2.亜麻色の波打ち際で


 ロナルドとは、ロナルドがロナルドと呼ばれる以前からの知り合いで、ガチ五歳だった頃から知っている。要するに、私たちは幼馴染だった。
 高校からは学校が違うということもあり疎遠になっていたけれど、卒業してお互いが退治人になったことで再会を果たすに至った。大人になってから再び相見えた彼は記憶の数倍格好よく成長していて、本当にあの『ヒデくん』なのか――と、呼んでいた。中学二年までは――と、何度も、それはもうしつこいくらい確認してしまったものだ。少し喋れば中身はほんとにびっくりするくらいなんにも変わっていないことが分かって、安心した。
 現金なものだが、そうして再会したことにより、叶わない初恋と割り切って胸奥へ仕舞っていた恋心は、途端に息を吹き返してしまった。なんと単純。我ながら恥ずかしくなってしまう。でも思い出の美化効果も相俟り、フィルターかけて今の少し落ち着いた彼を見てしまうのはやっぱり仕方ないといいますか。
 だって、中身は殆ど変わらないのに、退治終わり、気だるげに月へとタバコの煙を伸ばしてて、でも私に気付いて慌てふためきながら、まだ全然長いタバコの火を消すし。それで極めつけとばかりにへにゃって、昔と変わらない笑顔で笑いかけられたりしたら……もう、ねえ? 色んなギャップで胸がこう、ギュッてなっちゃうでしょ、ギュッて。異論は認めない。なるったらなるのだ。
 なんて、私のロナルドギャッブ最強論は置いておいて。
 とにかく、退治人となったロナルドは早々に独り立ちをし、たちまち市井からの人気も得て、あっという間に名の知れた売れっ子退治人のロナルド様へと成り上がった。
 だけれどほら、外面はああでも中身はアレなので。つまり初心五歳。どんなお姉さんがやってきても、女の子が寄ってきても、立つフラグを片っ端から折って折って折りまくる。エロゲ主人公の才能皆無だな……と、傍から見ていて安心はできるけれど、でもだからといって高みの見物なんかは決してできなかった。だって同じく彼へと想いを寄せる身としては、見ていてほんと、可哀想になるくらいだったから。……でもまあこの調子なら彼女なんてできないだろうな。一生恋に恋してそう、コイツ。いや一生は困るけれど。とりあえず今はまだ、私も『友達』をしていたいし。
 私はそう油断しきって、数年ほどのんびりと現状に胡座をかいていた。
「オッ、おお、ぉ、おれ、おれと――デッデートしてくれませんかッ!」
 のが、いけなかったのだろう。
 ……と私はつい先日に解らされたはずなのに、ま〜た油断こいてました。どうも、学習能力が著しく欠如した可哀想な馬鹿です。罵ってください。
 街灯が落とす白いライトの下で立ち止まって急に短く切れた呼吸をし出すから、どうしたのかと思えば。退治終わりの帰り道のことである。恋愛相談にのってほしいというクソみたいなお願いを愚かにも引き受けた数日後のことでもあった。特に何も言ってこないなコイツ。恋愛相談の件は流れた? 流れたのかな? ヨッシャ! と思っていたところに、いきなり先の言葉をぶち込まれた。油断していた分、彼の大声は心の柔らかいところへ素直に刺さった。
 めちゃくちゃ余談だが、ロナルドはなぜか、いつもなにかと理由をつけて私を家まで送っていた。送らなくていいと私も毎回言ってるのにも関わらず、だ。私だってもう一端の退治人なのにな。余程頼りなく思われているらし――いや、そんな話は今はどうでもよくて。
 今――今はそう、デート。今こいつ、デートって言った?
