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「ったく、バカにしやがって……番号くらい覚えてるっつの」
「……ちなみに聞くけど、うちの船があるのは?」
「1番グローブだろ」
「は……? 41番なんだが……?」
は……?
ゾロは「そうか?」とか首を捻って怪訝そうにしている。は……? 『そうか?』じゃねえ、そうなんだよ。薄々思ってたんだけど、ゾロってもしかして……すごくバカ……?! まじまじ見る私に気付かず、ゾロは、また樹脂から生まれた大きなシャボンがマングローブの先へと消えていくのを、のほほんと仰ぎ見ていた。呑気か。
魚人島への渡航手段はマリージョアを通るかシャボンディ諸島で船をシャボンコーティングするかの二つしかない。ということを、たまたま知り合ったもとい釣り上げた人魚のケイミーたちに教えてもらった。
そんな成り行きでやってきたシャボンディ諸島。サンジとウソップに懇願されて島を散策したいというゾロの付き添いをしたはいいものの。ここまでひどいとは思わなかった。
「ゾロの老後が心配すぎる……。首輪でもつけといた方がいいのでは?」
「老後まであるかね、首」
「なんでそんな物騒なこというの?」
「ま、誰かにやる気はさらさらねェがな。大体、首の心配ならお前もだろうが」
「私はどうせ生け捕りだから大丈夫」
「お前も大概物騒だぞ」
どこが? 事実だよただの。
ゾロから物言いたげな含みある眼差しを送られ、私は「なに?」と目を眇めた。
「ルフィ、避けてんなァお前のこと」
「うっ!」
な、なんで今急にルフィの話をだした! ぐっさり刺された胸を抑えて睨むも効果なしで、ゾロは愉しげに口端を持ち上げ、皮肉るような意地悪な笑みを浮かべた。
ゾロの言う通りで、エースの話をしてからルフィとまともに会話をしていない。ルフィは私に構わなくなった。みんなが集まる場所――食堂とか、アクアリウムバーとか――であからさまに避けたり不機嫌になったり嫌な態度を取ってきたりはない。けど私の顔を視界に入れた途端にあのルフィの目が据わる瞬間は、何度見ても胃が痛くなる上、普通に凹む。
「わ、私……船降ろされるのかなぁ……」
「そりゃあないだろ」
「でもルフィ、めちゃくちゃキレてるじゃん……」
あんなに怒りが後々まで尾を引くタイプだとは思っていなかった。でも、私だって一応、謝ろうとはしたのだ。しかし私が話しかけようとするより早く、何かを察したかのようにサッと逃げられてしまうし……。なに? 私センサーでもある? 私がそんなにいや? 待って自分で言っててすごいショック。
しょげる私のなにが面白いのか、ゾロはクツクツと喉で笑いながら、出店で買った割高な酒を傾ける。
「素直に話しゃいいだろ、スリラーバークで何があったかをよ。そんな後ろめたいことしたのか、お前」
「みんなを売るようなことは一切してません! 誓います!」
「んなこた別に疑ってねェよ」
断言されたのが意外で思わず目を見張ったけれど、ゾロ本人は特に何も気にしていなさそうだ。それに私が驚いているのを見ても「なんだよ」と眉をひそめるだけだった。
「いや……疑ってないとか言うから」
「あ? なんでお前を疑うんだよ」
心底不可解そうな声と顔に、私もそれ以上何か言うのをやめた。あ、そう……別に失言とかじゃないんだ、今の……。そうですか……。いつの間にかそんなに信用を得ていたらしい。構えていなかった所にストレートで入り、率直に照れてしまい下唇を食みながら顎を引いた。
「……あのさ、もし私が、その…………なんやかんやしてたって知ったらゾロは怒る?」
「……いや、その『なんやかんや』の部分によるだろ」
「正論やめて。今の私は面倒臭い人間なので同調・同意以外求めてない。もっと私に寄り添った返答をして」
「分かった、ぶち怒る」
「ぶちっ……?! いやそこは怒らないって言ってほしいんだけど!」
「マジでめんどくせェ」
ゾロはぐしゃりと顔を歪め、耳に指を突っ込んで私の抗議を遮断した。は、はあ〜? なにその態度……私がいなきゃ船まで戻ることすら出来てなかったくせに。相談(という名の慰め)くらい乗ってくれたっていいじゃん。そんなんだから地図も数字も読めないのだ。不貞腐れつつも「助けてよ風紀委員長」と呻くと、「ふざけた呼び方すんのやめろ」と拳骨を落とされた。ねェまだ全然怪我人なんだが私!
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