GUNDAM

独占まで3・2・1!


「…………」



正直、イライラしていた。

デュオってばいつもみんなのとこばっかり。

そりゃあ、デュオのやってることは戦争で、人の命に関わるとっても大事なことだってことはわかってる。


でもデュオってお調子者だから、大切な話でもジョークを入れてみんなを笑わせている。デュオもつられて笑っているのを間近で見てると、なんだかイライラする。


私はデスサイズの整備担当だから、戦闘が激化したことで前より一緒にいる時間も長くなった。でも、プライベートの時間も、二人きりでいる時間もぐんと短くなった。

仕方のないこと。もうすぐ終わること。だからもうちょっとだけ我慢しないと。そう言い聞かせるたびに、胸のどこかがちくちくした。

もっと私を見てほしい。かまってほしい。私だけを見て、触れて、愛を囁いて。

わがままだってわかってる。でも、でもね、やっぱり特別扱いしてほしいの……。



「……、い……おい!」

「えっ?」

「だから、右腕の調子が悪いんだって言ってんだろ! ちょいちょいっと見てほしいんだって」


気がつけば、デュオが眉間にしわを寄せてこちらを向いていた。一瞬ドキッとする。

いけない、私ったら廊下で変なこと考えてたんだ。さっきのこと、口にでてないよね……?


「ごめんね、ぼおっとしてた」

「あー、最近連戦だったもんなあ。」


ぽんと、デュオの手が私の頭を撫でた。


「スイにもけっこう無理させてるし、いつも悪いな」

「……ん…」


身長はあんまり変わらないのに、私よりずっと大きい手。

ゲンキンな奴。ちょっと優しくされたくらいで、もう有頂天な気分なんだから。





*****




格納庫に向かったあと、整備の方に事情を話して私とデュオはデスサイズヘルのコクピットにいた。

さっき私がチェックしたかぎりでは、どうも問題は操縦席にありそうだったから。


「右腕以外にも動かしにくい所ってある?」

「特には……いや、ちょっと左腕も違和感あるな」

「そう、じゃあここらへんかな」

「…………」


カバーを開けて確認する。ヒューズのひとつがちょっと焼け焦げていた。これのせいで動きが鈍くなっていたのか、最悪回りに飛び火して大惨事になるところだった。

すぐに取り外して予備と交換した。


「なあスイ、ここに変なのが出てきたんだか、これなんだ?」

「ええ? どれ?」


私は前のめりになって指された所を確認しようとしたときだった。

突然デュオに腕を引っ張られて、がっちりホールドされてしまった。


「捕まえたっ!」

「ひゃあっ!!?」


私は条件反射で離れようとしたけど、デュオは私を逃がさなかった。それどころか、開けていたハッチまで閉じてしまった。

ライトはつけていたから暗くはならなかったけど、狭い空間で、デュオとふたりきり。しかもこんなに密着して。

意識すると恥ずかしすぎて、顔から火が出るくらい真っ赤になった。


「おいおい、大きな声出したらこっち見られるだろうが」

「デュオまって! 下ろして!」

「だーめ」


デュオはさらにきつく抱きしめてきた。顔がぐんと近づく。


「他の人に、変なことしてるって思われるよ」

「大丈夫だって! みんな整備だとしか思ってねえよ」

「でも、さっきでっかい声出ちゃったし、出てこないと気づかれるかも……」

「まあそんときは見て見ぬふりしてくれるって」

「……っ!」


いやいや絶対嘘だ。ガンダムチームのみんなならともかくハワードさんとか絶対茶化しに来るに決まってる。


「ちょ、デュオ!」

「やっぱりスイは柔らかいなあ」


デュオは私の胸に顔を埋めた。頬擦りしながら匂いを嗅いでいる。


「バカ!変態!」

「なんだよ、愛しの彼氏様に変態なねーんじゃねえの。前はよくしてただろ」

「だって……!」


久しぶりにするんだもん、キャパオーバーっていうか、耐性ついてないっていうか……!


「最近、こーいうことしなかったから寂しかったろ」

「ぜ、全然寂しくなかったし、平気だったから」

「意地張っちゃって」


にやりとデュオが笑う。

そのイタズラっぽい笑みに、ドキッとする。まるで私の心のなかを見透かしてるみたい。

そうだよ、デュオの言うとおり、寂しかったよ。胸が締め付けられて、どろどろしたものがあふれて、どうにかなってしまいそうだったよ。

なんでデュオにわかっちゃうかな。全部、顔や態度に出てたかな。

不服の意味を込めてにらみつけると、デュオはくつくつと笑った。


「かわいい奴」


デュオはまた胸に顔を埋めた。

今、心臓がどくどく言ってるの聞こえちゃう。


「っう……」

私は思わず身をよじった。


デュオが動くたびに彼の長い髪が揺れる。それが愛しくなって、思わず撫でた。長いくせに、さらさらの髪。

ふいにデュオが顔をあげて、目が合う。吸い込まれそうな青い瞳。

それはゆっくり近づいてきて、いつの間にか唇と唇が重なりあっていた。


「ん……」


ちょっとカサカサしてるデュオの唇。でも、柔らかい。私は目を閉じて、彼のキスを受けた。


「そういや、キスするのも久しぶりかもな」

「そうかもね」


にっこりデュオが笑う。私もつられて笑った。

私はデュオの肩に顔を寄せた。


「お。なんだ、急に甘えて」

「んー……」


すうと鼻で息をすると、デュオの匂いがした。なんだか、懐かしく感じて、安心してしまう。


「もう少し充電したい……」


今はたった二人だけの、秘密のシチュエーション。

ああもう、ゲンキンだってわかってるけど、幸せすぎてどうにかなっちゃいそう。

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