「…ごめん、飛雄。私達、これ以上は…ダメだと思う。」
繋いでいた手が離れる時、
もっといたい。とか、寂しい。とか…
そう思うもの。
俺だって、手が離れる瞬間、寂しいって思う。
だけど、あの日でそれが最後になるなんて思いもしなかった。
「飛雄、私達…別れよう。」
なんで、とか…
嫌だ。とか…
言えなかった。
「…わかった。」
初めて好きになった人、初めて付き合った人。
幸せだと思ってたのは俺だけだったのだろうか。
「飛雄、今までありがとう。」
涙を浮かべながら彼女はそう言った。
いつもなら、美月の隣に俺がいて、俺の隣に美月がいたのに。
そんな日々も終わり。
恋って残酷だ。
「美月……」
その声は届くこともなく、一年が経った。
繋ぐ手はいつか離れる運命で
手を離すと怖くなる。
君が俺から離れていく気がして。
「それで、お前はまだ引きずってんのか?」
「ノヤッさん、ストレート!」
「王様も意外と恋するんだね。」
「お前もストレートすぎだろ!!」
「てかさ、何で別れたの?別れなきゃよかったじゃん!」
「大人の恋には色々あるんだぜ、日向。」
「田中、お前も子供だろ。」
「うっ…縁下…」
何故、こんな話になったかというと、俺が告白されて振った所を田中さんと西谷さんに見られてしまったからだ。
「もう一回告れよ!男だろ!?」
「こ、告白ですか!?」
「そんだけ好きならいいと思うぞ。俺も。」
ガヤガヤ言う中で、山口が俺に聞いてきた。
「そもそも…何で美月は影山と別れたの?」
山口は美月と幼馴染らしく、色々話を聞いてくれたりした。そんな山口が、何故別れたのか。その理由を知っていないわけない。
「影山は、ちゃんとその理由知ってるの?」
ガヤガヤと騒いでいた先輩達まで静かになった。
それもそのはずだ。多分、山口は真剣に聞いてるからだ。
「美月も美月だけどさ、影山も知ろうとしないとだめだって。人間、考えてることを読むなんて出来ないし、仕方ないんだよ。
だけど、聞くことはできるんじゃないかな。」
「聞く……」
俺は立ち上がって用事を思い出しました!と言って走って出て行く。
「山口、やるな〜おい!」
「かっこよかったぞ!」
と、ガヤガヤする声を背に走る。
今思えば、走ったところでどこにいるのかも分からないのに、って感じだが、なぜか俺は別れたあの場所に行っていた。
いるわけない。そんなドラマみたいな事、あるわけない。なのに、いつの間にか俺はそこにいた。
「別れてもう、1年か…」
『そうだね…』
驚いて振り返るとそこには美月の姿。
『…忠から聞いたの。探してるって。きっと飛雄だから、ここに行ってると思ってた。』
困った様に笑う美月。
ずいぶんと久しぶりのように感じる。
「美月、俺、やっぱりまだ美月の事…好きだ!俺の事、嫌いなのは分かってる。でも、俺はこの1年ずっと美月が好きだった。」
驚いたように目を見開く美月。
『と、飛雄…』
「ごめん、あの時ちゃんと聞くべきだった。俺の悪いところ、直すから。だから…」
そう言うとギュッと手を握られる。
「美月…?」
『ありがとう、飛雄。そして、ごめんね。
私は飛雄の彼女であることが不安で仕方なかったの。』
ポツリポツリと話す美月を見る。
『飛雄、私に好きとか言ってくれないでしょ?とても不安だった。だって、飛雄はカッコイイし、結構女子の中でも人気なんだよ。それに比べて私はホントに普通だから…』
「美月…」
『笑っちゃうでしょ?そんな事で私…好きな人を遠ざけた。』
「ごめん。」
ギュッと抱き寄せると美月は肩を震わせて泣いた。
「…好きだよ。美月が俺にとって、何もかも初めてだったんだ。手を繋ぐのも、抱き締めるのも、好きだと思うことも全て。俺、あんま上手に言えねーし…不安にさせてしまったこと、反省する。ごめん。」
『飛雄…』
「でも、お前も俺の事…好きなんだろ?それなら、俺、離れたくねーよ。」
『こんな彼女でいいの?』
「美月がいい。」
そして、腕を緩めて言った。
「…好きだ。もう一度付き合ってほしい。」
その言葉は初めて告白した時と全く同じ言葉。
『…しかたないな〜』
そう言い、笑いながら言った。
『よろしくお願いします。』
「美月、俺、もう泣かせたりしねーから。」
『...うん、期待しとく。』
手を繋いで美月の隣を歩く。
「美月の手、離したくねー…」
『えー。』
「手を離したらまた、届かなくなりそーで怖い。」
『飛雄…』
すると美月はこう言った。
『繋いだ手は離れる運命だけど、また繋ぐために手を離すんだよ。…きっと。』
ニコッと笑った彼女。
あぁ、好きだなとまた思った。
そして、2人で手を繋いで歩いてる姿をまたあの二人に見られてたなんて、思いもしなかった。
fin
「おぉ、やるな〜」
「キスしねーのか?」
「キスできねーだろ。」
「そうだな、影山だしな。」
「帰ろーぜ、龍。明日、影山に色々と聞こうぜ!」
「おう!」