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 試合結果は、まあ、うん。スリザリンは割りと惨敗だった。主将と思しき男性に怒られてしゅんと小さくなる彼を思い出してこっそり苦笑する。でも飛んでるところ、かっこよかったよ! すごく早かったし! 大丈夫、私の中でのMVPはあなただから!
 ……なんて伝えてもきっと逆上させてしまうだけだろうからこの言葉は胸の奥底にしまっておくとしよう。どうせ伝える機会もないだろうけど。
 

 みんなでゾロゾロとグリフィンドールのMVPにお見舞いの品を持って行く。水が詰まったゴム手袋のような手に顔を顰める。名誉の負傷というにはあまりにも悲惨だ。ハリーの笑顔も力ないものだったが、ウッドに褒められて嬉しそうに破顔させていた。うーん、でも、骨ないんだよ……? それでもいいの……? クィディッチってなんかすごいな。怖いや。私たちを病室から一人残らず追い出してしまったマダム・ポンフリーが「あんな危険なスポーツ」とボヤく気持ちがよく分かる。怪我もそうだし、こう、人の心を狂わせるなにかがあるよね、クィディッチって。
 
 
 
「はい、これエレナの分」
「え、なに、……くさっ!」
 
 談話室に入ってくるなり、ネビルは腕いっぱいに抱えた大きな青タマネギ、とがった紫の水晶、くさったイモリの尻尾を私に押し付けてきた。タマネギもイモリも酷い悪臭だ。唯一臭くない水晶は綺麗だが殺傷力が高そうでシンプルに怖い。なにこれ、ちょっと早めのクリスマスプレゼント? えっ、ネビルもしかしてなんか怒ってるの……?
 
「これ、魔除けだよ。襲われないようにするための」
「……こんなの効果あるの?」
「分かんない、でもないよりマシなはずだろ?」
 
 そう言いつつも、ネビルは不安そうに目をキョロキョロと動かした。なるほど、嫌がらせではなく純粋な善意。気持ちは嬉しいが、逆に困る。だってこれじゃ突き返すなんて到底できないし、当然この酷い護身グッズたちを持ち歩かなければならなくなる。
 
「でもネビル、お前は純血じゃないか」
「そうだよ、襲われるはずないだろ」
 
 誰かが揶揄うような、窘めるような声を上げた。
 グリフィンドールの一年生、コリン・クリービーが石になってから学校中に恐怖がじわりじわりと伝染していっていた。そこで爆発的に流行ったのがこの魔よけ・御守りグッズだ。胡散臭いし普通に臭い。初めて勧められたときはこんなの買う人いるのかと思ったけど、まさか自分の一番の友達が買ってしまうとは。いやネビルなら純粋だし買ってしまいそうではあるけど……。
 
「最初にフィルチがねらわれたもの。それに、僕がスクイブだってこと、みんな知ってるんだもの!」
「……スクイブは親が魔法使いなのに魔力が全くない人のことを言うんでしょ? ならネビルは違うよ、立派な魔法使いじゃない。それに純血だし、大丈夫だよ」
「うぅん、そうかもしれないけど……でも、でもきみは……」
 
 悲痛そうな顔で話すネビルに言い含めるように優しい口調を心がけて話す。しかし彼は心許なさそうに視線を落とした。言いづらそうに口をもごもご動かしている。こちらをひっそり窺うような眼差しに、彼がなにを言いたいかわかってしまった。急に胸がじんわりと温かくなっていく。ああもう、本当に優しいんだから。
 
「確かに私はマグルだし、持ってた方がいいのかもね」
「エレナ……」
「ありがとう、ネビル」
 
 受け取ると、ホッと安心したようにネビルの頬が緩む。私のことなんてそんな気にしてくれなくていいのに。大好きだなぁ、優しいなぁと友人の気遣いにちょっぴり泣きそうになってくる。
 ……いやでも、そうはいってもやっぱりひどい匂いだ。悲しいことに優しさで汚臭は誤魔化せない。消臭の呪文でも勉強しようかな。
 
「消臭したら効果ないって言ってたからダメだよ」
「……はーい」
 
 なんてことだ、レジリメンスされた。厳しい顔のネビルにしっかり釘を刺されてしまっては、このままの状態で持ち歩くほかに選択肢はなかった。……袋を何重にもすれば消臭してるわけじゃないし、問題ないよね。これはあくまで防臭だし。
 この小狡い考えはさすがにバレなくて、そっと内心で安堵のため息を吐いた。
 

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