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 あれから毎日ルフィに「今日の月はどうだ?」と聞かれます。最悪。本当に最悪。無愛想に「うるさい」で一蹴してやってもルフィは全くめげてくれないから厄介だ。時をかけれるなら、あの日の自分をルフィごと海に突き飛ばしてやりたい。もうそのくらいうんざりしている。
 あと聞かれる度になんかポエムに浸ってた自分を思い出して恥ずかしいし。蒸し返すな、そういうことを! 情緒がない! いやこれにかんして情緒を持たれたら色んな意味で今よりもっと困るな……。


  ✲✲✲


 さて、サウザンド・サニー号は、ついに魔の三角地帯へ突入した。すぐ前が見えないほどの濃い霧が立ち込め、突然夜が降り掛かったように辺りが暗くなる。急に空気がジメッとして肌寒い。二の腕を摩りつつ、お風呂から上がったばかりのナミへと擦り寄る。

「なんでちょっと楽しそうなの、あんた」
「進研ゼミでやったところだから」
「はあ?」

 実はココロさんから『オバケが出る海』というようなことを聞いた時点で、私はちょっと『おや?!』なんてそわっときていた。私の持ち得るなけなしのワンピ知識も、“ついに来るぞ”と告げている。や、ほら、一度見たら結構頭に残るじゃん、あの人――人? 骸骨? って。フランキーの時はなんか気付いたら仲間になる流れになってたので感動する暇がなかったけど……今回こそ彼らが邂逅する瞬間に立ち会えるのだ。そんなファンではなかったけれど、しかしやはりわくわくする。ミーハー心も顔を出そうというもの。

 濃い霧の中をキョロキョロとする横で、ナミが「変な子……」と言っていたが気にしない。ふふ、ここら辺に島かなんかがあるのかな?! 結局前回の島でもバイト三昧だったから今回こそまったりしたいなぁ。


「ヨホホホ〜……ヨーホホーホー……」
「なんだ、この音楽……?」

 古い木がギイギイ軋み、冷たく重い海を圧し拓いて進む音が、霧の奥から唸りを上げる。その中へごく自然に紛れる微かに震えた甲高い歌声――外見から推測される声色とピッタリすぎる声に、私は口角を上げて振り返った。



「私この度、この船でご厄介になる事になりました! “死んで骨だけ”ブルックです! どうぞよろしく!!」
「ふざけんな! なんだコイツは!!」

 というわけで、私の知ってる最後の一人が合流しました! わあすごい! ルフィと、くじ引きで決まったナミとサンジが連れ帰ってきたリアルアフロガイコツに感動していたら、頭をスパンとはたかれた。

「なに目ェきらきらさせてんのよ! 考え直すようルフィを説得してよ!」
「む、無茶言わないでよ」
「ナツが嫌がったら聞いてくれるかもしれないでしょ?!」
「やんわり拒絶程度で考えてくれるなら今頃私はこの船に乗ってないです」

 私一度は「船に乗らない」ってはっきり言ったんだぞ。なのに押し切られてこうなってるんだから。誰が言おうとルフィには無駄でしょ。……あれ、これ一番最初に私を勧誘したルフィとみんなの反応と一緒じゃない? うわ、順応してしまったな私も……。

 若干のショックを受けながらも、「それに私は嫌じゃないよ」と笑ってみせると、ナミだけでなく、ウソップやチョッパーも「ええっ?!」と大声を上げた。他のみんなも一斉にギョッとした顔を向けてきたのでちょっとたじろぐ。

「なんで?! 喋って動くアフロのガイコツだぞ?!」
「海は広いんだからそういう人もいるでしょ」
「か、寛容〜?!」

 何を今更と肩を竦めると、ウソップが数珠をガシャガシャ鳴らして大袈裟にひっくり返る。ブルックは細すぎる首をカタカタ奇妙に揺らして「ヨホホ!」と愉しげに笑った。

「心の広いお嬢さんだ。ところでパンツ見せて貰ってよろしいですか?」
「いやです。悪魔の実ですか?」
「あ、はい」
「え〜っ?! あっさり〜?!」

 ああやっぱり。ていうかそれ以外ないよね、むしろ。この世界の不思議出来事は大抵『A.悪魔の実・もしくは“この世界だから”』で片付けられると私はもう学んでいる。しかし簡単に肯定したブルックに、みんなは絶叫した。

「おい、お前」

 ブルックの提案――「長くなるので話は船内で! 続きは夕食の後でお話しましょう!」「てめェがしきんな!」――で中に入ろうとしたら、通り過ぎざまにゾロが声をかけてくる。ゾロは呆れたような疲れ顔で私を見下ろしていた。

「ルフィに似てきたな」
「……えっ?」

 悪口か判断に迷って、暫く甲板に立ち竦んで考え込んでしまった。ギリ……ディス……?
 

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