GUNDAM
きみと二人で
「ふえ……」
ぱち、と目を開ける。
どうやら私は寝ていたらしい。
「……疲れてるのかな」
おおきくあくびをする。まさかベッドに座ったまま寝るなんて、どうせならベッドに倒れこめばいいのに。自分のことながらちょっと笑ってしまった。
地球人である私が、宇宙に上がってから数日。なれない無重力空間に体も心も悲鳴を上げていた。
もちろんそれは私だけの話じゃない。この間だってヤーニさんとミハエルさんが大量の地球人をつれて故郷に帰ろうとする暴挙に出たほどだ。その気持ちは分かるけどたった二機のボルジャーノンだけであんなにたくさん帰れるわけないじゃないとあきれたことを覚えてる。
でも、地球に帰りたいと思ってるのは事実だった。たしかに月は見てみたい。だけど、その代償としてこの宇宙空間での生活は私にとってあまりにも過酷だった。
きっと、一人だったらくじけてるだろう。
「ん……」
「ん?……ってあれ?ロラン?」
ふとひざを見ると、ロランがふとももに頭を乗っけて寝ていた。属に言う膝枕ってやつだ。
「あれ、スイ起きてたの?」
私が身動きしたからか、ロランも目を覚ました。ごしごしと目をこする。
「起きてたっていうか、今起きた。ロランはいつからここにいたの?」
「けっこう前から。休憩にスイのところに寄ろう、って思ってきてみたらスイが寝てるから」
「それでなんでふとももに乗ってるの」
「スイのふとももが気持ちよさそうだなって思って」
「変態」
くすくすと私が笑うと、ロランもつられて笑った。
ロランと私は一応お付き合いしている仲だ。地球にいる頃にロランから告白されて私もそれを承諾した。で、時間があるとこうやって二人で一緒に居たりしてる。
付き合ってしばらくしてからロランは私に敬語を使わなくなってきた。私と距離を作らなくなってきたんだろう。私はそれがうれしかったけど、一部の人には関係がばれてしまい、ソシエちゃんは口を聞いてくれなかった時期もあった。今は大丈夫だけどね。
「スイとこうするのってひさしぶりだなあ」
ロランはごろごろと私の腰に巻きついてきた。そのまま顔をすりよせてくる。
まるで猫みたいだ。……いや、ロランはどちらかというと犬かな?
「宇宙に来てから忙しかったもんな」
「特にロランはホワイトドールもあるし、月の人だしね」
宇宙に来てからロランはかなり忙しそうだった。ここに慣れてない地球人のぶんも働いてたし、その地球人たちの世話もあったし。とやかくいう私もかなりお世話になった。
私は私で慣れることに必死だったから、ロランとの時間なんて気にする余裕はなかったけど、ロランは違ったのだろうか?
「スイ、やわらかい……」
こんどは起き上がって肩に顔をうずめてきた。どうやらそうとう我慢してたらしく、ぜんぜん私から離れようとしない。
「首に噛み付きたい…なんて」
「ロラン、ほんと犬みたい」
「犬は噛まないで舐めますよ」
「どっちもするでしょ」
ふ、と笑いながらロランの綺麗な髪を撫でてやると、本当に首に噛み付いてきた。
そんなに強くない、甘噛みだけど、強くないからこそもどかしい感じがした。それに少し恥ずかしいし、やり場のない手や顔をどうすればいいのかわからなかった。
「ちょっと、くすぐったいよ」
「んー、もうちょっと……」
ぎゅう、と腰に腕を巻きつけてくるロラン。ちょっと苦しいけど、悪い気はしなかった。私はというとどうにもやる事がなかったからロランの頭を撫でているだけだった。
「やっぱり、スイといると落ち着きます」
「そう?」
「一緒にいると安心するっていうか……」
ひとしきり甘噛みして満足したのか、ロランは顔を上げた。ちょっと物足りないと思う私はかなりロランに依存しているのだろうか?
「ねえロラン。今日、一緒に寝る?」
「え、いいの?」
「変な事しなかったらね」
「なんだよ変な事って」
なんだろうねーなんていいながら私達はベッドに寝転がった。
「やっぱりスイはやわらかいなあ」
寝転がったとたんロランはまた私の胸元に顔をうずめる。腕もぎゅっと腰に巻きつけて、絶対逃がさないとでも言うように。
甘えるロランがなんとなく子供に見えてきた。いや、やっぱり犬なのかな?それも子犬。そういえば、リリさんはロランのことを豹って言ってたっけ。
そうかもしれないけど、今のロランはやっぱり子犬だな。
できれば、これからもずっと、こうしてロランと一緒に入れたらいいな。
「そういえばスイってけっこう胸大きいよね」
「そういうロランはけっこう変態だよね」
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