう弾くように告げた声が頭に響く。にこ、……はい? なんて? にっこにこにー?
 困惑する私を無視してやたら陽気で愉しげな声が脳内を巡る。帽子は唄うように言葉を重ねた。
 
「しかし君の本質は決して変わらない。何があろうとも揺るがないとも。穏やかだがそれでいて少し頑固、何があっても侵されない強い勇気を心に持っている……よって君は、グリフィンドール!」
 
 帽子の叫び声とともに赤と金のテーブルから盛大な歓声が上がる。帽子を私の頭から上げたマクゴナガル先生はよくよく見ると僅かに微笑んでいた。
 大きな拍手に包まれながら赤いタペストリーがぶら下がっているテーブルまで一歩一歩踏み締めるように進んでいく。テーブルにつくとあちこちから「やったな!」「おめでとう!」という声が上がる。赤毛の双子は二人お揃いの満足気な顔でウィンクを飛ばしてくれた。

 正直、ハリー・ポッター以外の組分けは彼らにとってオマケみたいなもんかと思ってた。それに私は最後の方だったし、彼らも飽きてしまっていることだろう、とも。だからこの待遇は普通に嬉しい。自分の顔が綻んでいるのが鏡を見なくても分かる。
 
「ああエレナ、よかった!」
 
 随分と前に寮が決まっていたハーマイオニーが奥の方から身を乗り出して声を掛けてくれた。安心したようににっこりと笑っている。同じように笑顔を返していれば、ちょうど私の目の前に座る赤毛の男の子が「うげぇ」と嫌そうな顔をした。
 
「きみ、まさかあいつと仲良いの?」
「とってもいい子だよ。……ロナルド・ウィーズリーだよね?」
「あーうん、ロンでいいよ。えーと、エレナだったっけ?」
「うん、よろしくね」
 
 握手を求めて手を差し出せば、ロンは驚いたようにポカンと口を開けた。それから慌てて手をゴシゴシとローブで拭いてから手を握ってくれた。少し汗ばんでいる。なんとなくロンっぽくて笑ってしまった。「よかった、君はまともそうだ」と彼がホッと息を吐いたのには気付かないフリをさせてもらおう。
 

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