「デート?」
「そ、そう、でーと……」
 思わず繰り返した私の声は唖然としすぎていてかなり小さいものになっていた。そんな小声に対し、ロナルドはうら若き乙女のように頬を染めて、律儀にコクコクと肯定する。
「アッ、あの、あれな! 予行練習! この前あの、好きな人の、ほら、アレをお願いしたろ?」
「……分かってるよ」
 慌てふためくロナルドに、ぴくんと眉根が寄る。わざわざ釘を刺されなくとも、そのくらい十分承知していた。だってお前には、『私』をデートに誘う理由なんて、それ以外に存在しないもんね。
 浮かんできた毒を我慢しきることができなくて、刺々しい声になってしまった。あからさまな態度すぎるせいか、ロナルドもさすがになにか気付いたのだろう。戸惑いがちに数度瞬きをした。みるみるうちに、眉が下がり、青い瞳が不安そうに細くなる。いい大人が、瞬く間に叱られた子どものようになってしまった。
「えっと……ごめん。め、迷惑、だったか?」
「……そんなことないよ」
 ああちがう、ロナルドは、なんにも悪くない。ごめん。謝らなきゃなのは、私の方。自分で引き受けたくせに、勝手にしんどくなってる私がいけないの。
 本当はそう言ってしまいたかった。それが言えなくともせめて、そんな顔をさせてしまった謝罪をしたかった。
 だがここで謝ってしまうと、『ではなぜ怒ったのか』という疑問が彼の中で生じてしまうだろう。それはそれで私にとっては都合が悪かった。
 なので私は謝罪はせず、ただ「いつ?」とさっきよりなるたけ柔らかい声音を心がけて尋ねた。まだ困惑は残っていたが、それでも分かりやすくホッとしたようにロナルドの目元が緩む。パッと笑顔が咲いた。
「明日!」
「……私は空いてるけどさ。直前に聞くのは絶対にやめなよね」
「えっ? あ、うん」
 きょとんとしている顔へ、絶対分かってないだろうなと苦笑する。普段はちゃんと社会人できるのに、オフになると途端にバグるのなんなんだ。休日に遊ぶの下手すぎでしょ。こういうとこ、昔から変わってない。
 なんの約束もしてないのにいきなり家に来て「公園いこ!」と誘ってきていた『ヒデくん』を思い出して、少しだけ口元が綻んだ。
「あっあとさ、オシャレ! たくさんしてこいよ!」
「たくさん?」 
 たくさんってなんだよというつもりで聞き返したのに、彼は至極真面目にこっくり頷いた。
「ほんとのデートみたいな、とびきりかわいい特別な格好してきてほしい」
「……いきなりのくせに無茶言うなぁ」
「うっ、それはごめん」
 ほんとのデートじゃないのに、残酷なことをコイツはまた。
 そう思ったけれど、私は先の反省を活かし、苦い気持ちを笑顔へと昇華させて誤魔化した。
「ていうかほぼ身内みたいな相手が『女』だしてるとこ、本気で見たいか?」
「……お前は身内じゃないだろ」
 冗談のつもりで軽く言ったのだが、ロナルドはギュッと眉をひそめて低い声をだし、珍しくあからさまに不機嫌となった。失言だったかな。ロナルドにとって家族というのはなにより特別で大事で尊いものだから。たかが幼馴染の私なんかを、その括りには含めたくはなかったのかもしれない。
「そうだね、ごめん」
「ん……」
 推定ではあるが、彼の気持ちを汲んで素直に謝る。やけにしんみりと重たくなった空気を変えるため、私は「あっ」とわざとらしく声を上げた。
「デートって言ってきたからには、どこに行くとか、もちろんちゃんと決めてるんだよね?」
「えっ、や、あんまり……アー、桜木町あたりを適当にブラつく、とか?」
「うーん、それもいいとは思うけど……桜木町って新横浜近いからかなんか吸血鬼多くない? 結局仕事になる未来しか見えない」
