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ゴーストにルフィたちがネガティブにさせられたり――ということはネガネガの実……?――、墓場でゾンビに襲われたり、大怪我をした老人プラスその他被害者の方々に泣き縋られたりしながら、私たちは島の中心部に位置する屋敷へ辿り着いた。
「そのまま真っ直ぐ走れ、ナツ!」
しかしいざ屋敷に辿り着いたら着いたで、今度はゾロやサンジが音もなく姿を消していく始末で。私はルフィに助けられてゾンビ広間を抜け、中庭まで出たはいいものの、合流するはずだった地点に肝心のルフィの姿はなかった。ゾロたち同様、ルフィも捕まってしまったらしい。うっ私はまたみんなの足を引っ張って……。墓場ではサンジとの特訓(継続中)の甲斐あって自衛くらいできてたのに……。項垂れていれば「あとにしろ」とフランキーに起こられてしまった。
大クモのゾンビに追い詰められた所をブルックに助けられ、ゾンビの浄化法と身の上話を聞いてから、私たちはルフィたち奪還のために塩片手に屋敷内を走り回り、その最中でウソップとチョッパーに再会した。
「ナミは?!」
「あいつは命を狙われたわけじゃねェ、出直して必ず助けるぞ! とりあえずルフィたちの“本体”なら船に戻されたはずだ! おれたちはさっき見たんだ、実はルフィの影が――」
二人が見たという話を聞きながらサニー号まで戻り、荒らされた船内で、無惨におちょくられた状態で放置されていルフィたちを叩き起す。
「透明人間がナミと結婚?!」
「おれが巨人? ゾンビってそうやってできるのか」
「口の中に塩ね……しかしよくそんな弱点まで見つけたな」
「弱点にしろお前らを救出しに来た事にしろ、助言をくれたのはあのガイコツ野郎だ。あいつァ――」
そうしてそれぞれ情報を共有し、状況を整理した結果――。
「――スリラーバークを吹き飛ばすぞォ!!」
ということになりました。
打倒ゲッコー・モリアRTA。どうしてそんなに急いでるの? 夜明けまでに影を取り戻さなきゃルフィ・ゾロ・サンジ、ついでにブルックが陽の下を歩けなくなるからです。今は夜だから平気だけど、いくらこの辺りの海が霧深いとはいえ朝陽が少しも射さない保証はない。
私たちはひとまず二手に分かれることになった。モリアのダンスホール組と、ゴースト姫・ペローナの部屋組。私はナミ奪還に加わりたいのでダンスホール組だ。
「透明なのをいいことに覗きって、本当に気持ち悪い」
「ウグッ」
獣っぽい唸り声のせいで判断しかねてたけど、あいつやっぱりただの変態だったんだ……。当たり屋や通り魔的痴漢にあった感覚だ。あの時は気付けなかったけどあとから考えたら『あれ、もしかしてアレって……?』とじわじわなるやつ。そう思うとなんかますます気分が悪くなってくる。軽蔑する。不愉快な思いを隠さず吐き捨てると、なぜか同じく怒りに燃えていたはずのサンジが吐血した。
「う……いったいなにが……? あれ、フランキー?」
「おう、無事か」
恐る恐る目を開くと、先程別れたはずのフランキーとゾロがいて困惑した。「急に道が塞がったかと思ったら、おめーらが落ちてきたのよ」瓦礫だらけの足場にそっと降ろされつつ、周りを見回す。ロビンたちはいない……落ちてきたのは私とウソップとサンジだけだ。まだパラパラと落ちてくる破片から頭を庇いつつ、もうもうたる土埃が揺らぐ空を見上げる。さっきまで駆けていたはずの階段はぽっきりと折れていた。
「上で何があったんだ?」
「それがよく分からないの」
犬神家の一族のように地面に突き刺さっているウソップとサンジを引き抜きながら、ゾロの問いかけに答える。
「ルフィとサンジがゾンビを蹴散らしてて……でもネガティブゴーストで足止めを食らいそうになったから、急いで逃げるぞってしようとしたところでいきなり足元が消えた」
「で、この壁か。何なんだこの壁は……! ウェポンズ左!」
「んん?! 石じゃねェな」
