貴方は私の自慢の彼氏
「忠!」
「美月!?なんで!?」
「彼女が彼氏を待ってて何が悪い!」
貴方は私の自慢の彼氏
貴方のこと、私は大好きです。
「でも寒かったでしょ?」
「これ位大丈夫だよ。」
絶対心配される。
だけど必ず、
「待っててくれてありがとう。」
と笑顔で言ってくれる。
本当に優しい彼氏です。
「もうすぐ大会だから大変だね!春高バレー?だよね??」
「うん、みんな本気だよ。ツッキーも頑張ってる!」
「そっか!」
嬉しそうに話すかれを見ているととても嬉しくなる。
「じゃあ、美月。また明日ね!」
「うん、また明日ね。送ってくれてありがとう!」
繋いでいた手を解き、帰る忠を見送る。そして家に入る。
部屋について、ふと見た窓そこには走って来た道を戻っている忠の姿。
「な、なんで!?」
自分の家と逆走している彼を見て驚き、走って外に出る。
「何かあったの…?」
少し不安がよぎる。
しかし見たのは不安な光景ではなかった。
「忠…」
練習で何度もしているだろうサーブ。だけど何度も何度も繰り返してサーブする。
試合でミスした彼が悔しがる姿は会場にいた私には辛く見えた。
たぶん、他の人にはただのミスとして見えただろう。だけど、そのサーブに対する想いは、どんなスパイクにもどんなトスにも負けないくらいの想いがあった事を知っている。
「毎日…私を送った後、戻って練習してたの…?」
こっそり覗きながら一生懸命な姿を見る。
帰るふりをして、私に余計な気を使わせないように。
「忠…頑張れ。」
そうコッソリ呟き私は家に戻った。
*
*
*
*
翌日、部活に行く忠を見送る。
「今日も頑張ってね。」
「ありがと。美月、今日はどうする?先に帰る?」
「…うん、今日は先に帰るね。」
「そっか、気をつけて帰ってね。終わったらLINEする。」
「うん、待ってるね。」
そして別れた私は急いで家に帰り、おにぎりを2個作った。
そして嶋田マートへと走る。
「嶋田さん!」
「あれ、珍しい!美月ちゃん、おつかい?」
「ううん、これ、忠に渡して欲しくて。」
「これ…」
「彼女のくせに昨日初めて知ったの、ここで毎日頑張ってるって事。
私は応援しかできないから…あ、でも、私からって言わないでね!
嶋田さんからの差し入れって事でお願い!!」
「うん、分かったよ。
…ねぇ、美月ちゃんは忠がミスした事、かっこ悪いと思った?」
「何それ。誰かそんな事言ってたの?」
「いや、そういう訳じゃないんだけどね。」
「かっこいいよ。忠は私の自慢の彼氏だよ。毎日真剣な忠を見てて、かっこ悪いなんて思うわけない。
…付き合ってるからじゃないよ。付き合っていなかったとしても、私はかっこいいって思うよ。」
「そっか。」
「うん、それに、失敗しない人間なんていないじゃん?
失敗したらその分伸びるよ。
絶対に、忠はいい選手になるよ。」
そう言い切った私は何となく気持ちよかった。
あぁ、本当に彼が好きなんだな。
そう思った。
嶋田さんにお礼を言い、別れる。
そして何時間か後にLINEがくる。
今、家の前にいるんだけど…会えるかな?
珍しいお誘いに走って玄関に行く。
「忠!部活終わったの?」
「うん。」
「それで…どうしたの?珍しいじゃん。こんな時間に会いたいって…」
そう言うと腕を引かれあっという間に抱きしめられた。
「忠?」
「俺、頑張るから。」
「え?」
「いい選手になって見せるから。」
「え…」
「嶋田さんから聞いたよ。全部。美月が俺を悪く言った瞬間、怒り気味になった事も、俺の事をすごく見ていてくれた事も…」
「……全部?」
「うん。」
嶋田さん…公開処刑じゃん!!
「おにぎり、美味しかったよ。」
「それも嶋田さん言ったの?」
「ううん、それは差し入れとして貰ったんだけどね…美月だったんでしょ?」
「な、何で分かったの?」
「これだけ一緒にいて、美月の作るおにぎりだってたくさん食べてきたんだ。
分かるよ、何だって。」
優しい笑顔で言う彼にときめく胸。
「忠…」
「ありがとう。本当に感謝してるんだよ。
…これからも気を使わないで。帰れる時は一緒に帰りたい。
待ってるのが嫌なら全然構わないよ!?
でも……一緒に帰れるなら、帰りたい。」
「…待つよ。何時間だって待ってる。でも、負担になりたくないの。」
「負担なわけないよ。俺がそうしたいんだ。」
そう言うと、忠は抱きしめていた手を解いた。
「遅くにごめんね。もうこんな時間だし、俺、もう帰るよ。」
「ううん、会えて嬉しかった。気をつけて帰ってね。」
「うん、ありがとう!」
太陽みたいな笑顔で笑うと手を振りながら帰って行く。
見えなくなるまで見送り、
本当に自慢の彼氏だよ。
そう言った。
fin