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ブンブン、ハローホグワーツ! どうもエレナ・ワイアットです。
ゴブレットがなんとホグワーツの代表にハリーしか選出しなかったので、あっこれセドリックの死亡ルート自動回避かなやったね! とか考えたらなんと続けざまに吐き出されたのが私の名前ってね。入れた覚えなんてあるわけないのにね。これから私、どうなっちゃうの〜?! 次回、『ワイアット死す』! お楽しみに! 第三部完!
(次回っていうか次々々回ね)
脳内プロローグに訂正をいれる。だって死すのは最終課題なので。あとついでにいうとどちらかといえば第四部だね。これもまたどうでもいいことなんだけど。
突如現れた死亡フラグに、私は大変困惑していた。
夢であれと強く念じて眠りについた十月三十一日だったが、朝起きれば世界は当然のように霜月へと突入していた。あゝ無情。
代表発表の翌日には恨みがましい視線でヒソヒソされ、さらにその次の日には早くも例のバッジを胸に飾る生徒たちで溢れていた。《汚いぞポッター!》と《ワイアットは卑怯だ!》。はいはいお洒落お洒落。いやいらん仕事だけ早すぎない? 製作者と売上利益についてお話したい。私達の顔使って商売してるんだから利益の三分の一くらい渡してほしいんだけど。魔法界ってやっぱり個人の肖像権とか主張できない感じですか?
そう、今や校内は目立ちたがり屋な小狡いポッター派と審査員に媚び売りやがった卑しいワイアット派で二極化していた。私もハリーも肩身が縮小呪文かけられたのかってくらい狭い。どこ行っても睨まれるし。生き辛ぁ……。
なんでこんなことになったんだろう。フラグ立てすぎた? いつのどれ? だめだ心当たりがない。
現実的に考えるとクラウチJrがゴブレットを錯乱させ過ぎたってところだろうか。そのせいでゴブレットくん馬鹿になっちゃったのかな。勘弁してまじで。しっかりしてゴブレットくん。いや錯乱させたクラウチJrが一番悪いんだけどね。せっかく魔法契約までしたのに。なんなら一番の被害者はゴブレットくんかもしれない。すまない、人間が愚かですまない……。
そんなふうに発表当日はちょっとばかり狼狽えてしまいましたが。
数日経てば気持ちの整理も多少はついてくる。人間は適応する生き物であり、それは私とて例外ではない。
鐘が鳴ると同時に尻尾爆発スクリュートをボロボロになったタオルが敷き詰められた木箱へと戻す。授業の間、ずっとハグリッドから送られていた視線に最後まで気付かないふりをして、私は誰よりも早く校舎へと向かった。
授業が終わったばかりなので大広間の人数はまばらだ。それでも入った途端に集まる視線。ほぼ全員に見られているような錯覚に陥りながらも、既に並んでいる料理を適当に弁当箱へ詰めて私は来たばかりの大広間を後にした。
「エレナ!」
ハーマイオニーの声に足を止めて振り返る。彼女はスタスタと廊下を進んで私との距離を縮めた。目の前まで来ると、私の手にした弁当箱を見て眉を顰める。
「またどこかで隠れて食べるつもり?」
「自分の顔に囲まれて食事するのもなぁ」
ちょうどハッフルパフの上級生二人がすれ違いざまに例のシャレオツバッジを見せつけて来たところだった。ゲラゲラ笑いながら去っていく姿を横目に、ハーマイオニーは少し困った顔で言葉を選ぶように逡巡した。
「……でも、グリフィンドールの生徒はつけてないわ」
「そうだね。でもほら、皆の視線とか声も気になるし」
未成年の代表が二人、それもどちらもグリフィンドールから現れた。
当然、他寮生から見ればいい気がするはずない。
ハッフルパフは普段なら仲良くできていたのに、アーニー・マクラミンと仲のいいハンナ・アボットは当たり前に私を敵視していたし、レイブンクローの生徒も似たようなものだった。スリザリンは省略。
ハーマイオニーのいうようにグリフィンドール生は同寮のよしみだからか、たしかに応援してくれている。あくまで『概ね』『表向き』の枕詞付きだけど。発表直前に私が浮遊呪文の案とかあげちゃったのもよくなさすぎたよね。自白じゃんって思ってる生徒かなりいるでしょ。辛い。違うんですほんとに……。
「だからって一人で食べること……ああ、もう! ねえ、どうしてネビルを避けるの?」
「(やっぱその話か〜)」
ハーマイオニーは言葉の途中で頭を振って、まどろっこしいとばかりにとうとう彼の名前を口にした。私はそれが予想できていただけについ苦笑する。来ると思った。ハーマイオニーは気になっちゃうよね。ただでさえハリーとロンのことで大変だろうに、本当に優しい子だ。
ハロウィーン以降、私は基本的に一人で行動するようになっていた。といっても、ただ教室移動を一緒にしなくなったとか、食事を一人でとるようにしたとか、夜は談話室に屯しなくなったとか。だいたいそんな程度のことだ。話し掛けられれば応じるし、ペアワークも一緒にやった。過剰に避けていたわけじゃない。
しかしたったそれだけでも、ネビルと過ごす時間が前と比べて格段に減ったのは確かだった。
「とっても落ち込んでたわ。“代表選手だからもう僕と一緒にいたくないのかな”って」
「ネビルと一緒にいたくないわけじゃないよ」
「なら──」
ハーマイオニーの言葉を静かに訂正する。彼女は憤慨した表情で食い下がろうと口を開いた。私はそれを遮り、被せるように言葉を重ねる。
「誰とも一緒にいたくないの」
「それって……」
ハーマイオニーは口を開けたまま声を途絶えさせた。私は踵を返し、固まってしまった彼女に背を向ける。
少し一人で考える時間が欲しかった。
自分の今後について考える時間が。
でもだからってあんな言い方はないよね〜!?!!?
