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 もしかして、めちゃくちゃ巻きになるんじゃないか?

 ハーマイオニーから『ロンとハリーが喧嘩した』という連絡を受けた翌日。唐突にそんな気付きを得てしまい、フーズの袋を傾けて振ろうとしていた手が止まる。十一月頭、からりと晴れて気持ちのいい、冬の背中が見え隠れしだした秋の日のことだった。


 魔法省に突撃、ロケットを破壊。ルーナの家そして人攫いからのマルフォイの館。その後グリンゴッツ破りをして、すぐホグワーツにて最終決戦開幕。

 それが本来であれば繰り広げられていたシナリオだ。
 けれどハリーたちが魔法省に忍び込んだというニュースは、九月を終え、十月、そして十一月になっても一向に流れてこなかった。それ自体はなにもおかしいことじゃない。だってスリザリンのロケットはとっくのとうに分霊箱としての機能を失っているし、今更魔法省に勤めている――そう、厚顔なことに、“まだ”勤めているのだあの女。汚職政治。なんて腐った世界!――アンブリッジの手に渡ることはない。だから、ハリーたちがわざわざ危険地帯に身を繰り出す理由もないのである。いいことだ。

――『わたしたち、もうなにをしたらいいか分からないのよ』

 けれどこれを逆に捉えてしまうと、彼らには、今できることがなにもなかった。ハーマイオニーたちは、今闇雲に動き回っているらしい。詳しいことは聞いていないけれど、行く先々で死喰い人に待ち伏せされては逃げて……を繰り返し、でも分霊箱のヒントは全く掴めず――そしてついに、ロンが爆発した。

 鏡を使ってあらましを説明し泣きじゃくるハーマイオニーに、私は『クリスマスにもなれば戻ってくるよ』と淡い過去の記憶を頼りに慰めを口にしたけれど、その翌日、つまり今。アンブルとフォークスに餌をやりながら、いやちょっと待てよとなっていた。


 ロケットを見つけて壊すのにほぼ一巻、まあ大体半年くらい? だっけ。とにかくそのくらいの時間を使うじゃん? でもその後半年はかなり詰め込まれていて、めちゃくちゃ怒涛だった気がする。えっ大丈夫だよねこれ。叔父さんからの個人レッスンはかなり順調だし、薬もあとは月光を浴びせて寝かせておくだけ。いや、さすがに間に合うよね? あとひと月もしないで残り全部のイベントやるのはさすがに無理だよね?……ね?
 ごちゃごちゃになった未来は全く予想がつかず、なんとも言い切れない。えー、本当は薬がちゃんと使えるか、副作用はどの程度か、とかちょっと実験しておきたかったんだけど……。そんな悠長にできる時間はないのかも――。

「イタッ――ああ、ごめんごめん」

 思考に耽っていれば、お預けを食らったアンブルから不満げに手を突っつかれる。謝りながら餌皿にフーズを転がすと、フクロウはそれでいいと言わんばかりに羽をパタつかせた。その隣で堂々としているフォークスは、律儀にも小さなフクロウの食事が整うのを待ってあげていた。ご機嫌に餌を啄み始めた二羽をまじまじと眺める。アンブルのやつ、最初はデカくて燃えてて強そうな、自分より遥かな年上の後輩にビビり倒して居心地悪そうにしてたけど、今じゃこれだもんな。大きな餌の塊を分け合いっこ――というか強奪しているフクロウの姿に感慨深い気持ちになる。よく懐いてる。仲良くなったものだ。フォークスもキレていいのに穏やかな眼しちゃって……孫みたいな感覚で接してるのかな。

「……」

 私はキッチンからリンゴをとってきて、杖で切り分け、フォークスの餌皿にちょっと多めに置いた。食いしん坊が目敏く抗議してくるが無視する。だってこれは賄賂だもん。というか、そもそもお前は食いすぎだ。フォークスの高級フーズを食い続けたフクロウの体は、目に見えて丸くなっていた。空を飛ばせてあげられないから運動不足になるのは仕方ないにしても、これはどうなん……ボールになっちゃうぞおりゃおりゃとふわふわの羽を擽ってから、一息ついて微笑ましそうにこちらを見ていたフォークスへ向き直る。

「フォークス様……あの、どうか、なにとぞ……」

 いざという時は……ね!

 立派な尾羽をした美しい不死鳥は、神妙な顔で情けないゴマすりをする愚かな人間をキョトンと見た。

 保険をかけておくに越したことはない。なにせ計画の頓挫は、悲しいことに私のお約束だから。……いやほんとに悲しいな。もっと強くてニューゲームしたかった。


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「……できた?」
「できたな」

 不死鳥様へのゴマすり生活を始めて一ヶ月。
 透明の液体が揺れる小瓶を見て、叔父さんがやさしく言ってくれる。自分じゃ確信が持てなかったけど、この人がこう言ってくれるなら出来たんだろう。安堵でドッと力が抜ける。「グリフィンドールに五十点」でた、と思ったけどここは素直に喜んでおこう。この人も教師だったときのクセが抜けないんだろうな。

「はー、一安心……っしゃ、それじゃあ行ってくる!」
「どこに?」

 目を丸くする叔父さんに、呼び寄せたポーチを腰に巻き付けながらにっこり笑った。
 
「お墓参りに」
 

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