GUNDAM

please……


「……まっずい。」


がりっと音がした。ええ、チョコなのに。
……なんで?


「奥さまに頼んで台所貸してもらえたのに……」


そのうえお金ももらってチョコを買ってきたのに。この味じゃあ誰かに上げるどころじゃあない。どうしよう、せっかくいろいろとしてもらったのにこれじゃあ奥さまにも顔向けできない。でもこれを渡すのも気がひける……っていうか私の恋が終わる。


「ソシエさんやキエルさんに手伝ってもらうのもあれだしなあ、やっぱり主人と使用人だし。あ、そうだ。」


彼に手伝ってもらおう。彼ならちょうどあの人と歳が近いし男の意見も聞ける。なにより彼はあの人と仲良しではないか。

そうと決まれば善は急げだ。(これが善なのかはわからないが)私は大急ぎで彼の元に行った。たぶん今頃はお昼休みだろうから。













「……で、そのお手伝い役が僕ですか。」


彼……ロランは汗をぬぐいながらため息をついた。


「お願い!他の人には頼めないの!あの人のこと好きって知ってるのお嬢様方とロランだけだし、お嬢様方には頼めなくて……」

「たしかにお嬢さんたちには言いにくいですよね。参考にならなさそうですし……」

「まあ、そうなんだよね。」


キエルさんとソシエさんはお嬢様育ちだから、料理なんてしたことがない。もちろん包丁すら持ったことない。たぶん二人を呼んだら毒が出来上がりそうだ。




「そうですね……じゃあ、まずはその作ったチョコをいただいてもよろしいですか?」



「手伝ってくれるの?」



「当たり前じゃないですか。」



「わーい、ありがと!!ロラン大好きー!!」




思わず飛び上がって抱きついた。そのときロランがびしっと固まった気がしたけど気のせいだよね?



というわけで早速ロランにチョコを食べてもらった。


「……硬い、ですね。」


「うん。」



「生クリームは入れましたか?」



はい?


生クリームですと?



「入れてない」



「じゃあ、たぶんそのせいですよ」




ちゅっと手についたチョコレートを舐め取るロラン。硬いなんて言ってもちゃんと食べてくれるんだ。
というかチョコレートつくるのに生クリームなんて使うの?初耳だよそんなの。全然発想しなかった、溶かせばいいとばかりに……




「スイは料理はできるのにお菓子作りはからっきしなんですね。」




「う……料理は必要なスキルだけど、お菓子は作れなくても生きていけるかと思って……」



まさか好きな人にチョコレートを作って渡すなんて当時の私全然考えてなかったからね!というか料理がひととおりできたらお菓子も自然に作れると思ってました。




「でも、スイは器用ですし大丈夫ですよ。きっと上手に作れます。僕も手伝いますから。」



「うん、ありがと。がんばつ!」


やべ、噛んじゃった。ロランが大きく口を開けて笑った。
















試行錯誤とロランの努力の末(ほとんど私は邪魔ばかりしてた気がする)、ようやくおいしいチョコレートが完成した。



「やったー!おいしいよぉー!」



「すごいですスイ!まさかここまできれいにできるなんて!」






ロランがぱちぱちと拍手してくれた。うん、うれしいぞ。



「早速渡してくるね!ありがとうロラン!ホントにありがとう!」



私はロランの手を握ってぶんぶん振りまくった。ロランはちょっと痛そうにしてたけど、まんざらでもなさそうだった。

私は丁寧にラッピングを施した後、大急ぎで彼の元へ向かった。



「……あのチョコ、僕にくれたらよかったのに……」




だからロランの最後の一言は聞こえなかった。大急ぎで走ったからホントに聞こえなかった。

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