「たしかに。んー……あ、じゃあ江ノ島とかは? なんか色々ありそうじゃん。そこそこ遠くて、デート感ある……気がする。あとあそこら辺てなんかデートスポットっぽい、感じがする」
 ワヤワヤしてんなあ、と思ったが私もたしかにそうかもとか思ってしまったので言わない。澄ました顔で「分かった、とりあえず十二時に駅ね」なんて言った。
 それにしてもオシャレ。オシャレか。髪はたまたま美容院の予約を朝から入れていたからオッケーとして、服はどうしよう。そんな急に言われても……最近は忙しくて買い物にもあまり行けていない。だから本当は明日ショッピングにでも行こうと思っていたのだ。なんか映画とか観て、そのついでに買い物とか……でも映画も服も、別にまた今度でいいし。ああ、そういえばクローゼットの奥にかわいいワンピースを数着眠らせてたような気がする。買ったはいいけどなかなか着る機会がなかったやつ……。皺とか大丈夫かな。大丈夫だとは思うけど、できればやっぱアイロンかけておきたいな。
 やらなきゃ、というかやっておきたいことは山ほどあった。気持ちが急いて、それに伴い自然と足も早まった。本当のデートではないけれど、でも一応デートはデートなんだし。ていうか最初にそうロナルドが言ったんだし。
「そういえばお前、相手が誰とか聞かないんだな」
 そうやって都合のいいように考え、浮かれていたとき。背後から投げかけられた言葉に、弾まんばかりだった足取りがぴたりと止まる。振り返れば、先程と変わらぬ位置でロナルドが少しだけ眉を下げていた。街灯の落とす光の加減かもしれないが、その顔は、困ったようにも残念がっているようにも見える。しかしそれがいったいどういう理由からのどういった感情を示しているのかは、私にはよく分からなかった。
 ロナルドの心を射止めた女性――もしかしたら女性じゃないかもだが――が、気にならないわけがない。ロナルドがいったいどこに惹かれたのか。自分とはいったいなにが違うのか。できることなら毛穴のひとつまでじろじろ観察してやりたい。
「――聞かないよ」
 そんな気持ちに蓋をして、平然と嘘を紡ぐ。ぽっかりとした月のように丸く、そして冷たい白をしたスポットライトの中で一人佇むロナルドへ、微笑みを向けた。
「だって、興味ないから」

 誰か知りたいよ。
 どうして好きになったのか。
 いつから――いつの間にそんな恋をしていたのか。
 本当は全部聞きたい。

 けれど自分とのその想い人の違いを――恋をするロナルドなんてものを目の前に突きつけられてしまえば、きっと私はもう、息ができなくなってしまうから。

 聞けない理由は、自分を守るための、そんな惨めな最低防衛だった。

     ∞

 なんとなく気まずい空気で別れたが、翌日のデートは何事もなく始まった。
 少し遅めのお昼として、駅前のパンケーキ屋さんに行き、ひだを幾重にも重ねたようなバカのクリームタワーが乗った芸術点の高いパンケーキを食べ――七割くらいはロナルドの胃に消えた――、その後は水族館をゆっくり周り、イルカショーで濡れて笑いあったりして。
 そんなふうに過ごしていれば、時間はあっという間に過ぎていた。思えばこうして二人きりで遠出したのは初めてかもしれない。子どもの頃は二人きりで遠出なんて当然できなかったし、大人になってからも、なかなか機会はなかった。ギルドメンバーを混じえての飲み会とかなら、何度かあるけれど。
「……初めてが『予行練習』か」
 水族館の出口に設備されているギフトショップの外で、壁際に寄りかかって一人自嘲する。ロナルドはまだ中で会計中だ。ジョンへのお土産に、アザラシやらの海洋生物がプリントされたラングドシャを買うらしい。
