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ロングリングロングランド唯一の住民が、凍った海から陸を何度も振り返り、手を振り、頭を下げながら渡っていく。
老人と馬の姿がそうして完全に見えなくなった頃、ナツがなにかに気が付いたように「ああ」と小さく声を上げた。
「だから海が怒って風が笑ってたんだ」
「あん?」
「いや、さっきから海がブチ切れてまして……、……ああ、この人が海を凍らせて渡ってきたからか」
耳を澄ませてから、ナツは可笑しそうに口元を緩めて独り言ちた。切迫した相貌でロビンが固唾を飲み、青キジへと落ち着きなく視線をやる。青キジはそんなロビンを歯牙にもかけず、目を細めてナツを見つめた。「なあなあ」チョッパーがナツの服の裾をクイクイと引っ張る。
「なんで海が切れるんだ?」
「悪魔の実の能力者に凍らせられたことが気に食わないらしいですよ。“私たちを裏切ったくせに”って」
「ほー、意外と面倒な性格してんだな、海も……」
「……お嬢ちゃんも能力者なのかい?」
青キジの静かな尋ねかけに、ルフィが油断ない眼差しを青キジへ飛ばす。
「え? あ、はい、多分……何の実かは分からないですけど……」
「あ、そういや空の騎士が言ってたな。お前寝てたもんな。たしかヤクヤクの――」
「――“三十輪咲き”!!」
ロビンの唐突な叫びが、ウソップの説明を遮った。青キジの体から生えた幾つもの白い手が、青キジの体を拘束する。顎元を掴まれながらも、青キジは余裕を崩さず、冷静な態度を貫いていた。
「あーらら……なるほどね。やっぱりそういうこと……」
「“クラッチ”!!」
ロビンの関節技により、青キジの身体が背中から折れ、ガラガラと砕ける。ウソップとチョッパーが叫ぶ中、ロビンはナツの腕を掴んだ。
「早く逃げて!」
「えっなに――」
「んあァ〜……お前さんがそんなに必死になるってことは……どうやら、本当らしいね」
「ッ!」
ロビンがナツを背に隠すように、氷の身体を再生する青キジへと対峙する。「参ったな、こりゃ……」青キジは手元の雑草を千切り投げて空中で凍らせると、一振りの剣を生成した。
「今日はなにもしねェつもりだったんだが……まあ、海兵として、悪魔の子と――“災厄の翻訳家”を揃って見逃がしてやることはさすができねェからな……」
お前ら、今、死んどくか。
ごっそりと色を失くした海軍大将の声と瞳に、剣士が鯉口を切り、コックが地面の感触を確かめるように爪先で地面を軽く蹴る。
一味の頭は、顎を引いて拳を握り締めると、麦わら帽子の鍔の下から、氷の男を鋭く見据えた。
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