「よーし!終わった!!」
1日の勉強の終わりを告げるチャイムと同時に立ち上がる。
「田中〜今日からテスト勉強期間だぞ〜帰って勉強しろ〜!」
と先生に言われて立ち止まる。
テスト勉強。それは学生にとってのラスボスのような存在。
「あ''ーーー!!!勉強なんて消えちまえー!!!!」
そんな事を叫んでも無駄な事で、
仕方なく、家に帰るのだ。
また会いましょう
また会えたらきっと分かると思うんです。
この気持ちの意味が。
今日は部活がOFFの日。羽を伸ばすにはピッタリの日だ。
だが……
「赤点とるな!!!」
そうキャプテンに言われたら仕方がない。
仕方なく勉強漬け。
だけど、家に帰ってもできるわけがない。
「龍が勉強!?」
「うるせーよ!!」
「ここじゃなくて、図書館でも行けば?進んでないぞ、それ。」
姉にテキストを指差され、そして近くに置いてあった漫画を指差す。
「そんなの読んでるからでしょーが!」
勝ち誇ったように言う姉に何も言えるはずもなく、半ば半分投げやりで図書館へと向かった。
結構いるじゃねーか…
図書館はそれなりに混んでいた。
そのほとんどが学生で、テスト勉強に明け暮れているのだろう。
空いている席に座り、勉強を始める。
分からない。解らない。
テキストに書いてある文字が違う国の言葉にすら見えてしまう。
「あの…」
そんな時に聞こえた声。
『空いてる場所なくて…隣いいですか?』
周りを見ると、確かに座る場所が無かった。
「ど、どうぞ…」
『ありがとうございます。』
お礼を言いながら微笑む。
そんな笑顔に胸がトキメクのを確かに感じた。
青葉城西高校か…
制服をチラリと盗み見る。
青葉城西と言えば、及川で有名だ。
全国で3本指に入る実力。
バレー界で知らない者はいない。
と言っても過言ではない。
実際、強かったしな…
チーム内の人の力を100%出し切ってみせるトスに、とてもじゃないが、あのサーブは俺には正確にとれないだろう。
って…こんな事してる場合じゃない!勉強しねーと。
とは言えども、時間が進むだけでペンは進んではくれない。
『それ、正弦定理を使って。』
視界に現れた細い手がテキストを指差し、右から声が聞こえる。
『ずっと止まってたから…』
「え、あっありがとう。」
「ううん。」
「…言いにくいですけど、正弦定理ってナンデスカ?」
すると笑いながら言った。
「徹と一みたいな事言うのね。」
「?」
「正弦定理と言うのはね…」
慣れたかのように説明する。
優しい声に耳を傾けながらテキストに取り組む。
「で、できた…」
『よくできました〜』
初めての勉強に対する達成感と、微笑む彼女にまたトキメク。
『あ、もう閉館の時間だね…』
田中「え?」
時計を見ると閉館5分前。
あんなにいた人も今ではほとんど居なかった。
「えっと…ありがとう。教えてくれて。」
『ううん、いいよ。』
片付けながらそう言う。
「俺、田中 龍っていいます。烏野高校です。今日は本当にありがとうございました!」
名前、教えてください!
なんていう事が出来ず終い。
『烏野高校か〜何部?』
「あ、バレー部」
『そっか。』
荷物を持った彼女は言った。
『テスト、頑張ってね。田中君。…また会おうね。それじゃ。』
「え?あっ、ありがとうございました!」
これで何度目か分からないのありがとうを伝える。
それにしても、また会おうなんて事が出来るのだろうか。そんな疑問を抱きながらも彼女の背中を見送った。
そして、テストも終わったが、彼女の声や笑顔が忘れることができなかった。
*
*
*
*
*
そして月日は流れ、春高バレー予選。
条善寺高校と戦って勝った。
「ストレッチしとけよ〜」
そんな大地さんの声の向こうに、女子に囲まれた及川の姿。
「大王様スゲー!!」
「何人いんだ?」
「あ、城西のエースに叩かれてる!」
そんな事を言ってると、及川は一人の女性の名前を口にした。
「美月〜!」
『徹!抱きつくな!』
「ちょっ、お前俺に隠れても意味ねーだろーが!!」
岩泉の叫びは既に遅し。
二人は結局及川に抱きつかれたのだった。
『あー…』
「このクソ川どけ!!」
「それ暴言!!!」
『一、殴っていいよ。』
「おう、もう殴ってる。」
「ひどっ!!」
そんな会話がここまで聞こえる。
あれは確か…図書館で…
『ちょっと、徹。どいてよ。あ、あれ、飛雄じゃない?』
「俺には見えませーん。」
『一、この人なんなの。』
「お前の兄だろーが。」
「…影山、あの人と知り合い?」
「え?」
手を振っている人を見て、影山はあぁ。と言う。
「及川さんの双子の妹です。」
「え''っ!?」
「ちょっと、挨拶してきます。」
影山の背中を見送り思う。
あの及川の双子の妹!?てことは、先輩!?
そんな事を思っていると、
『田中くーん!』
そう呼ばれた。
「え?」
『あれ?忘れちゃったのかな?』
「!?美月、どこで知り合ったの!?」
『図書館。』
呼ばれたので、行かないわけにもいかず、とりあえずそっちに行く。
「えっと…この間はどうもありがとうございました。」
『テストできた?』
「おかげで赤点なしでした!」
「そっか!飛雄は?」
「お、俺はいいじゃないですか!」
『とったの?まぁ大丈夫よ〜徹も赤点取ってたし。』
「美月!?それ、トップシークレット!!」
「いや、シークレットもなにもみんな知ってんだろ。」
『田中君、バレー上手だったね!見たよ〜!』
「あ、ありがとうございます!」
上手だったと言われて嬉しくないはずがない。
だけど、それ以外にもこんなに嬉しいのは理由がある。
『これからも頑張ってね!』
「うっす!」
「もういい?美月も訳わからない男について行ったらダーメ。」
『え、徹。あんたにだけは言われたくない。』
「あ、あの…」
「ん?」
ドキドキと高鳴る胸の正体は
「好きです!!」
ノリに乗って言ってしまった。
みんなが驚いた顔をしている。
「そんなの許しーーー」
『徹うるさい。』
「岩ちゃーーん!!」
「お前が悪い。」
そんな事を聞きながらも後悔。
だって、お互い何も知らないし、振られるに決まってる。
「私の名前は及川 美月。青葉城西高校の3年です。」
そして微笑んでこう言った。
『私は田中君の事、全然知らないし、田中君も私の事、知らないでしょ?だから、教えて?』
驚いて見ると嬉しそうにこう言った。
『よろしくね、田中君。』
思わずガッツポーズをすると、及川は号泣しだし、認めないからね!!と言っていた。
後に、何で好きになったのかと聞くと、こう言った。
『私は練習試合とかで龍を見てたからね…龍のひたむきにバレーをする姿に惹かれた。』
そう言った彼女は出会った時と変わらぬ笑顔を向けてくれた。
fin