 不意に横から伸びてきた光に顔を照らされて、ついと顔が上がった。たちまち視界を満たした茜の眩さに目を細める。水族館裏手にある海岸へと繋がる通路の奥で、夕焼けが輝いていた。水面がキラキラ反射しているのが、ここからでも少しだけ窺える。
「わ……」
「わり、待たせた――」
「ロナルド見てあっち――空、すごい綺麗!」
 海岸の方を指差しながら、店から出てきたロナルドを振り返る。「へ、あ、おー……」しかし返ってきたのは、いまいちパッとしない反応だった。私が邪魔で、この美しさがよく見えていないのかもしれない。
「ほら、こっち」
「は⁈ お、おい手、手!」
 もどかしくなって、思わず手を取って歩き出す。狼狽する声がしたが気にしない。それよりも、早くしなきゃ陽が沈みきってしまうかも、ということで頭がいっぱいだった。
 ロナルドの分厚い手を引っ張って、茜に導かれるまま水族館の裏手へ回る。海岸へとでれば、ちょうど沈みかけの大きな太陽が、輪郭を暈しながら海面に溶けようとしていた。やっと一望できた景色の美しさにほうっと見惚れて、一瞬だけ足を止めてしまう。もっと近くで見たい。逸る思いに急き立てられるまま、妙に汗ばんでいる彼の手を握り直して、緩い段差の階段をくだり、なだらかな亜麻色の砂の傾斜を滑るように降りていく。
 そうして私たちは、足元の砂の色が濡れて濃くなった位置まで海へと近付いた。緩やかに寄せては返す波の綾にさえ、淡い蜂蜜のような金色が柔らかく編まれていた。
「ぁの、えっと……ってオイ、どこ行くんだよ?」
「ん、ふふ」
 私はロナルドの手を離して、彼一人を波打ち際へと残した。幻想的な風景を目にして、気分がひどく高揚していたのだ。
 私はクスクス笑いながら、ふらふらと二人分の足跡を踊るように辿って、ロナルドから距離を取った。そうして少し離れた場所から、カメラフレームの形を模した両手を、前方へ構える。片目を瞑って形作られた四角いフレームを覗き込めば、天の高いところから順に、じんわり滲む藍色や、紫色にたなびく細い雲、燃えるような銀朱を漂わせる海が見えた。そして、それから――。
「きれい……」
 そんな見事な薄暮を背にしたロナルドの姿が、まさしく写真のような一枚絵として切り取られて収まっていた。
 ふわふわしたシルバーの御髪へ、斜陽の茜がぼんやりとかけられている。逆光となって杳とした相貌の中に、蒼が不思議と光っていた。日暮れの茜に、日の出の青藍が同時にある。溜息が出るほどに贅沢な光景だった。
 ああ、なんだかこうやって指の中から見てしまえば、海も空も――それからロナルドさえも、まるで私だけのものみたいだ。そんなことないのは当然分かってる。彼は彼のもので、私はその心に触れる権利さえない。でもどうか今だけ。――この瞬間だけは、どうか神様。
 そんなバカバカしい祈りを込めて、私はフレーム内の光景を目に焼に付けた。浮世離れしたような光景のせいか、少しくらい夢を見たって許される気がしていた。
「……ね、綺麗でしょ!」
 照れ隠しと諦めを織り交ぜながら、即席指カメラを解く。稚拙で歪な満足感から緩んだ口角を引き締め、改めて海を見るように促すつもりで声を張った。そのタイミングで少し強い海風が吹き抜け、流していた私の髪を揺らす。反射的に髪とスカートを軽く抑えて目をつぶれば、「ああ」という掠れ声が風に乗って運ばれてきた。やっとこの景色の素晴らしさを共有できたと、私は喜び勇んで睫毛を持ち上げた。
「きれいだ」
「え……」
 ロナルドは、海も空も見ていなかった。ただただ私を真っ直ぐに見据えていた。その、なんというか……まるで愛おしいものへ向けるかのような、とにかく至福そうに蕩けた瞳に息を呑む。逸らしたいような、ずっと見ていたいような、矛盾した心地に苛まれた。送られる眼差しの熱で焦がされそうになりながらも、私はなんとか声を絞り出す。
