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拝啓 天国のおじいちゃん
お久しぶりです。私はいま、諸事情により海賊の船に身を寄させてもらっています。(とはいえ、まだ海賊にはなっていませんので、そこは安心してください)
あとついでにG○ogle翻訳機能が搭載されてカナヅチになりました。
私を乗せた海賊船は空を飛んで、今は空の上の島にいます。意味が分からないかもしれませんが、そういう世界なのでそこは納得してください。島の入口にはヘブンズゲートと書いてありました。もしかしすると、ここは天国なのかもしれません。天国みたいにキレイなところです。おじいちゃん、ご近所にいたりしますか? いそうな感じならぜひ会いたいです。
会いたいっていうか、助けてほしいです。
「神エネル名において、お前達を“雲流し”に処す!」
孫は犯罪者になってしまいましたので。
空島に着いた私たちは、とりあえず入口っぽいところへ向かい、そこで門番のおばあさんに「八十億E払え」と言われた。のだが、払えなくても通っていいよとか言うので、お言葉に甘えて門を通り、その後は上陸した島のビーチで遊んだり――空島の海でも普通に泳げなくてナミにまた怒られた――、コニスという原住民の少女の家にお邪魔させてもらったりして。私たちは空島をはちゃめちゃに満喫していた。
しかしそんな所に、白い帽子の兵隊のような人達が現れたと思ったら、不法入国者呼ばわりされ、挙句、罰金として当初の十倍の額を請求された。は? 意味がわからん。
空と地上は通貨が違うらしく、八百億Eは地上の金額に換算すると八百万B。額もひどいけど、それより門番の不気味な顔を思い出して沸々と怒りが込み上げてくる。いや通っていいって言ったじゃん! 言ったじゃん!! 全然良くないじゃん! なにあのババア。こんなん口も悪くなってしまう。だってやり口がせこい。
「八百万Bって高すぎるわよ!」
だから高圧的に命令してくる隊長らしき人をナミが轢いたときは、すごくスッキリした。……いかん、心が暴力に染まってきている気がする。
しかしそのせいで、ナミは船ごと“雲流し”にあってしまって、今はここにいない。船に乗っていたロビン、チョッパー、ゾロも一緒に連れ去られてしまった。
ということで、攫われた彼らの元へ向かうために、残された組であるルフィ、ウソップ、サンジ、それから私は、コニスから借りたボートに乗り、雲の川をどんぶらこしてます。
「……顔色が悪いけど、平気かい? やっぱり空の騎士にコニスちゃんと一緒に連れていってもらった方がよかったんじゃ……」
「大丈夫です、大丈夫……」
気遣わしげなサンジの声に、なるべく遠くの景色を見つめながら返事をする。たしかに目の前で落雷(※人為的)(???)が起こってビビりはした。空の騎士が間に合わなければ、コニスが死んでいたかもしれないという恐怖もまだある。
でも顔色はきっと空島の薄い空気と、“声”のせいだ。ここの声たちは、地上より大きくてうるさかった。今も頭の中で絶えずワンワンがなっていて、不愉快すぎて今にも吐きそうだ。国会よりうるさい。
「試練楽しみだなー!」
「そうですね」
「そうですね?!」
けれどルフィの近くにいると、どうしてかそれが少しだけ軽減されるから、できる限り彼の傍についていたかった。
特に深く考えず同意したら、ウソップに「やっぱりお前も“そっち側”だったのか……?」とドン引きされる。よく分からないけど違うよ。ていうかやっぱりってなに?
「な、お前、選んでいいぞ!」
「……じゃあ玉で」
「んおれもそれがいいと思ってたんだ〜! おれたち気が合うね!」
くねくねと関節を感じさせない動きで身を捩らせるサンジに、ちょっと反応に困ってしまい、私は伝家の宝刀・笑って濁すを使った。い つ も の。いやほら、レディファーストとか日本人は慣れてないし、それにこういう……その、ナンパ的な扱い? も、なんかあの、苦手じゃん、日本人は。クソデカ主語でいかせていただきます。
「まあたしかに、この中だと唯一暴力的な響きが比較的ない……ような気はするけどよ」
試練は四つ。沼、鉄、紐、玉。どの試練ルートにするか選べるようなので、一番マシそうなルートを選んでみた。
「(ほんの数十分前までは、海賊もちょっと楽しいかもとか思ってたんだけどなあ)」
ボートを飲み込もうと待ち構えている、先の見えない真っ暗なトンネルに、目から力が抜ける。
こうして小さなボートにルフィ、ウソップ、サンジと詰め込まれている今、とても『楽しい』とか呑気なことは思えなかった。
「(でも、ナミたちを見捨てるわけにもいかないし)」
私がいたってなにができるんだという感じではあるけれど、でもこういうのは気持ちが大事だから。
私は大きく息を吸って、覚悟を決めた。
拝啓じーじ、見ていてください。不肖孫、玉の試練いざ参ります。なにせ、今更舵は切れないのだから。
なんか意外と、結構そこそこ役に立てた気がする。
焚き火を囲んで黄金がなんちゃらと嬉々として話している麦わらの一味を横目に、ぼんやりと夕飯のシチューを口に運ぶ。シチューにニンニクって合うんだなぁ。美味しい。ロビンが拾ってきた青くて綺麗な岩塩の欠片をなんとなくいれてみたら、より美味しくなった。チョッパーがじっと見てたので使うか聞いたら、「おれはこれでちょうどいいから」と、やけに静かにお断りされた。なんか、なんか心にキたな、あの断り方……。
玉の試練をめちゃくちゃ端折って説明すると、ハンプティダンプティみたいな神官が小さい島雲の玉をぶつけて船から落とそうとしてくるので、それを避けつつ倒すことだった。玉の中身はランダムで、動物だったり植物だったり、爆弾だったり。
つまり、私には玉の中身の声が半数ほど“聴こえていた”。聴こえない玉は爆弾やらの、所謂触れば一発アウトの危険物。だから聴こえる玉と聴こえない玉を彼らに伝えることで、リスクを可能な限り回避することができた。神官にかんしては、心網とかいう技にみんなちょっと苦戦してたけど、でも最終的にはハンプティ神官もしっかりぶっ飛ばした。船からの脱落者はでず、ルフィもウソップもサンジも、もちろん私も、そこまでひどい怪我も負わず、無事試練をクリア。そうしてナミたちと合流! めでたし!
もちろん、『これ』が漫画にもあるお話なら、私がいなくたってどうせなんとかなってはいたんだろうが。
「(でも、ちょっとでも役に立てたのは嬉しいな)」
今までは本当にただのお荷物だったので。
私は船でお荷物なことを、それはもうかなり気にしていた。お役に立てるなら、頭痛くらいなんのその、だ。
私の能力だが、あんまり“声”に意識を傾けすぎると、神経がごりごりにすり減ることが分かった。今日の学びだ。活かしていこう、明日から。
そんなわけで、頭を使い過ぎてしまった私は、キャンプファイヤーの途中で気絶するように寝落ちてしまった。
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