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海賊だから、まあ、そりゃ戦うよね。
私が海賊たちの戦闘を目の当たりに、というか体験したのは、船にお邪魔してから五日ほど経った頃だった。
緊迫した顔のナミに女部屋に押し込まれ、一人ベッドに座る。外からは物が壊れる音とかなんか戦ってるんだろうなって音が絶えず聞こえてきていた。こわ。
バイキングと海賊って何が違うんだろ。ていうかワンピースって全然知らないから、海賊って言われて真っ先思い浮かぶの倭寇なんだよね。世界史の記憶が死んでるから。バイキングはノルマン人だっけ。なんとか大移動……。
取り留めのなさすぎることをぼんやり考えていれば、突然部屋の扉が乱暴に開け放たれる。扉口には、如何にも、といったようなつばの大きい帽子を被った見知らぬオジサンが、黄ばんだ歯を見せつけるように笑っていた。おわ、あ、え、これ逃げ、逃――。
「〜〜〜!!」
まあ戦いの心得なんてミリも知らん私がモブ? とはいえ腐っても海賊の男から逃げるなんて無理でしたよね。
そんなわけで、私はあっという間に人質にされていた。背後では小汚い男が声高になにかを喚いている。甲板からこちらを見上げる麦わらの一味の顔に、あ、私がいると攻撃できないんだ、なんて遅ばせながら気付いて、申し訳なさが募った。え、やさしいな……ていうか迷惑をかけちゃってる……。背後からの勝ち誇ったよう笑い声が耳障りで、ちょっと顔を顰める。うーん、タバコと酒と、あとは体臭が普通に臭い……。
ふと下から眩しい光を感じて視線を落とした。視界に映り込んできた太陽を反射させてギラつく剣をぼうっと見つめる。
「……おりゃ」
鋭く研がれた刃をギュッと掴んでみた。激しい痛みが手に走り、一拍置いてブシャッとすごい勢いで手のひらから血が噴き出す。自分でやったくせに、あまりの痛みに息さえ止まった。
え、なにこれいった〜い。痛。ハ? いった!! いや痛いんですが?! まだワンチャン夢である可能性を捨てられていなかったから思い切ってチャレンジしてみたんだけど、いや全然痛い、痛すぎる。見た目通りの刃物だった。手がもうこれ見てこれ真っ赤なんだが。ジンジンと痛む赤々とした血潮を呆然と見つめる。え、いやめちゃくちゃ痛い……普通に泣きそう。
私の奇行にドン引いたのか、海賊のオジサンが身動ぎをして血塗られた剣が首元から離れた。した瞬間、ものすごい風圧が顔の横をチリと掠め、背後のむさ苦しい気配が消えた。さらにドンガラガッシャーンとけたたましい音が後ろからあがったので、驚いて振り返って確認しようとしたのに、突然お腹に巻きついた圧迫感のせいでそれどころじゃなくなった。私はグエ、と潰れたカエルのような唸りを洩らしながら、下の甲板に向かって引っ張られていく。腕の主は、麦わら帽子の下から鋭い瞳を差し向けてきた。
「〜〜〜」
ルフィは眉間に皺を寄せて強い口調で何かを言っていた。けれど、やっぱりよく分からなかった。でも多分、迷惑をかけたことを怒られているに違いない。ごめんなさい、もう勝手なことしません。
そんな思いでコクコクと頷いたが、ルフィは険しい顔を崩さない。どころか、なにかを咎めるようにほっぺをぎゅうと押し潰されてしまった。
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