神に恋など出来るはずがない

さてさて、今日の地球は平和でしょうか?
























神に恋など出来るはずがない
だってそうでしょう?
愛しても時の流れが彼とは違いすぎるから……




























私の名前は美月。
みんなが言う神様ってやつ。
って言っても、神様って実はたくさんいて、それぞれの世界に1人監視者として生まれるの。
そうそう、今日も新しい世界ができていてね、新しい神様が生まれましたよ。

まぁ、そんな話は置いておいて、私が監視しているのはいたって普通の世界ね。

ん?普通の世界以外?
そうねぇ、モンスターと戦ったりしている世界もあるわね。
魔王がいてそれを倒す世界。
私の監視下の世界ではゲームとかアニメの世界だけど、そんな世界もあるのよ。

今のところ、魔王が倒されたって言う報告は聞いてないわ。
あ、でも魔王の幼馴染が勇者側についたとは聞いたわね。


あ、また脱線したわね。
話を戻しましょう。


ここの世界では平和が一番って世界ね。
ほら、ちょっとだけ覗いてみる?


「影山ー!!大地さんがミーティングだって!」
「おう。」
「あ!月島と山口!大地さんが」
「ミーティングでしょ。」
「げっ何で知ってんだよ…!」
「日向の声は大きいからね〜丸聞こえだったよ。」


まぁこんな感じ。
やっぱり平和が一番よね。
彼らは烏野高校のバレー部なのよ。


「先生の世界は楽しそうですね!」


一通り話し終えると楽しそうな声を耳にする。


『そうね。楽しいと思うわ。』
「私も早く神様になりたい!」
『そう、なら頑張ってお勉強しないとね。』
「ねえ、先生。」
『ん?』
「恋を人間とはしちゃいけないの?」
『そうね…』


そうして私は口を閉ざした。


「先生?」
『あ、今日はここまでよ。』
「はーい。」


返事をしている生徒を見て、私はそのこの前から立ち去った。


『恋…かあ…』


神と人間。
絶対に交わることのない関係。
そもそも、神に時の流れなどない。
まぁ、自分の世界が続く限りだけど。世界が破滅したら私も役目を終える。そう、人間でいう死。
それに対して人間はあっという間。


