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 制服を作り終え、漏れ鍋に帰ろうとする叔父さんの袖を慌てて引っ張り引き止める。

「叔父さん、今年の誕生日プレゼント、まだ私にくれてないよね?」
「ああ、そういえばそうだったな。いいだろう、なにがほしい?」
 
 降参したというように両手をあげ、望みをきいてくる叔父さんにぐっと口角を上げた。ホグワーツ入学年の誕生日プレゼントといえば、もちろんあれだろう。
 
「フクロウが欲しい!」
 
 

 木にとまる何百羽というフクロウたちはそれぞれ気ままに鳴き声を上げたり、クルクルと首を回したりしていた。ゆっくりと店内を歩く私に合わせてキョロキョロと目玉を動かしている。ペットショップの動物にしてはあまり人馴れしてないようで、四方八方からの警戒混じりの視線が突き刺さる。
 
「アイツなんてどうだ」
「……鷹みたいだね」
 
 店の奥でひときわ強い存在感を放つ大きなフクロウを指さして揶揄うように薦めてくる。鋭い目はちょっぴり怖いがかっこいいとも言えるだろう。あの子はあの子で素敵だけど、どちらかといえば小さい方がいいなあ。あと可愛い子がいい。
 そんなことを考えながらなんとなく右を見るとこちらを凝視しているフクロウがいた。ビックリして思わず動きを止める。見つめ合ったまま硬直していれば、そんな私達の様子に気付いた店主が「ああ」と声を上げた。
 
「アフリカオオコノハズク、オスだ。生まれて間もないから好奇心旺盛。少し荷運びが苦手だ」
 
 くりくりとした大きな瞳は綺麗な琥珀色している。見つめてきたのはそっちのくせに、フクロウは『どうして見てくるんだろう?』とでも言うかのように不思議そうにパチパチと瞬きをした。ば、ばかわいい……!
 
「叔父さんこの子、この子がいい!」
「はいはい──おーい、頼むよ。こいつと、それから飼育キットと──」
 
 
 取手に青いリボンがついた小さめの籠を持って店をでる。叔父さんを見上げて礼を告げると彼は穏やかな笑みを浮かべた。
 
「名前をつけてやらなきゃな」
「名前……なら、名前はアンブルにする」
「フランス語で琥珀か。なかなか洒落てるな」
 
 隣にいた叔父さんが感心したように言うものだから思わず鼻が高くなってしまう。アンブルも心なしか嬉しそうな鳴き声をあげた。
 
 

「やあエドガー! 仕事の方はどうだい?」
 
 必需品を全て買い揃えパブへと戻る。部屋に荷物を置いてから夕飯をとりに階下へ降りた。フィッシュアンドチップスやソーセージなどが所狭しと並べられたテーブル上でジョッキを合わせて乾杯をする。油っこいそれらを一心に口に詰めていると、とんがり帽を被った顔の赤い魔法使いが叔父さんに声をかけた。かなり酔っているようだ。叔父さんは肩を竦めて返事をする。
 
「まったく平和なもんさ」
「そいつはなによりだ!」
 
 男はガッハッハッと豪快に笑い、叔父さんの肩を叩くとその場から去っていく。その背中が人の波に揉まれて見えなくなるまで見つめてから、目の前の叔父さんに視線を移した。
 
「えっ叔父さんって仕事してるの?」
「失礼な。闇祓いとして働いてるよ」
「…………闇祓いって、」
「ああそうか、これだけじゃ分からないよな。なんと言ったらいいか……まあ悪い魔法使いを捕まえる警察みたいなものさ」
 
 オウム返しに呟いたのを疑問の声だと思ったのか、マグルでもわかりやすいような説明を付け加えてくれる。ただ、私は分からなかったわけじゃないのだ。ただ純粋に驚いていただけで。エドガー叔父さんってもしかして意外と有能な魔法使いだったりするのかな。独身貴族を満喫するただの根無し草じゃなかったのか。
 
「捕まった魔法使いたちはアズカバンという監獄に収容される。ディメンター、吸魂鬼と呼ばれる看守に見張っているから脱獄は基本不可能だ」
 
 そこまでいうと顔を顰める。「あいつらは人の幸せを吸い取っていってしまうんだ」闇祓いでもディメンターはあまり好きじゃないようだ。
 
「対抗呪文が未だに一つしか解明されてないなんて信じられないね」
「対抗呪文」
「みせてあげよう。エクスペクト・パトローナム!」
 
 叔父さんが杖を大きく振ると、杖先から銀色の光が噴き出し、それは瞬く間に一つの物体へと変化していく。大きなヒグマの姿をかたどったそれはパブ内を雄々しく駆けて一周してみせた。あちこちから楽しそうな歓声があがる。戻ってきたヒグマがすぅーっと空中に溶けるように消えるまで私はずっと拍手を送っていた。叔父さんは得意げに鼻を擦っている。
 
「すごい!」
「上級呪文と言われているが私はこの魔法が特別得意なんだ」
「……それ、私もできるようになれる?」
「そうだな……魔法にも遺伝というものがある。可能性は0じゃないと思う」
 
 目を輝かせる私に叔父さんは苦笑しながらジョッキをあおった。そしてたっぷり味わってから、こちらを試すように「やってみるか?」と問うてくる。そんなの、答えは決まってる。
 
 勢いよく頷けば、叔父さんは私の頭をぐしゃりと撫でた。
 そんなわけで、九月一日の入学日まで叔父さんはうちに泊まることになった。私に守護霊の呪文を教えるというのもそうだし、キングス・クロスの九と四分の三番線ホームはマグルだけじゃ分からないだろう、ということだった。
 

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