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「仲直りしなさいよ」
ナミは腰に手を当てて、「アンタらしくもない」と目を窄めた。
「私だって気になるけど、いくらなんでもあの態度はない。ナツが可哀想」
「うっ……」
ピシャリとした調子でナミに言われ、ルフィは苦しげに呻いた。ルフィの顔が、苦いものを食べた時のように歪む。
「だって、でも、でもよォ……!」
「……分かるわよ、気持ちは。一人で背負おうとしてて、私もムカついてる」
一つ下の少年の気持ちに寄り添うように、ナミは声の棘を少し和らげた。
今にも途絶えそうな儚い呼吸ばかりのナツをかわりばんこで見守ることが、一味にどれほどの恐怖を与えたことか。夜が来る度、今日こそ真っ暗闇にこのまま彼女の意識も命も引き摺り込まれてしまうのではないかと、毎夜気が気ではなかった。
けれどナツは、一味が抱いたそんな恐ろしさをきっと少しも分かっていない。また迷惑をかけたとかなんだとか見当違いのことを思っているに違いないのだ。しかしそれでも、あの頑ななナツも、いずれは自分から事情を話してくれるとナミは信じていた。というか、そうでも思わなければやってられなかった。
「……ねえ、ルフィ。もし仲直りするなら、私にいい提案があるの」
ロビンが立ち止まった先には、煌びやかなアパレルショップの通りが並んでいた。
店を数軒ハシゴして、ルフィはやっと一式を揃えた。買い物慣れしているナミとロビンは店を回るのもそこまでの苦ではなかったけれど、チョッパーやハチがバテてしまったので、途中からは別行動になった。ブルックは三人の付き添いだ。アドバイス係として、ナミとロビンはルフィとともに残っていた。パッパグはうるさかったので連れて行ってもらった。
「ルフィ、決まった?」
「んー……んにゃ、もーちょい……」
先にも言ったが、ナミとロビンはショップを何軒も回ることに慣れている。だがルフィが自らそうしようとするとは思わなかったと、船長のみせた意外なマメさにひそかに目配せした。
「青系のものが多いのね」
最後にルフィが選んだピアスもそうだった。ロビンの指摘に、ルフィは得意げに「ししっ」と笑った。
「初めてアイツを見つけたとき、海の中にいたからよ」
ナツは海の色が似合うんだ。おれ、あいつのそういうとこも好きなんだよなー。
さらりと続けられ、一瞬聞き流しそうになってしまった。ロビンとナミは無言で顔を見合わせ、ルフィへ視線を送ったが、ルフィは気付かず満足そうに選んだ服が入った紙袋を覗き込んでいた。
ほんの一時間前まで、ナツの名前がでる度に渋い顔をしていたくせに。それを忘れて能天気に笑う調子のいいルフィに、ナミは呆れた。呆れながら、「早く仲直りしてよね」と口角を緩めた。
――“災厄の翻訳家” ナツ マリンフォード頂上戦争以降、行方不明
「ほんとうに、早く仲直りすればよかったのに」
なんで渡さなかったのよ、ばか。
空の柔らかい牢獄の中で、航海士は黒い染みで斑になった新聞をぐしゃりと握り締めた。
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