『それでも…』


会いたいと思う。そんな人間に出会ってしまった。


『徹…』


そっと彼の名前を言葉にする。
今日のこの世界は雨のようだ。
彼と会った日もたしかこんな雨の日だった。

*
*
*

『うわ〜どうしよう。』


突然の雨に驚く。

おっかしいな。晴れだから視察に来たはずなのに。

しかしよく見ればそれは明日の天気。

またやらかしたな。
と思いながらも、
まぁ、いいか。
なんて言いながら近くの学校に雨宿りさせてもらうことにした。


『北側第一か〜ここ、前に一度視察に来たな〜。』


たしか、バレーが強かったわね。
全体的にどの部活も頑張っているようだったけど…


『ああ、そう言えば及川徹と岩泉一の信頼関係は凄かったな。』


以前の調査表を見てもその事が記されていた。

フラフラと歩けば辿り着く先は体育館。

そっと覗くとそこには及川徹の姿。


『でも違う…彼はこんな人じゃない。』


余裕のない。そんな表情。
この数ヶ月でここまで変わるのかと言うくらいに。

彼に向かって手をかざし、彼の記憶を見る。


あぁ、彼は今ーーー


「…誰?」
『えっ…』


彼はまっすぐ私を見て言った。
おかしい、そんな事が起こるはずがない。

だって、私はーー


『…私の事が見えるの?』
「?そりゃここにいるならそうでしょ。」
「及川、何独り言言ってんだよ。」


私の後ろから現れたのはあの岩泉一。彼には私が見えていないようだ。


「え、岩ちゃん、そこに女の子がいるじゃん。」
「は?いねーよ。…お前、大丈夫か?」
「そんなはず…」
「とにかく帰るべ。ほれ、ストレッチ。」


背中を叩かれ、痛いよ!なんて言いながらもう一度私を見た。


「…ねぇ、名前は?」


岩泉が片付けをしに倉庫へ入ったのを見ると彼はそう言った。


『…私は美月よ。』
「美月ちゃんは何者?幽霊?」
『違うよ。』
「じゃあ何で俺だけ見えるの。」


私も不思議に思った。


『そんなの知らないわ。こっちが聞きたい。』


そう言った私を冷酷な目で見る及川。警戒しているようだ。


「及川行くぞ。」
「うん…」


もう一度こっちを見てから及川は岩泉と共に体育館を出た。


『及川、徹…』


数ヶ月前まで笑顔で溢れていたのに……


『人間って複雑ね…』


上には上がいて、だけど下にもいて……

彼は笑えるようになるのだろうか。


それから私は暫く側で様子を見ていた。

最初は警戒心を露わにしていた彼だったが、いつのまにか話すようになった。


「美月、見ててよ〜」
『はいはい。』


ニコッと笑いながらいう彼だけど、それは本当の笑顔じゃない。
多分、心から笑えなくなってしまったんだろう。


「おい、帰るぞ。」
「岩ちゃんは俺のお母ちゃんなの?」
「あ?お前、殴られてーのか?」
「ごめんごめん!だから殴らないでっ!!」


またやってる…

そう思いながら少しだけ笑った。

及川がネットを片付けに倉庫へ行くと岩泉がこちらを向いた。


「……そこにいるんだろ?」
「!?」


彼は私の姿が見えていないだろう。
だけど、しっかり私を見つめる。


「及川は…もっと楽しそうに笑う奴なんだ。最近の笑顔は、あれは及川の笑顔じゃねぇ。この俺にも無理して笑ってくるくらいだからな。」


傍目から見ればただの独り言。
だけど、彼は私が、いや、誰かがいるとわかって言っている。


「……どうしてやればあいつを救えるんだよ…クソッ」


苦しげな表情の彼の前に手をかざす。

彼もまた悩んでいるのだろう。
友達であり、仲間であり、相棒であり…そんな彼が悩む姿、そして何よりも頼ってはくれないことに。


『だけど、彼を救うのはきっと貴方なのでしょうね。』


届きはしないけれど、私はそう呟いた。


「…ありがとな。」
『!?』


届きはしない言葉が聞こえたのだろうか?彼は笑っていた。


「最近は、前よりも楽しそうなんだ。」


どこか寂しそうに、だけど嬉しそうに。

彼は笑いながら言った。


「岩ちゃーーん!!」
「おう、クソ川。片付けたか。遅えぞ。」
「もー!岩ちゃんはすぐそう言う!」


2人が帰って行く姿を見ながらその後をつける。


「じゃーな、早く寝ろよ。」
「はーい!明日ね!」


及川の家にたどり着き、岩泉は別れを告げ帰って行く。


「美月、今日はどうしてついてきたの?」
『なんとなく。』
「そっか〜あ、これ俺の家!入って入って!」


手を掴まれ半ば強引に家に連れて行かれる。
ただ、

嫌じゃない…


『意外と片付いているのね。』
「意外!?!?」


シンプルに統一された家具。
そして…


『本当にバレーが好きなのね。』


昔から使われているのだろう。
年季が入ったそれは当たり前のようにこの部屋にあった。


『…岩泉はいい人ね。』
「岩ちゃん?」
『貴方の事を心配している。そう、今も…』


特定の人が考えている事を見る事なんて神の私からしてみればそれは容易な事。

だけど、そんな事しなくったって分かる。


『彼がきっと貴方を救ってくれる。』
「…美月は?」
『え?』
「美月は?俺のこと、心配してくれてるの?」


時が止まる。なんて言葉がよく当てはまるだろう。


『お、及川…』
「ねぇ、徹って呼んで。」
『な、何言って…』
「美月、俺…」


言わないで。

そう心の中で呟いた。
それは私が彼を好きだと気付きたくなかったから。

だけど、もう遅かった。


「好きだよ。」


消えかかりそうな声を聞きながら重ね合わされた唇を感じながら目を閉じる。


駄目だ。

そう思えば思うほど…


『徹…』
「美月、ずっと側にいてよ…」


好きになる。


『それは出来ないよ…だって貴方は私を見れなくなってしまうもの。』


そして、忘れるの。
これは夢だったのだと。
思うようになる。


「そんな事っ!」
『私が見えなくなって、それでも…それでも貴方は私を好きだなんて思えないわ。
だって、そんなの辛いもの…』


そんな事ないと言い続ける彼。

なぜ、彼は私を見てしまったんだろう。


『ねぇ、聞いて。』
「嫌だ。」
『お願い、聞いて…』


だけど、私の事を永遠に見続けられるなんて不可能。

私が彼の前に姿を『見せる魔法』を使う事がない限り…


『私と徹は違う。それは出会った時からわかってた事。だけど…私はまだ言ってない事があるの。』


そう、それは…


『私は神だという事よ…』


驚いたように見る彼。


『私には時間なんてない。何億年も前から存在しているの。』


私が人間だったら…


『本当はこうして触れ合ってはいけない存在。』


彼を私が救えたのかな。


『こうやって…貴方を想うことも…』
「美月…」
『徹。貴方がいつか心から笑えるように。私が魔法をかけてあげる。』
「美月…?まって、止めて!!」


どうしてこうも貴方は察しがいいの。


「俺の記憶から美月を消さないでっ!!」
『徹…好きよ。』


ギュッと抱き締めてある呪文を唱える。


すると彼は私に倒れかかった。


『…さようなら。』


触れるだけのキスをして天界に戻る。

そして泣いた。
きっとこの世界も雨模様。

次の日、覗いてみればいつもの通り、練習をする彼の姿。

その隣に岩泉がいる。


そうやって見守り続けていた。

私の思った通り、彼を救ったのは岩泉だった。
飽きもせずバレー一色の中学時代は一人の男に阻まれた。
高校生活も越えられなかった。

だけど、彼等は大学でもバレーを続け、ついに勝利を手にした。

バレー界で『阿吽』と全世界で評されるほどに。

そして、家族ができた。
相変わらず岩泉と及川は家族ぐるみで仲良しのようだ。


そうして…


『徹、長い間…お疲れ様。
ゆっくりおやすみ。』




私には時の流れなんてない。
その世界が続く限り、永遠を手にしている。
素晴らしく、時に残酷。

人間に恋をしてはいけない。

それはきっと以前そうなってしまった神からの警告。


『神に恋なんて…』


出来るはずかないじゃない。




永遠に生きるという事は…そういう事だから。


fin


Noah