なにが『誰とも一緒にいたくないの(キリッ)』? もっと言い方あるでしょ……気が立ちすぎ。最低。いやハーマイオニーのあの顔……本当に最低だ。何回関係ない子に八つ当たる気ですか? いい加減にしてほしい。反省して私。
深い後悔と自己嫌悪に苛まれながら適当な教室の扉を開ける。誰もいないと思って入ったが、教室の隅の方に黒髪の女生徒が膝を抱えて座り込んでいた。フードが緑だ、と思ったところでその人が顔を上げた。
「うわっ」
「は? ……はあ?!」
スリザリンの彼女──当たり屋ノルフ先輩は、私の顔を見るなり綺麗なお顔をぐしゃぐしゃに歪めた。かと思えば、私を指差して大きく声を荒らげた。数回しか会ったことないですけどそんな大声だせたんですね貴方。ていうか人のことを指差しちゃいけないんですよ。こういうの非魔法族とか関係ないですからね。人間としての常識ですよほんと。
「なによその頭!」
「え、なんですかそのdis」
「頭! 髪型よ!」
そう言われて、まだ解いていなかったことを思い出した。スクリュートに燃やされたくないから一つに纏めていたんだった。いつもは授業が終わったらすぐ解いてるけど今日はハーマイオニーと話していて忘れていた。
ゴムをとって髪をおろす。当たり屋ノルフ先輩はなぜか愕然とした表情で私を見ていた。
「は? それで終わり?」
「そうですけど……」
「結ばないの? あの不器用丸出しなだっさいゆるゆるの三つ編みは?」
「だっっっ……いやあんまりぴっちりした髪型だと将来禿げそうなんであの結び方してたんですが。敢えてなんですが?!」
だだだだだださくないわ。機能性の重視のちゃんとした髪型だもん……ださくないし不器用でもないもん……会う度会う度傷付けてくるの、ほんとになんなんだこの人。あとなんでそっちが『有り得ない』って顔してるの? こっちの顔なんですけどそれ。
語気荒く早口で言い切ったところで、彼女の髪型が前とは違ってきっちりと編み込まれていることに気付く。これまではシャンプーのCMかってくらいサラサラの黒髪を風に靡かせてたのに。この人も授業終わりなのかな。魔法薬学とか? そう思っていると彼女は深いため息をつきながら結び目を解いて頭をぐしゃりと崩した。
「なに、なによそれ……バカみたい……」
「深刻なんですが」
年々後退していく叔父さんや父の前髪を見てればそう能天気にはいられないはずだ。強制観察日記させられてる私の気持ちにもなってみてほしい。危機感芽生えちゃうに決まってるでしょ。そんな不満を察知したのか、彼女は「違うわよ」と乱れた前髪の隙間から鋭くこちらを睨んだ。
「三つ編みが好きなのかと思ってた私がバカみたいって言っただけ」
「三つ編み自体は好きですけど」
「誰が」
「私が」
「は? どうでもいいわよ」
「……えっと、誰かの好みに合わせようと思って三つ編みにしてたってことですか?」
「あんたに関係ないでしょ」
あれおかしいな、話振ってきたの先輩なはずなんだけど。この人と会話成立したことない気がする。きっと今後もしないんだろうな。もういいや、ご飯食べよ。椅子に座って弁当を開くと、当たり屋ノルフ先輩は嫌そうな顔をした。でてってほしいんだろうな。でも今から移動してたらお昼休み終わっちゃうし。無視しよ。
平然とご飯を食べ続ける私に、自分が出ていった方が早いと思ったのか彼女はのろのろと荷物をまとめはじめた。ローブの先から覗く手がやけに白く見える。いっそ病的なほどだ。前からこんな白さだった? よく見たら顔色も良くない気がする。そういえば来た時蹲ってたっけ。
「何見てんのよ」
「いや……隈酷いなって。寝てないんですか?」
「……誰のせいだと」
「100%私じゃないでしょ」
なにその擦り付け。暴論すぎ。あまりの横暴ぶりに引きつつ、私は鞄から小瓶を一つ取り出した。
「……なに?」
「眠り薬です。寝支度完璧にととのえたら飲んでください。一時間以内に眠れるはず。多分」
「はっきりしない言い方ね」
「試作中なので……」
まだ効果がまちまちなんだよな。十秒で眠れたり一時間かかったりする。ちゃんと指定時間で眠れるようなものは作れていない。
立ち上がった彼女は、差し出した小瓶を胡乱げな眼差しでじろじろ見ながらも受け取った。意外な結果に内心で驚く。だってあんだけ嫌われてるっぽいし。突き返されるかと思ってた。相当参ってるのかな。
「絶対寝る直前に飲んでくださいよ! 歯磨きの途中で寝落ちとかしたら危ないから!」
すたすたと扉へ向かう背中へ声をかける。最後まで返事はされなかった。
「……あ」
髪飾り返してもらうの忘れてた。
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