「あの、とりあえず攻撃してみる癖、やめたら?」
「いいからお前もなんかやれよ」
ええ、無茶を言う……。まだ私は能力を使いこなせていないから、例え『物』とはいえど、なんでもかんでも本にできるわけじゃない。物ならば最大でおよそ全長三メートルが限度だ。ゾロのダンベルで試した。あと人間なら、自分より強過ぎる相手とかも多分無理。ルフィたちは私に気を許してくれてるからできるだけだ。
壁なんて絶対無理だろうなと思いながらも、渋々近付こうとしたところで「バカ! それは壁じゃねェよ!」とウソップに手を引かれた。ウソップは私を岩陰まで後退させて、ぽかんとしているゾロたちへ叫んだ。
「そいつがルフィのゾンビだよっ!!」
ゾンビルフィは、一際大きな瓦礫を帽子に見立てて被り満足し、最後まで私たちに一瞥もくれないで去っていった。な、なんだあれ……。
混乱はするし驚いたけど、こちらに危害を加えてこないならとりあえず放置だ。どうせルフィがモリアを倒せば自動的に影も抜けるんだし。気を取り直してフランキーが一分もかけないで修復した橋を渡って屋敷へと向かう。
「階段と橋でお前らを全員ゾンビ共の餌食にするつもりだったのに、まさかオーズが降って来るとは。とんだ邪魔が入ったもんだ」
屋敷へ踏み入った私たちを出迎えたのは、ゴスロリモチーフのファンシーなお部屋だった。わあかわいい! 趣味ではないけど。
革張りのソファに悠然と腰掛けていた可憐な少女が、「ホロホロホロ」と笑ってこちらを見た。えっなにその笑い方……えっ?
「だが! すでにてめえらはこのゴーストの恐ろしさを充分わかっている筈……私は霊体を自在に生み出す“ホロホロの実”の霊体人間! このゴースト達は私の分身、人の心を虚ろにする!」
「ホロホロの実?! ゴスゴスでもネガネガでもなく?!」
「あのムカつくゴーストの黒幕が、あんなキューティーちゃんだったとは!」
「言ってる場合かお前ら! 全員アレ食らったら一瞬で全滅だぞ!」
ウソップの言葉にフランキーとゾロも顔つきを険しくさせる。彼らはケルベロスで向かってる時にあれを体験しているし、サンジも食らったばかりだった。私も逃げようと踵を返したところで、放たれたゴーストが背中から胸をすり抜けていく。冷水を注がれたような寒気が全身を駆け巡り、胸を抑えてがっくりと膝を着く。
「(……あれ?)」
「あっけねえな。後は上の奴らか」
ゾンビが雄叫びを上げてこちらへ向かってくるのが聞こえ、違和感を飲み込んで慌てて立ち上がる。応戦しようと手を構えたが、「乱れ撃ち“塩星”!!」という声に私は動きを止めた。
「うちの船員に、手出しはさせねェ!!」
「え……お、おう! させない!」
「しまった……くらったフリをしてやがったのか――“ネガティブ・ホロウ”!!」
「うわっ……!」
空気を読んで意気込んだはいいものの、ウソップとともに再びゴーストを胸に受けてしまった。冷気の感覚に身を固くする。しかし薄目で自分の手や体を矯めつ眇めつ見てみるが、やはりなにも起こっていなかった。心の変化も、特に……。戦意を削がれているとかも、なさそうだ。なぜ私たちだけ。不発だろうか。
「なぜだ! てめェら、なぜ膝をつかねえ!! 一体どんな手を使って!!」
「どんな手も何も! おれたちゃ元々ネガティブだ!!」
「は?!」
「え〜っ?!」
堂々と宣言したウソップにプリンセスと一緒に驚く。わ、私も? たしかに効かなかったけど、別にそういうことでは――えっそういうことなの?!
「あの、私、現実的な慎重派な側面がちょこっとあるだけでネガティブではないというか……」
「度を越してんだよ。……いいか、お前はおれに負けず劣らずのネガティブだ!」
そ、そんな……。
思いもよらぬ短所――今こうしてみんなの役に立てそうだから短所でもないのか?――の発覚に呆然とする私へ、ウソップは『しょうがねェなコイツ』という顔をした。
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