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クリスマスの朝、ハーマイオニーからのプレゼントを真っ先に手に取った。贈られたのは白いブランケットだった。熱を持っていて電気毛布のようだけど、でもそれよりも全然軽くてふわふわだ。ほんのり香ってくるカモミールの匂いにうとうととしてしまった。説明書きにはちょうどいい温度まで自動調節してくれると書いてあった。……なるほど、ハーマイオニーは私をダメ人間にするつもりだな! クリスマス休暇の恋人はこの毛布できまりだとフワフワのそれに頬ずりをした。
そして今年もネビルのお祖母様からお手製のかぼちゃケーキを貰った。去年より大きい気がする。このケーキ好きだから嬉しい。かぼちゃ本来の甘さと控えめに存在を主張するクリームチーズの味は相性ぴったりで、それに紅茶にもよく合う。行儀が悪いと思いつつ、我慢できなくなりベッドの上でケーキを広げる。もちろんブランケットは端に避けておいた。ケーキ一欠片をつまみながら他のプレゼントを開けていく。
セドリックからはフクロウのお世話セットが届いていた。付属の餌は人間も食べれると書いてあったから試しに一口摘んだらすごく美味しかった。ただアンブルが細くなって威嚇してくるほど怒ったからもう食べない。なんだか年々食い意地がはってきてないかなこの子……。
叔父さんのプレゼントを開けば中からは薄桃色のコンパクトミラーがでてきた。去年は闇祓い的な感じだったのに今年は随分とファンシーな見た目だ。女子力を感じる。職場の女性にアドバイスでも貰ったのだろうか? そんなことを考えながらメッセージカードを開いた。
【メリークリスマス。
エレナは自分の顔が大好きとある筋から聞いたので、今年は顔が加工される叔父さん特製の鏡を贈ります】
「語弊!! しかないよ!!」
綴られた文面を読んで咄嗟にそう叫ぶ。ある筋? 絶対お母さんでしょそれ!! 職場の女性じゃなかった……! ていうか最近は自分の顔にも慣れてきたし、別に確認作業だってしてないっていうのに! 親戚にナルシスト疑惑が付着したままだという事実にサッと体温が下がった。今度訂正してまわらなきゃ……
手鏡に映るげんなりとした顔は心なしか目が大きく、そして肌は白くなっていた。あっ犬耳が生えた。……なんか前世で似たような機能のフォトアプリあったなあ。こんなところで懐かしさを覚えるとは思わなかったと、自然と頬が引き攣った。鏡は確かにバジリスク対策にもなるから持ってて損はないだろうけどこれを持って石にされるのはちょっと笑えない。最後の記憶が可愛く加工されたバジリスクの顔とか……。
そして今年も最後に残ったのは宛名のない贈り物。……図鑑の人なのかな? しかし去年とは打って変わって小さい紙袋だ。リボン付きの金色シールを剥がして中身を改める。
「これって────」
クリスマス休暇を終えてホグワーツに戻ると、やはりハーマイオニーは医務室暮らしをしていた。暫くは授業も休んでいて面会拒絶となっていたが、いよいよ明日退院となった日やっと対面することができた。
ハーマイオニーはおよそ五センチはあろうかと思われる程分厚い羊皮紙の束を空色のファイルの中に挟み込んでパタンと閉じる。しかしその見た目は何も挟まってないかのようにひらべったいままだ。
「これ、ありがとう。とっても便利よ」
「ちゃんと魔法がかかってるか心配だったけど……よかった」
ファイルをカバンに仕舞いながらそう言ってくれたハーマイオニーに顔が綻ぶ。
実はこれ、私からのクリスマスプレゼントなのだ。叔父さんと相談しながら手伝ってもらった。といっても私が手をかけたのは外側のカラーリングだけだけれど。でも真夏の澄み渡る空をイメージしてつけた色もちゃんと上手くいってるようだし、さっそく活用してもらえてて嬉しい。
「ところで、ねえ、ずっと気になってたんだけどその髪飾りどうしたの? その花ってムネモリアよね?」
「多分そうだと思う」
三つ編みの先を持って結び目を掌に乗せる。ちょこんと乗せられた花は瞬きする度に色彩を変化させる。まるで北欧のオーロラを閉じ込めたようだ。飴細工のような光沢を放つそれにハーマイオニーは目をぱちぱちと瞬かせた。
「図鑑の人から貰ったの。……カードもまたなかったから予想なんだけど」
「……その人、エレナのことよく見てるのね」
ちょうど髪が伸びてきてたからどうにかしなきゃなと思っていたのだ。タイミングぴったりの素敵なプレゼントに、眦を下げていればハーマイオニーは真剣な顔でそう告げる。
「どうして?」
「だってあなたがたまに邪魔そうにしてるのに気付いてたってことじゃない」
「……もしかしてネビル?」
「それなら正体を隠す理由がないわ」
確かにそれもそうだ。ハーマイオニーは探偵のように顎に手を当てて唸った。正体を隠さなきゃいけない、でも私にプレゼントは贈りたい……どんな条件が組み合わさればそんな状態になるのだろうか?
