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十一月は降りしきる雪があっという間に浚っていき、そうして十二月は静かに訪れた。
談話室に掲示された休暇中の残留リストにサインをしようと列に並んでいれば、マクゴナガル先生が怪訝そうに私の名前を呼ぶ。
「あなたは残らないのでしょう?」
「いえ……残るつもりですよ?」
「ですがエドガーが……あなたの叔父様が職員室で『今年は家族でクリスマスを過ごす』と楽しそうにお話していましたよ」
「っはあ〜〜〜……」
まじ、まじであの人さあ……勝手になにを広めてるんだ。額を押さえて深いため息を吐き出す。だってホグワーツで過ごせるクリスマスは今年で最後なのに! 来年はほら、いろいろあるから。ダンブルドアの死をうまく偽装できればホグワーツは乗っ取られちゃうだろうし。休学届だせば再来年も学生として過ごせるかなあ……でも──なんだっけ、アロー兄弟だっけ、覚えてないけど。とりあえずあの死喰い人兄妹の独断で退学処理されそうな気もする。
とにかく、今年はホグワーツで過ごしたい。私は今年一年の間で出来得る限りこの美しい城を目に焼き付けておきたかった。そう後日厄介補助職員に抗議しに行ったが、対面で話してるのに「ちょっと電波が……」とかほざかれ、まったく聞きいれてもらえなかった。まじでこの人……。
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玉飾りやモールに彩られ始めた大広間で夕食を終え、寮へ帰ろうというとき、ネビルがふと思い出したように小さく声を上げて立ち止まる。
「忘れてた……ごめん、先寮戻ってて」
「いいけど、どうかしたの?」
「スラグホーン先生に呼び出されてるんだ、ほら、僕クリスマスパーティでボーイ役やるから。その打ち合わせさ」
「クリスマスパーティでボーイ役?」
愕然とした声でオウム返しをした私に、ネビルは「あれ、言ってなかったっけ」と小首を傾げた。
「言ってない、聞いてない! ボーイ?」
「そうだよ。でもベルビィなんてトイレのタオル係だし──」
「どこ? 呼び出し場所は先生の部屋?」
「えっ、うん、そうだけどそれが──エレナ?」
最後まで聞かずに私は廊下を走り、階段をかけ下りて地下へとすっ飛んだ。すっかり行きなれた先生の部屋の前で深呼吸をしてから扉をノックする。ドアはすぐに開き、スラグホーン先生が朗らかに私を歓迎した。
「やあエレナ、どうかしたのかな?」
「こんばんは先生。クリスマスパーティの件でお聞きしたいことがありまして」
「ああ! きみは来てくれるだろうね?」
「はい、ネビルと一緒に参加しようと思ってます」
「ネビル……?」
「ネビル・ロングボトムですよ、先生。グリフィンドールの」
はて、と眉をひそめたので明るく補足すると先生は「ああ!」と手を叩いた。私はニッコリと笑顔を向けて一歩進み出てスラグホーン先生との距離を詰めた。
「すみません、ネビルは魔法薬学もとっていないしファーストネームじゃわかりづらかったですよね」
「なに、気にすることはない。それでその彼がどうかしたかね?」
「はい、あの、私、先生がネビルにボーイ役を依頼したというお話を耳にしたんですけれど──」
「ムム、そうだったかな……いやしかしもちろん、そういうことならその件については白紙に──」
「ネビルの聞き間違いなんじゃないかと思って、先生に直接お尋ねしに来たんです」
「……ん?」
「ネビルにボーイのような雑務的お仕事を頼むなんて、まさかありえませんよね?」
そう笑ってまた一歩近付く。先生の目が丸くなり、ぱちぱちと忙しなく瞬きを繰り返しはじめた。
「だってネビルは薬草学において常に大変すばらしい成績を収めていますし──去年のうちからミンビュラス・ミンブルトニアを独学で育成しきったという実績や、エラ昆布についての論文なども四年生のうちから熱心に勉強していて──、それに私も入学以来彼には何度も助けてもらっていて、ネビルのことはとても尊敬しているので──だからまさか、そんなネビルが給仕の仕事のためパーティに参加できないなんてとても信じられなくて。きっとネビルが先生の仰ったことを勘違いをしてしまったんだと思ったんです」
「いや……ああ……」
「ねえ先生、そんなことネビルに依頼なさっていないでしょう?」
もごもごと要領を得ない返事でよく聞こえないため、再び足を踏み出した。今度は先生も動いたので距離は縮まらない。視界の端で、机に置かれた砂時計の白い砂が滝のように落下していた。
「そもそも学校行事ならともかく、個人的な主催のパーティで生徒に雑務を任せるなんてスラグホーン先生はなさいませんよね?」
「それは──それは、ああ、むろん──しないとも……」
「ですよねよかった!」
そうだと思ってました! と元気よく言ったところで扉が開く。振り返るとネビルやベルビィ、その他打ち合わせのために呼び出されたであろう何人かの生徒が姿を見せた。先頭にいたネビルの顔が「どうしてここに?」という色で染まるのをにこにこと見ていれば、背後から「さあ」と先生の声がかかる。どことなく疲弊しているように聞こえるけどきっと気のせいだろう。
「みんな、寮へ戻りなさい。係の仕事はなしだ──当日はパーティを楽しんでおくれ」
あ、でも私ドレスないんだった。ハーマイオニーに相談しなきゃ。
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