お決まりの言葉

『ねえねえ!!』
「何?」
『バレーをしよう!!』











お決まりの言葉
俺の周りはバレー好きで溢れている。













『ねえねえ!!トスあげて!!』
「嫌だ。」
『ケチ!ケチ赤葦!!』


頬を膨らませ、ケチだと喚く彼女は俺の同級生で女子バレー部のキャプテン。

どこか似ていると思えば、あの木兎さんの従姉妹だと聞いて驚きを隠せなかったことを覚えている。

彼とは似ていない長めの漆黒の髪と瞳。
年頃の女の子とはかけ離れたスポーツ女子。

そして彼と似ている射抜くような大きな眼と性格。


『ねえ、一回だけ!』
「俺じゃなくて、女バレのセッターにやってもらいなよ。」
『あの子が自主練に付き合ってくれたら雪が降るよ!?!?』


そんな大袈裟な。と思いながらも、そう言えば黒尾さんもそんな風に言ってたなと思いながら、


「一本だけ。」


そう言って許してしまう。
木兎家、そして親戚一同には赤葦家は敵わないのではないだろうか…


そうして結局乱入してきた木兎さんのせいでチャイムと同時にクラスに着く。


「おはよー」と声を掛けてくるクラスメートに「おはよ」と言う。
そんな繰り返される光景。
そして走ってくる女子生徒。


『おっはよー!!』


元気よく入ってくるのは吉村。
そんな吉村を担任は呆れたように、「赤葦はちゃんとこれてるんだからお前もちゃんとこい。」と言っている。


ごめんごめんと言いながら笑う彼女は俺の前の席。


『もー赤葦ったら先に行っちゃうから怒られたじゃん!』
「吉村に合わせたら遅刻するだろ。」


とか言うのはいつものこと。
頬を膨らませまたもやブーブー文句を言っている。

でもすぐに、



『今日もトスありがとね!
やっぱり赤葦のトスが一番好きかも!』


と笑うのだからタチが悪い。


「一番か…」
『そう!一番!!』



キラキラと目を輝かせ、嬉しそうに話す彼女を俺は目をそらすしかできなかった。


いつの日か”俺のトス”じゃなくて、”俺が”にならないだろうか。


好きなんだけどな。
結構前から。


そんなこと言えずにまた日は巡る。
そうしてお決まりの言葉を聞くのだ。


『ねえねえ!』
「何?」


そう、とびっきりの笑顔で


『バレーをしよう!!』


end


Noah