「京治!」
「何?」
「好きって言って!」
「は?」
「だから〜好きって言って!」
「急にどうし…」
「あ、大好きでもいいよ!」
「……ねぇ、吉村。」
「なに〜?」
「誰の入れ知恵?」
突然言われた言葉に驚く。
いや、いつもの俺なら驚きはしないんだけど、相手が悪かった。
「こうちゃんと木葉先輩。」
その二人の名前を聞いた瞬間、頭を抱え込んだ。
好きって言って!
ほら、言ってみせて。
君の気持ちは知ってるけどね。
「京治がこの言葉を言うと赤くなるって聞いてね、見たかったの〜!」
ーーヘイヘイヘーイ!美月!赤葦の弱点教えてやるゼーイ!
ーーみんなには内緒だぞ!
「あ、内緒だったんだった。」
「木兎さんと木葉さんね。」
「あ、京治…私が言ったって…」
「まあ、あの二人以外思いつかないから。」
ふぅ。と安堵した彼女を見て、俺の心は穏やかじゃないのは確かで。
さて、いつになったら気づいてくれるのか。
あの木兎さんでさえ気づかれてしまったのに。
「ほら、部活行くよ。」
「あ、私ちょっとだけ用事あるんだよね!」
「?どこに?」
「えーっと旧校舎に。」
「……誰から。」
穏やかではない心はさらに荒れる。
「溝端くん。あのサッカー部の!」
「行かなくていいよ。」
「え〜なんで。ダメだよ。」
「なんででも。」
「だって、大切な話って聞いたし。てことで、京治は先に行ってて!」
バイバーイと手を振りながら走っていく吉村。
「はあ。」
ため息をつきながら吉村の後を追う。
全く、よりによってなんであいつなんだ。
彼女を取っ替え引っ替えするで有名な彼を赤葦は知っていた。
だから止めたのに。
なにも知らない無垢な彼女がたまに恨めしい。
辿り着くとそこには二人の姿。
「好きです。」
「え、私を?」
「うん、可愛いし優しいし…付き合ってくれないかな?」
「ありがとう、でもね、私好きな人がいるの。」
「え?誰。」
好きな人がいるように見えない彼女が言った言葉に俺も彼も驚いた。
そして、次の言葉で俺は息を呑んだ。
「京治。赤葦京治。知ってるでしょ?」
ドキドキと鳴り響く音。
止まらないどころか加速する。
「はっ、あいつか。止めとけよ。」
「……。」
「あいつ、顔はいいけどすげー性格悪いぞ。」
「……。」
「あ、お前の事を悪く言ってたぜ?」
そんな事、一言も言ってないだろ。
と怒りが溢れ出す。
その時ーーー
「京治とあんた、仲良かったっけ?」
「え?」
見た事ないくらい怒った表情の彼女。
「私はね、京治が好きだからずっと見てるわけ!あんたと喋った事、ほとんどない事も知ってる!」
「そ、それは…」
「京治の事を悪く言うなら、覚悟しときなさいよ……あんたの事、言いふらしてやるんだから。」
「!?」
「私もあんたにはイラついてたんだよね。私の友達をめちゃくちゃにして捨ててさ。」
さすがにやばい。
そう思った俺は声を出していた。
「吉村。」
「え!?京治!?!?」
「あまりにも遅いから……」
「ご、ごめん…」
「で、他に何か言いたい事ある?溝端。」
「え、いや……」
そそくさと逃げようとする彼に静かな声で、
言いたい事があるなら直接聞くけど?
と言ってやった。
その瞬間逃げ出すように走り去っていったのを見て、吉村に向き合う。
「聞いてた…?」
「途中から。」
「ど、どこから……」
「吉村の好きな人あたりから。」
「ほぼ全部じゃん!!!」
顔を真っ赤にしている彼女をみて笑い、俺は言った。
「ねぇ。」
「何ですか……」
「好き。」
「…………えっ!?」
「ほら、吉村は?」
「なっ、知ってるでしょ!?!?」
「俺に言ってくれなきゃ意味がない。」
「……好き。赤葦京治が好き!!!」
半ばヤケクソで言ったようにもみえたが、それでも嬉しくなった。
「これからよろしく。美月。」
「京治が名前で呼んでくれた…」
そして嬉しそうに笑う彼女をいつまでも見ていたいと思った。