こへがベストな選択

多分、これが僕たちにとって


ベストな選択。
















これがベストな選択
愛してるよ。
そうだね、知ってるよ。だって私も好きだもの。

世界で一番に。




















告白は彼女の方からだった。


とくに何かを話したわけでもなく、ただのクラスメートだった気がする。

少し戸惑った俺は


「ごめん。今はバレーに集中したいから。」


そう言った。


『うん、そう言うと思ってた。』


こういう時、普通なら顔を俯かせて泣くか、立ち去るかするのではないだろうか。
彼女は満足そうにそういった。


『時間取らせてごめんなさい。バレー、頑張ってね。』
「ありがとう。」


少し驚きながらもお礼を言うと彼女は去っていった。

今思えば、あの時、俺は恋に落ちたんじゃないかな。なんて思う。


その日からなんとなく目で追いかけるようになった。

あの日、魔法をかけられたように。
振られたにもかかわらず、そんな素振りも見せず俺と話す吉村はとても不思議な存在だった。


次に告白したのは俺だった。


「ねぇ、吉村。」
『なに??』
「吉村のことが好きです。
付き合ってくれませんか。」


人生で初めての告白は少しかた苦しい敬語の告白。

そんな俺に驚いたように目を開き、少し笑っている吉村に


「…笑うなよ。」


と口を尖らせた。


『ごめんごめん…赤葦らしいなって思ってさ。』


まさかだったよ。
そんな結果になるなるて、正直思ってなかった。


『…ごめん、赤葦のこと、好きだよ。それは私が告白した時から変わらない。だけど、その好きって気持ちが分からない…
今が楽しすぎて、友達としても赤葦を好きなのか、異性としての赤葦が好きなのか…
わからない。』


そっか。とそう口にするしかなかった。
正直、平気な顔をするのは辛かった。もしかしたら、あの時の吉村は強がっていただけで、俺と同じで辛かったのかもしれない。


それから月日は流れ、2年になった。あいつとはクラスが離れてしまってあまり話す事もなくなった。

話したい。

そう思うのは俺だけなのだろうか。
そうだとしたらずるい。
俺に恋しといて、俺にその恋を移していくのだから。


そんな頃、俺はよく女の子から呼び出されるようになった。
知っている子から知らない子まで。
後輩先輩様々…

モテてるよね。

そうよく言われた。でも正直、ピンとこないのは俺があいつに気が向きすぎているからだと思う。


「…最近モテモテですね。」


廊下の窓を見ればそこにいた俺の好きな人。
どうやら教科書を貸してほしいらしい。


『ねぇ、赤葦。』
「何?吉村。」
『…なんでもない。』


ありがとうと言って教科書を借りていく後ろ姿を眺める。

うまくいかない。

こんなにも難しいものなのか。
そりゃそうだ人の心は見えないのだから。


『教科書ありがと!』


そう言って渡された教科書に貼ってあった付箋。


好きです。


そう、3度目は俺を振ったあいつからの告白。


『…気づいたの。クラスが離れて話せなくなって、モヤモヤするのは…好きだから。
友達じゃなくて1人の異性として。』


1度目の告白の時の余裕はどこへいったのか。
顔を真っ赤にして今にでも逃げ出したいと顔に大きく書かれている。


そんな姿に少し笑って


「俺も好き。」


そう言った。
さらに顔を赤くしたのはあいつの方。俺を待たせた罰だ。
それからいろんな思い出を作った。
手を繋いだり、抱きしめたり、キスをしたり、それ以上のこともした。
ただ側にいるだけで幸せだった。

だけど3年の夏、


『京治、私…地方の国立を受けようと思うの。』


衝撃的だった。
俺と同じ大学に行くものだと思っていたから。


「どこ受けようとしてるの?」
『神戸に。でもきっと無理だから金沢かな…』


どちらにしても遠い。
こうやって抱きしめられる距離にはいなくなるということだ。


『ごめん…京治。』


謝る彼女を抱きしめて、謝らなくていいから。といった。
だから、謝らなくていいから、行かないで。
そんな言葉をのみこんで。
結局俺は都内の木兎さんや黒尾さんがいるバレーが強い大学へ。
彼女は宣言通り、金沢大学へ。


『…今までありがとう。そしてワガママでごめんね。』
「うん。本当にワガママでどうしようもないやつだったよ。」
『うん…京治しか私を彼女としてみてくれる人はいないかもね。』


涙で潤んでいる目を伏せているのはキャリーバッグを持ったあいつの姿。

. .
『だから…赤葦、好きな人ができたら、幸せになって。私のことは忘れて。』


とうとうこぼれ落ちた涙は頬を伝って落ちて消える。


「美月…」
『でももし、いつかまた会えるなら…これから先を共に生きる事が運命なら……ううん、なんでもない。じゃあね。赤葦。バレーがんばれ。
応援、してるから。』


そう言うとくるりと背を向けて歩いて行く。
駅員に切符を見せる彼女を呆然と見て初めて涙がこぼれた。


愛してた。


その言葉は嘘じゃない。
だからこの二人の選択だって、
ベストな選択なはずだ。


fin


Noah