幸せな証拠


『さてと、かわいい我が子をお迎えにあがりますか。』

そう意気込んで晴天の中を歩いて行く。

『…飛雄、うまくやれてるといいんだけど…』

*
*

「…おい。」
「…何。」

呼びかけた先にいたのは国見と金田一。

「…った。」
「は?何だよ。聞こえねー」
「悪かったって言ってんだゴラァ!!」
「は!?何キレてんだよ!!」
「…きれてるわけじゃ」

ーーちゃんと話し合いな。

「…菅原?」
「…悪かった。」
「え…」

素直なその言葉に二人は驚きを隠せない。

「…なんだよ。」
「いや、だって…」
「菅原が謝るなんて…」

動揺を隠せない二人だが、暫くすると国見が言った。

「菅原、そもそも何に謝ってるの?」
「おい、国見…」

分かってる。何を謝ろうとしているのかくらい。
それでも…

「俺はお前の口から聞きたい。」

そうじゃないと、きっと俺たちは何度だってすれ違ってしまう。

「……俺はいつの間にか、自分の中だけでバレーをしていた。」
「…!」

話し出した彼に少し驚く金田一と冷静な国見。

「理想をお前らに押し付けていた…でも、本当は一緒に勝利に近づく方法を見つけるもんなんだって…
気付いたんだ…」

そして真っ直ぐ見つめて言う。

「もう一度、もう一度一緒にバレーをしてほしい。」


*
*
*

「飛雄お兄ちゃんと蛍兄ちゃんおそいね。」
『そうね〜もうすぐ帰ってくると思うけど、ご飯食べちゃおっか!』
「ううん、翔陽ね、待つよ!」
「僕も待つ!」
『そっか、二人とも優しいね〜!』

二人の頭を撫でてギュッとする。

ーーガチャン

「あ!」

ドアの音と同時に走り出す二人。

「蛍兄ちゃん!」
「パパ!」

そんな大きな声とドタンバタンと音が聞こえた。

『…大丈夫?』

飛びつかれて二人ともどこかしらぶつけたのか、顔が歪んでいた。

「大丈夫。」
「お前ら怪我してないか〜?」
「してない!」
「してないよ!」
『蛍、飛雄は?』

そう聞くと蛍は少しだけ微笑んで

「もうすぐ来るんじゃない?」

そう言って部屋に行ってしまった。
ご飯だから、きっとすぐ降りてくるだろう。そう思い、料理を運ぶ。

「今日はすき焼きか〜!」
『そう、飛雄帰ってこないけど、もうあの子達食べないと寝てしまうかもしれないから…』
「そっか。もう7:30だしな〜」
『…飛雄、大丈夫かしら。』

そんな不安が言葉に出る。
ーーただいま〜
そんな声に反応して二人は立ち上がる。

「飛雄兄ちゃん!」
「おかえりー!!」

リビングの扉をガチャンと開け放ち走っていく。
しかし、いつものようにドタンバタンと聞こえるかと思ったら聞こえない。
不思議に思い、玄関へ行くと

「今日、こいつらも飯一緒に食っていい?」

飛雄の隣に立つ二人の少年。

「英くんが来た!」
「勇くんも来た!」

嬉しそうに笑顔になり、国見と金田一に向かって抱っこをせがむ二人。そんな姿に微笑みながら、

『いらっしゃい。疲れたでしょう?さぁ、あがって!』

そう言ってみせた。
少しだけ緊張していた二人も

「ありがとうございます!」
「ありがとうございます。」

そう言って笑っていた。

「里紗?飛雄?何して…あぁ、国見くんに金田一くん。久しぶりだね。」

戻ってくるのが遅かったからか、孝支がやって来る。
そして笑って「いらっしゃい。」そう言った。
リビングに戻れば、蛍が

「あ、お疲れ様です。」

と挨拶している。

『今日はすき焼きですよ〜!』
「「やったー!!」」
「翔陽、忠、ちゃんと座って。」
「国見くんと金田一くんはここに座ればいいべ!」
「「ありがとうございます」」
『それじゃあ、食べようか!』

ーーいただきます!
美味しそうに食べる家族に息子の大切な友達。

「あ!俺の肉!」
「金田一、食事は弱肉強食だ。」
「国見、さすがに肉キープしすぎだろ。」

よかった。
それは仲直りもそうだけど

「蛍、今日すごいブロック決まってたな。」
「あ、ありがとうございます。」
「蛍と国見って似てるよな。ホントは飛雄と兄弟じゃなくて国見と兄弟なんじゃないの?」
「そうなの!?それなら翔陽のお兄ちゃんは蛍兄ちゃんと飛雄兄ちゃんと英くんと勇くん?」
「それはさすがに大家族すぎるべ〜」

こうやって幸せに居られることが。
笑顔な息子たちを見られることが、何よりも、幸せな証拠なのです。


Noah