GUNDAM
宇宙の果てで囁くのは
指と指が、複雑に絡まっている。
お互いがせわしなく指をほどいては、また絡ませていった。そのたびにタカキは心臓がきゅうと締まっていくのを感じる。
年上なのに、自分より少しだけ短い手。でも、パイロットらしからぬ細くきれいな彼女の指が大好きだった。
狭いコックピットの中で、大好きな彼女と二人きり。しかも、タカキは操縦席に座っている彼女の膝に、股がるように座っている。そんな密着した状態で、年頃の少年が興奮しないわけがない。
手は指を絡ませながら、タカキはずっと彼女を見つめていた。
無重力下で長い髪が漂い、時々タカキの頬を掠める。少し、くすぐったい。
ああ、ずっとこのままだったらいいのに。時間が止まって、この狭い世界の中で、スイさんとずっとこうしていられたら……。
タカキはきゅうと、きつく手を握りしめる。
こうして、もっともっとお互いふれ合って、それで……。
本当に時が止まったような気がした。お互い動くのを止め、息づかいも聞こえないくらいの静寂。
タカキはゆっくり、ゆっくりとスイに顔を近づけた。彼女は柔らかく微笑んだまま、タカキの目を見つめ続けている。
目と目でキスしそうなくらい、熱い視線。どんどん、距離が縮まっていく。
唇が、目よりもさきに口づけしようとしたとき。
タカキはぴくりと動くのを止める。あと、ほんの数センチの距離がにくい。
「もう、行かなくちゃ」
スイはタカキを自身の膝から下ろした。ハッチを開けて、コックピットの中から出るよう促す。
タカキは、外に出ながらも泣きそうな顔をしてスイを見つめ続けた。
「スイさん」
「待っててね、私が帰ってくるの」
「スイさん」
やだ、まって。
無意識のうちに伸ばした手の前で、コックピットが閉まった。まるで自分から、戦争がスイを奪ったようで。
もう二度と、返してくれないような気がして。
「やだ、まって」
タカキはか細い声で呟いた。
置いていかないで。
俺をひとりにしないで。
俺を、おれを、
(どこか遠くへ連れてって)
タカキは、喉元までこみ上げた熱いものを、ぎゅっと飲み込んだ。
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