トゥルーワードイズジェスト

嘘から出た実。まさにこの状況のことだろう。ソフトを作らせるために引き込んだ小娘が、一番得意としていたのはハッキング。そしてその能力を使い組織に利益を齎したとなれば、私に目が向くのは必然だったのかもしれない。それから度々組織の仕事に協力しているとカイピロスカというコードネームが与えられた。
解せないことがあるとすればベルモットが何故あの場所に連れてきたかだ。ソフトの完成を最優先とするならば、私を連れてくるのはおかしい。組織に認められ仕事の量が増やされたとしよう。すると最初の仕事である例のソフトを作る時間が減ってしまう。これは彼女の言っていることと矛盾している。この行動はまるでソフトが完成することを望んでいないようだ。
後はもう一つ。私を父の代わりにソフトを作らせようとしたのは恐らくベルモットの独断ということだ。もし組織全体で動いているのなら、私が速水空映というハッキング技術の高いだけなただの少女ではなく、板倉卓の娘である板倉空映ということを知っているのだから何かしらアクションを取ってくると思っていた。しかし何も無いということは私は板倉卓の娘だということは組織中に知れ渡って無いということだろう。彼女の言動はあまりに矛盾してそこが見えない。何が真実で何が嘘なのか。

声が遠くで聞こえた。

「よう、君がカイピロスカか?」
「……」
「おーい」
「……」
「無視か?」
「……あ、ごめん寝てた」

気付くと男は目の前にいた。黒髪に顎に髭を生やして、灰色のパーカーを羽織った男は随分と長い間、私を呼び掛けていたみたいだ。「私がカイピロスカだよ」と教えて「貴方は?」と相手にも自己紹介を求めた。すると男は「スコッチ」と名乗った。

「この間はありがとうな」
「……この間?えーと」

全く心当たりがない。そもそも初対面で「この間はありがとう」なんて言葉を言われても困る。覚えのないこの間について考えていると「君がバーボンと初めてあった日だよ」と教えてくれた。
どうやらあの日、バーボンという男の他に二人の仲間がいたと聞いていたが、その二人のうちの一人がこのスコッチという男らしい。

「君のお陰で無事に情報を手に入れることが出来たからね」
「……そんな大した事じゃないけど役に立てたなら良かった、です」
「です?」
「年上だから、一応」

何を思ったのか「お前って意外と可愛いやつだな」と言って頭を撫でられた。

「そういえば今何歳なんだ?」
「14」
「じゅ、14!?まだ中学生じゃないか」

思わず大声を上げた男に「そんなに驚くこと?」と聞いた。確かに例外かもしれない。大体この人は私を何歳だと思っていたんだろう。

「若くても高校生くらいだと思ってた」

若くてもってことはもっと上の年齢だと思ってたってことだろう。ムカッときて「どうせ私は老けてるよ」とそっぽ向いた。

「……二人で何してるんですか」
「ば、バーボン!それにライまで!」

先日の金髪の男が呆れた顔でこちらを見ていた。隣には目つきの悪い黒い男がいた。スコッチは「二人一緒にいるなんて珍しいな」と声をかけに行った。

「同じ任務をしていたんですから当然でしょう。それにしても、高校生も満たない女の子に何を……」
「さすがの俺もフォローはできないぞ、スコッチ」
「それは誤解だ!何もしてないぞ」
「知ってますよ。揶揄っただけです」

バーボンは咳払いをして「そちらも珍しい組み合わせですけど、何してたんですか?」聞いてきた。「この間のお礼をしただけだよ」
「ああ、あの時のですか」

その言葉に疑問を持ったのか、ライと呼ばれた長髪の男はバーボンの方を見た。