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親方! 空から女の子が!
という感じでレイリーさんに助けてもらった。分かりやすいね。ただ三日三晩垂直に飛んでいただけとはいえ、傷負った体を極寒の空中で無限バウンドされてたみたいな状態と変わらないので、レイリーさんに保護されてからも、私は五日弱眠り続けていた。らしい。起きて困惑している私へ、看病してくれていたというシャッキーさんが教えてくれた。
「あ、明日処刑?! ポートガス・D・エースが?!」
「だめよ、興奮しちゃ……元々の傷が酷いんだから、あなた」
シャッキーさんにゆったり窘められる。そんなこと言われても無理だ。動揺で心臓がすぐ耳の横で鳴っている。起き抜けだと言うのに、血がありえない速さで巡っていた。
「わ、私行かなきゃ……エースはルフィのお兄さんなんです!」
「えぇ? モンキーちゃんが?……レイさん」
「……まあ、家族の形は様々だからな」
またこの人は意味深なことを言う。匂わせばっかりだ、このおじさん。本にして読んでやろうか。うそだけど。普通に私じゃ敵わないだろうし、命の恩人にそんなことはできない。
「きみが行ったところでなんになる。そんな負傷をしていて、起きてるだけでも苦しい状態だろうに」
「なにもできないかもしれないけど、でも、船長のルフィが行くんですよ。何も出来ないというのは、船員の私が行かない理由になりますか」
「……ルフィ君がなぜ来ると?」
「家族が死んでしまいそうなのに、ルフィが来ないわけない」
感情論になってしまったが、少ししか関わっていないレイリーさん相手でも説得力はしっかりあったようで、彼は厳かに「そうか」と頷いてくれた。
「だがきみを行かせることはできない」
「え……?!」
「先程、『何も出来ないことは行かない理由になるか』と言ったね。元副船長の立場から言わせてもらえば、それは行かない理由としては充分に足るものだ」
「なにをっ……!」
憤る私の前に手を翳して動きを制する。レイリーさんは「理由は二つ」と、指を二本立てた。
「一つ。明日の処刑は、確実に戦争が起こる。白ひげは家族に手を出すものに容赦はしない。そして白ひげが海軍に乗り込むことは、海軍とて承知の上。全面抗争になることを覚悟の上での処刑だ……海軍の手練は当然揃っているし、七武海も招集されているだろう。分かるか、つまり……戦場に足手まといは邪魔なだけだ」
反論を許さない厳しく重い声色に、唇を噛み締めて手を握りしめる。足手まといなのは分かっている、もうそんなの、ずっと前から知っていた。理解している上で、行こうとしていた。その無謀さや軽率さを理詰めで突きつけられ、気道が狭まる。
「……それに、船長は」
固く丸めた拳の上に、深い皺が幾つも刻まれた手を重ねられた。近くなった気配と一転して柔らかくなった声に、顔を上げる。レイリーさんが向けてきた、悪夢を見たと泣く子どもを安心させるような眼差しに、自然と手から力が抜けた。
「ルフィ君は、こんなにも傷を負った船員を戦場へやりたいとは思わないだろう。これが二つ目の理由だ」
レイリーさんは最後に前髪を梳かすように頭を撫で、「さあ、もう少し休みなさい」と白い外套を翻して部屋から立ち去った。
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