青の破軍

プロローグ


…………


ザッ……ザザザッ……ザッ……


「……え」


ザッ…ザ……


「ねえ……聞こえてる? 誰か、返事して……?」


ザザ……


「ねえ……アムロさん……ロラン……シン……エリス、マーク、ラナロウ……」


ザッ……ザザ……


「ねえ……お願い……誰か……」


……ザザザッ……


「……か……助けて……」


ザッ……ザザザッ……ザッ……




ザーー













「っ!!!?」


突然、頭をがつんと叩かれたような感覚に襲われて私は目を覚ました。

はじめは自分がどこにいるのか、なにをしていたのか、全くわからなかった。

だけど、手にしていたMS(モビルスーツ)のパーツや分厚い説明書、座り心地がいいよう、少々カスタマイズした操縦席を見て思い出した。

どうやら、私は作業中にコクピットの中で寝落ちしたらしい。

扉を開けたままにしてたから、天井につけられたぼろっちい裸電球の光が目に染みる。

……気分が悪い。こんなところで寝るから、あんな夢を見るんだ。


「よお、目が覚めたか」

「……おやっさん」


コクピットから少し顔を出すと、おやっさん……雪之丞さんが煙草をふかせていた。


「マルバがお前のこと探してたぞ。肝心なときに使えねえ雌豚だとよ」

「ああ……すぐ行く」


時計を見ると、すでに夕方。5、6時間くらい熟睡してたらしい。

こりゃあ、遅刻で数発殴られる覚悟をしなきゃかな。


「まだ直んねえのか? お前のボーイフレンドは」

「もう少しなんだけど、パーツがどうしてもね」

「そうか。まあ、怪しまれねえ程度にやんな」


おやっさんはさらに上を見上げた。どうやら、私が乗っているこいつの顔を見ているらしい。


「お前が来てから1年半くらいか。そろそろ、こいつを隠すのも限界だぞ」

「うん……わかってる。本当に、あと少しだから」

「ところでこいつの名前、なんつったっけ?」

「こいつ? こいつは……Hi-νガンダム」








「私の、アイリン・レア専用の、Hi-νガンダム」





………………。





[8]

*前次#


ページ:



ALICE+