どれだけ議論してもさっぱり検討がつかなかった。しかし結論だす前にに険しい顔をしたマダム・ポンフリーに病室から追い出されてしまった。
医務室から寮へと戻る道すがら、セドリックと鉢会った。クィディッチの練習終わりだそうだ。もう夜もそれなりに更けているというのに……どの寮も選手は大変なんだな。
「今年のプレゼントはどうだった?」
「アンブルがすごい喜んでた。ありがとね」
「ああ、ホグズミードで買ったんだ」
「いいなあ、私も早く行きたい」
「来年だろう? そのときは僕に案内させてよ」
「あ、もしかしてデートのお誘い?」
「そうかも」
セドリックは私の冗談にいたずらっぽく笑ったかと思えば、すぐにくしゃりとしたいつもの笑顔を浮かべた。ほんとに爽やか。どこかのヌガー顔の教師もぜひ見習っていただきたい。
「あ、私こっちだから」
「そっか、それじゃあ」
そんな会話をしていれば、それぞれの寮への廊下の突き当たりで立ち止まる。「またね」という別れの挨拶とともに頭にぽんと手が置かれた。さらっとこういうことできちゃうの、すごいな……これが真のモテ男……。
「……あっごめ、ちょ、ちょっと待って!」
「えっなに、痛っ?!」
ピンと髪の毛が張る感覚に思わず声が漏れる。袖の釦と絡まってしまったみたいだ。慌てて釦を引きちぎろうとする彼を止める。わざわざ引き千切ることないから。そんなワイルドっていうか、雑なことしなくても……呆れつつ三つ編みの結び目を解けば案の定すぐに解けた。髪をおろした私に、セドリックは申し訳なさそうな表情で照れ臭そうにはにかんでいた。私の髪を撫でるように手を滑らせる。
「ごめん、なんかカッコつかないな」
「…………セドリックって」
「ん?」
「罪な男だよね」
「ええ?!」
ちょっと可愛くてちょっときゅんとしたなんて言ってやるものか、絶対に。謎の悔しさを感じたのでつい反抗したくなってしまった。
狡いイケメンのセドリックと別れ、一人廊下を歩く。開けっ放しの窓からひんやりとした夜風が吹いてきてぞわっと鳥肌が立った。風に煽られ浮いた毛先がうなじを擽る。そういえば髪の毛結んでなかった。そう思って髪を緩く編んでいくが、縛る直前、廊下の松明に照らされて光った花飾りに動きを止める。なんとなく花をクルクルと回して眺めた。
この謎のサンタさん、ムネモリアをやけにゴリ推しするなぁ……綺麗だからいいんだけど。
「──え、」
ぎょろりとした目玉が花弁に映り込む。
それが指す意味は、つまり、────
視界が真っ暗に染まった。
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