ハッピーエンドはあと一歩

これは私の高校最後の願い。











ハッピーエンドはあと一歩
クラス発表は私の大イベント














高校1年の春、ドキドキとワクワクでいっぱいのクラス発表。
そんな時に見つけたのはいかにもスポーツマンのような彼。何故かわからないけど心惹かれるままずっと見ていたと思う。


「岩ちゃん!同じクラスだね!」

「誰が嬉しくてお前なんかと一緒に…」

「ひどい!及川さんと一緒になれて本当は嬉しいくせに〜〜」


噂には聞いていたイケメンがこの高校に入ると。それがたぶん彼だろう。


「おら、早く部活行くぞ。」


何の部活だろう?そう思いながら彼が見ていた掲示板に目を移す。


『岩泉 一…』


きっとこの人のことだろう。
残念ながらそのクラスに私の名前はなかった。

隣のクラスか…

残念だと思う気持ちが恋だなんてこの時点で知るはずもなかった。


「美月行こ!」

『チカは本当に及川くんが好きなんだね…』


学校にも慣れ、友達もできた。
チカは及川が大好きらしく、よく体育館から見ている。
それについていくのが私。


「美月だって岩泉見れるじゃん!」


まぁ、確かにそうなんだけども…

この気持ちが恋だと教えてくれたのは、紛れもなくチカだ。


「ほらほら!いくよ!」


引っ張られながらも

今日はどんな姿を見れるんだろう。

なんて楽しみにしている自分がいる。


体育館は及川ファンばかり。
そんな波に負けずとチカは先へ進む。かくいう私はそこから少し距離を置いたところで見ていた。


『今日もすごいな…』


ビックリする位ジャンプし、スパイクを打つ。


『腕がいくつあっても足りない…』


そんな事を言いながらただ見ているだけ。
岩泉は分け隔てなく優しいと評判で、女子と笑顔で言葉をかわす姿も何度か見た。
私もその中の一人になりたいと願ってもなれるはずもなく、1年が過ぎ去った。


2年目の春、


「…やった。」


人は驚くと声が思い切り出せないと知った。


「やったじゃん。岩泉と一緒じゃん。」


そう言ったチカも私と同じクラス。


『どうしよう』

「なにが?」

『嬉しすぎる…』

「あーはいはい。」


少し呆れながらも笑って私の頭を撫でるチカは姉のようだ。かと言って、この私が話せるわけもなく…


「ねぇ、いつまでそんな風に見てるの?」


頬杖をつきながら、私と同じく岩泉を見ている。


『十分すぎるくらいだよ。』

「はぁー。」

『ねぇ、チカ!岩泉くんと話す時どんな感じ??』

「普通すぎて何もないけど」

『そっかー。』


チカは席が近いこともあって岩泉とよく話している。
その度に私に岩泉のことを教えてくれる。


「岩泉〜」


自分も話せたらいいのに。


「なんだよ。」

「お、来たか。」

『えっ…』


目の前にいるのはあの岩泉。


「で、なんだよ虹山。」

「あー美月が岩泉と話したいって言うから。」

「虹山の友達が?」


真正面にいる彼は輝いていて


「吉村だろ?」

『は、はい!』

「あ、ねぇ岩泉、ジュース買ってきてよ」

「は?」

「このあいだの小テスト、私勝ったよね?」

「…なにがいいんだよ。」

「美月と一緒に買ってきてよ。美月、美味しそうなのよろしく!」

『チ、チカ…』

「ほら早く早く…喉かーわーいーたー!!」

「うるせぇ」

「痛っ!」


騒いだチカを岩泉は叩く。


「行くか。」

『うん…』


歩き出した岩泉について少し後ろを振り返ると笑顔でチカが手を振っていた。


「それにしても虹山うるせーな。及川みてぇだ。」

『岩泉くんは及川くんといつも一緒にいるよね。』

「いつもじゃねーよ。クラスだってちげぇし。」

「岩ちゃーーーん!!」


後ろから声が聞こえたと思ったら岩泉くんの背中に及川くんが飛び乗った。


「うっ…」

「岩ちゃん、女の子と仲良くなれたの!?」

「邪魔だ!!」


背負い投げをして及川が飛ぶ。


「痛いよ!」

「うるせぇ!」


いつものようにやり取りをする彼ら。本当に仲良しなんだな…って思う。


「吉村、こいつはほっといていこーぜ。」

『えっ、あ、うん。』

「へぇ〜チカとよくいる子だね?」

『は、はい。』

「あはは、緊張しちゃって可愛い〜」

「おい、ナンパしてんじゃねぇよ及川。」

「してません〜」

「あーうるせぇ…」


そう言うと岩泉は美月の手首を掴む。


『えっ!?』

「行くぞ!」


走り出した彼にやっとの思いで
ついて行く。


『い、岩っ岩泉くん!』


乱れる呼吸の中、叫ぶと気づいたようにスピードを緩める。


「わりぃ…あぁするしかなくてな。」


申し訳なさそうに話す彼。ではいつの間にかわたしの手首から離れていた。そのことに少し寂しさを覚えながら、乱れた呼吸を整える。


『ううん、大丈夫。それにしても、本当に足が速いんだね。』

「んなことねーよ。」


そう言いながら笑う彼。自販機の前に立ち、お金を入れる。


「あいつ、どれがいいんだ?」

「チカはこれが好きだよ〜」

「あーそういやいつも飲んでたっけ。」


ボタンを押すとガタンという音と同時に冷たいジュースが落ちてきた。


「吉村は?」

「いや、いいよいいよ!」

「いや、思いっきり走らせちまったし、及川も迷惑かけたからな。その詫びだ。」


優しい声にドキッとしながらいちごオレを買ってもらった。


「吉村もよく体育館来るよな?誰か目当ての奴いるのか?」

『あ、私はチカの付き添いだから…』

「あー、及川目当てだもんな。あいつ。」


歩くスピードを合わせてくれる。やっぱり優しいなぁって思った。


「…今度来るとき、俺のこと見てろよ。」


教室まであと一歩。言われた言葉は人生で一番胸が高鳴った瞬間かもしれない。


「ほらよ。次はぜってー奢らせてやるからな。」

「無理無理。バレー馬鹿がこの私に勝てるとでも?」


何事もなかったかのようにチカに話しかけている岩泉。


2人が付き合うのはもう目の前。


fin


Noah