美しき貴方と醜き私

変わった人だった。人間らしくない強さを持つ人だった。何故、そこまで強くいられるのかが不思議なほど、強い芯を持った人だった。

「俺は皆を守る!それが俺の責務だ!」

あたかも当然と言った様な口振りで、そう告げる。だから、そんな彼が私には眩しくて眩しくて仕方がなかった。


「いつもいつもすまないな。」
『いえ、これが私の仕事なので。』

私は蝶屋敷でアオイと一緒にしのぶさんのもとで働いていた。そう、私は鬼殺隊員だ。鬼殺隊員の癖に、急に鬼の首が切れなくなった。原因不明の病だった。少しずつ筋力が衰えていくこの病気は、鬼殺隊としての誇りを一気に奪い去った。鬼の首が切れない隊員など不必要。

「そうだな、君がいるから俺たちは安心して戦える。」
『え?』
「人間だからな。鬼とは違って再生できない。だけど、君たちが俺たちを癒してくれる。だからまた刀を持って戦える。」

にっこりと笑ってそう言った彼はさすが柱だと言わざるを得ない。きっとこの人の下で一緒に戦える人たちは誇りに思うだろう。鬼殺隊員として、一緒に任務をやり遂げたいと思うだろう。
私にはもう二度と叶わぬ夢だが。

『…ありがとうございます。お優しいですね。』
「本当のことを言ったまでだ。」
『でも、そう言われたのは初めてです。』
「…君は強い。」
『え?』

痛々しい傷の手当てをしていたのだが、その言葉に思わず手が止まる。

「どうした?」
『だって…私が強いって…』
「あぁ、強い。君は強い人だ。」

理解ができなかった。刀をふるっている時ならまだしも、今ではもう刀をふるうことはできない。重いものを持つことも出来ない。細くなってしまった手首を見てはため息をつく日々だというのに。

『私は強くなどありません…』
「何も身体の強さだけが真の強さではないと思っている。もし、君が鬼と出会って鬼にならないかと聞かれたらどうする?」
『断ります。』
「鬼となればその身体は強くなる。それでも?」
『はい。』
「うむ!やはり君は強い!」

バッと立ち上がった彼は私の両肩を掴む。大きな手から感じるのは燃えるような温かさ。彼の気持ちが流れ込んでくるようだった。

『煉獄さん?』
「君は心が強い!誰がなんと言おうと自信を持て!俺は君の強さを知っている!誰よりも見てきた!」

大きな瞳に吸い込まれそうになる。それくらい間近で見つめられると少し恥ずかしい。しかも話している内容が余計恥ずかしさに拍車をかける。

『ありがとう、ございます。』
「うむ!君は以前のように自信を持つべきだ。君の笑顔は美しい。」
『…もう、十分です。座ってください。手当ての続きをします。』

大きく太い手。毎日鍛え抜いている証だ。そんな彼から言われたのだから、信じてもいいだろうか。もう少し、自信を持ってもいいだろうか。

『はい、終わりました。今日は湯浴みはしないで下さいね。お大事になさってください。』
「うむ!ありがとう!」

にこやかに笑う彼はやっぱり眩しくて仕方がない。だけど、この人から言われた言葉が私に自信をくれるから、少しだけ眩しさが減った気がする。

『…もし、私のこの病が治ったら…』
「一緒に鬼を倒そう。平和のために。」

私の言いたいことが分かるのか、私の思いを汲んでくれる。それだけで、私は笑顔になれた。

いつか、彼の隣に立てる日が来ると信じて。私は今日も蝶屋敷で傷ついた人を癒やし続ける。

Noah