勝利したけどミスをして…
そうやって落ち込む俺にいう事は、
「全員でやったからこその勝利でしょーが。いつまで落ち込んでんの!」
練習ばかりしている俺にいう事は
「頑張りすぎ。ちょっとは休め。休むことも練習でしょ。」
そして負けて悔しくて、そんな俺にいう事は
「頑張った結果がこれなら仕方ない。彼らはそれ以上に頑張ったんだよ。
負けたら終わりなの?違うよ。
今から倒すために頑張ればいいじゃない。」
決して、俺を褒める事はなかった。
そして、見捨てる事もなかった。
「一。」
だけどいつだって
「頑張れ。」
応援してくれた。
教えてくれた人
俺のバレー人生、
いつだってお前の言葉で支えられてきた。
この人生でバレーにかけてきた俺にとっての最高の理解者だった。
「岩ちゃん、まだ気づいてないの?それ、恋だよ。」
色恋沙汰とか興味ない。
況して、俺が好きとかそんな風に思う事なんて無縁だと自分でも思っていた。
そして、そんな事を及川に指摘される事こそが俺を不快にさせた。
「は?ちげーよ。クソ川、黙ってろ。」
「クソ!?岩ちゃん?そんな事やってたら、後悔するからね!!
早くしないと、美月ちゃんだって…」
多分、珍しくあいつがもっともらしいことを言ったような気がする。
「ずっと側にいてくれるわけじゃないんだよ。」
確かにその通りだと思う。
『最高の理解者』だとしても、『永遠に続く』なんて言葉は当てはまらない。
俺は…これからあいつとどんな関係でいたいんだ…
悩めども出てくる答えが見当たらない。
かと言って、あいつの言葉を認められない自分がいる。
中途半端すぎだろ…
いつになく嫌気がさす。
「一、そんなに眉間に皺寄せてたらジジイになるよ。」
「あ?」
いつもの声にいつもの様に返事をする。
「先生が面談するから来いって。」
「あー…お前は終わったのか?」
「うん。」
じゃ、早く行っておいでよ〜
そう言い、去っていく。
その背中を見ながら、なんとなく…このまま離れそうで怖くなった。
*
*
*
「お前は推薦がきてるし、真面目だし、俺はそんなに心配してないが…」
「?」
「本当に、これでいいんだな?及川と一緒の大学に行かないなんて…。」
「はい。あいつは俺がいなくてもやって行けますから。」
「……まぁ、まだ時間はある。もう少し考えるといい。」
何故、そんな風に言うのか理解できなかったが、その場を俺は後にした。
*
*
*
「一!帰ろー!」
「おう。」
「もれなく、及川さんとも帰れるよ!」
テヘペロ☆
と言った表情をし、俺は溜息をついた。
「久しぶりだね〜及川。」
「美月!?昨日3人で帰ったでしょ!?」
「あれーそうだったっけー?いつも通り、女の子と帰ったと勘違いしちゃったー。」
「美月、棒読みすぎ!!!泣いちゃうよ!?」
「勝手に泣け。」
「ひどっ!!」
そんな事を言いながらも一緒に帰るのは日課で。(一時期及川不在)
美月は俺の自転車の後ろに乗る。二台の自転車で色んなところに行ったものだ。
「ラーメン食べたい。」
「は?」
「よし、ラーメン食べに行こう。」
「え?」
そう、驚く俺と及川を無視してこんな風に突然決めて。
「ほら、一。早くこげ。」
美月は自転車の後ろに乗りながら命令する。
「はー!?」
「どこのラーメン屋?」
「えーとね、そこ真っ直ぐ行って次を右〜」
「…はぁ〜。」
豪快に溜息を吐きながらも3人で向かう。
「ここ〜!」
「なんでこんな所、知ってるの?」
「あ、ここ〜?まぁ、入ったら教える〜ほらほら、はいろー!」
なんだか誤魔化されている気がしたがとりあえず中に入る。
「私は醤油ラーメン!」
「俺も。」
「俺も〜!」
はいよ。と店主が言う。
「で、なんでこんなとろーー」
「私、3人で同じ大学に行きたい。」
真っ直ぐな目で射抜かれそうになる。
「…岩ちゃん、俺に隠し事してるの、気づいてるよ。まぁ、下らない事なのは確かだよね。」
「下らないって…!」
「バレーするんでしょ?スパイカーとして。それならさ、もう10年以上、俺のトスを受けてきたのに、どうして離れるのさ。
俺は岩ちゃんがいないと勝ったって意味ないし…負けたままなんてまっぴらだよ。」
「一。私、今まで言えなかったことがある。
一と及川のバレー、大好きだよ。」
いつになく弱々しい美月を見た気がした。
そして、その言葉が胸を熱くさせた。
「ねぇ、一。私は貴方と離れたいと思った日なんて一度もない。」
多分、この言葉が俺の気持ちを導き出してくれた。
あぁ、好きなんだって。
それと同時に、叶わないと思った。
だって、あいつは俺を『幼馴染み』と見ているだろうから…
「…及川、お前、どこ推薦受けんだ。」
「W大。」
そう言った及川の大学は俺には推薦なんて来ていない。
しかも、偏差値が65の難関私立だ。
「一。」
「あ?」
「行こう。」
いつだって俺を振り回して…だけどーー
「しかたねーな。」
「及川!!」
「美月ちゃん!!」
「おら、早く食って帰るぞ。」
「うん!」
いつだって俺はお前に教えてもらってばかりだ。
「はっ!俺、先帰る!」
「ああ!?」
「ごっめーん☆バイバーイ!」
走って出て行く後ろ姿を見て唖然。
「るなちゃんって子からLINEで復縁話されてた。」
ラーメンを食べながらそう言う美月。
よく見てるな…
なんて思いながらも、少しそのるなちゃんとやらに感謝した。
「行くか。」
「ん。」
ラーメン屋をでて自転車にまたがる。その後ろに美月が座る。全然重さを感じさせない美月。
とりあえず、何を話そう…
自分の気持ちに気づいた途端これだ。
情けないったらありゃしない。
「一。」
「あ?」
「ありがとう。」
「何がだ。」
「…今まで私に色んな事を教えてくれたから。」
思わず、自転車を止めて振り向く。
「おい、何があった。」
「これを言ったらもう、一緒にいられない。」
「は?そんな事、あるわけねーだろ。」
「好きなんだよ…私、一の事が…」
「え、ちょっと待て。」
「待てるわけないでしょうが!!」
「いや、だから!その…お前が俺を好きだなんて思いもしなくて…だな。」
「何。ハッキリ言ってよ。」
「〜だから!好きなんだよ!!俺も!!」
「え。」
「なんだよ…」
「本当に…?」
「何度も言わすんじゃねーよ。」
「だって…」
「何。」
「私、一にいつも…」
「沢山の事を教えてもらってた。」
「え?」
驚いたように目を見開く美月。
「確かに、褒めてもらったりとかはなかったけどな、俺はお前の言葉にいつも支えられてた。」
「一…」
「…好きだ。」
多分、顔が真っ赤だろうなんて思いながらもそう言うと、嬉しそうな笑顔で美月は言った。
「一、大好き!」
これから先も隣に…
fin