「な、なに見て言ってるの、それ……」
「なにって、そんなのおま……、……オビャッ、アッあっ、ああああああのっ、あのそりゃおま、あの――う、海! と空! に決まってんだろ⁈ なあ⁈」
「なあって私に聞かないでよ」
 まったく見てなかったじゃん。ていうかなんなら、今でさえ見てないじゃん。唇を噛み締めて、身悶えしたくなるような衝動を必死で抑え込んだ。赤くなっているだろう頬を少しでも見られないようにと顎を引き、ロナルドをきつく睨む。彼は私の視線から逃げるように顔を背け、やっと夕景の方を見た。
「お、おー、きれいきれい。いやあ、すげーなほんと!」
「ほんとに思ってんの」
「思ってる思ってる。あの、あー……あ、アレだな! 夕陽見てたらなんか腹減ってきた、よな⁈ ヴァミマの新作のホット・レッド・ホットチリペッパーチキン。お前あれ知ってる? この夕陽の色にすげーそっくりの赤なんだぜ。いやこの前食ったんだけどあれマジ舌が弾けたかと思ったくらい辛くって――え? 知らない? ッシャ待ってろちょっと買ってくるから!」
 なんも言ってないんだが。
 急に一人でぺちゃくちゃ怒涛の勢いで話し始めたかと思えば、ロナルドは少し遠くに見えるコンビニへと猛ダッシュした。引き止める間もなく彼の姿がゴマ粒大となる。ロナルドが消えていった方をしばらく見つめ、それから深く溜め息を吐いた。
 私はザクザク砂を踏みしめて階段のほうへと戻り、段差の砂を軽く払り、空いたスペースの端っこに腰を落とした。膝に肘をつき、手で顎を支える。どんどん小さくなっていく太陽をむっつり眺めながら、ロナルドが戻るのを、背中を丸めてじっと待った。
「おまたせ!」
 十分もせずにコンビニの袋を引っ提げて帰ってきたロナルドの顔からは、赤はすっかり引いていた。
「座ったら?」
 満面の笑みで袋を見せてくる彼に、肩を竦めて隣を指す。いそいそと隣に座り買ってきたものを開け始めたロナルドにバレないよう、私はもう一度息を吐いた。
 夕陽とコンビニのホットスナックを同列にするのはやめたほうがいいとか。
 デート中にヴァミチキ買いに走ってデート相手を一人にすんのとか絶対アウトだし最悪だからなお前、とか。
 色々言ってやりたいことはあったけれど、それらは全て飲み込むことにする。教えてなんてあげない。本番でも同じことしてしまえ、バカルド。なんとも思っていない幼馴染相手にだってあんなことをさらっと言えちゃうやつは、ヴァミチキで全てをぶち壊してフラれてしまえばいいんだ。それで――。
「ほら、見てみろよ」
「……えっやば、完璧同化してんじゃん」
「な、すごくね⁈」
 ……それで、ヴァミチキごときでフるような人なら、もう諦めてしまえ。
 だって私なら同じテンションで盛り上がることができる。失望するどころか、らしいなあって、尚更愛おしくなっちゃうくらいロナルドが好き。ずっとずっと昔から好き。好きなんだよ。ねえ、気付いてよ。
「……すごい」
「へへ、だろ。気付いた俺、偏差値が百億あるよな」
「ほんと、すごいばか」
「ア⁈」
 気付いてよ、じゃない。お前が自分で言うんだよ、ばか。
 内心で自身をそう叱咤するも、伝えなきゃいけない言葉を紡ぐことは、どうしてもできなかった。馬鹿でどうしようもない臆病者。ほんと、救えない。

 帰り道、「今日のお礼」と言ってガラス細工のクラゲのキーホルダーを渡されたが断った。予行練習とはいえ支払いは全て彼持ちだったし、ただ一日付き合っただけでお礼されるようなことはなにもしていない。なにより、これ以上惨めな気持ちになりたくなかった。
 
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