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皇子様の取り合い


「…………どいてくださいヴェイン様。」



「…………………」




「…………申し訳ありませんがどいてください。」




「…………………………」



「…………あっ、ラーサー」


「何っ!!!!!?」



「聞こえてるんならどいてください。」


ラーサーの一言で反応するこのお方。


実はラーサーの兄であり頭も切れ「戦争の天才」とも呼ばれたアルケイディア帝国の帝位継承第一位のヴェイン・ソリドール様なのだ。




そんな27歳で実績もあり容姿もそこそこのヴェイン様だが



「ふ………私は半径159m以内であればどんな場所であれラーサーの居場所を見つけることができるのだ。」



超ラーサー好きなのである。


「そもそも一般市民がラーサーのことを軽々しく呼び捨てする事が気に食わん。だいたい………………」


ああ、また始まった。ヴェイン様の小言。


この人は貴族以外の人間を見下す癖がある。一般市民はもとい元空賊の私に対しては特にきつい。

「これはラーサーが言ってきて………」


「だめだ!ラーサーが許しても、私は許さん!」


あう………こうなったらヴェイン様は何言っても聞かなくなる。



………っていうかさっき半径何mか以内だったらラーサーの居場所どこでもわかるって言ったのに私のひっかけに騙されてなかったこの人?



「いいか?ラーサーのことを一番すきなのは私なのだ!わかったか!!」



わかりません。



「ラーサーのことを一番好きなのは私です。」


「なっ……………!!」


「あ、 スイ探しましたよ。」


ヴェイン様が怒りに顔を歪ませたとき、ちょうどラーサーがやって来た。


「あれ、兄上まで………どうしたんですか?」


「今ちょっとお話してたの。行こっラーサー。」


私はラーサーの手を引っ張って元きた道を戻った。


後ろからものすごい殺気をかんじるのは気のせい。きっと気のせい。













「さっき二人は何話してたんですか」



ラーサーの部屋につくと、彼の一言目はそれだった。



「ンー、ヴェイン様より私の方がラーサーのことを好きって話。」

「ふーん」


それだけ言うと、ラーサーは黙ってしまった。



「ねぇスイ」

「ん?」





「僕は誰よりスイが大好きですよ?」


ラーサーは私にちゅ、と口づけをした。









皇子様の取り合い


皇子様は私を取った

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