いつからかなんて分からない。
彼はいつも私の隣にいてくれていた。
放っておいてよ
私の隣にはいつも貴方がいる。
ツンツン頭が良く似合う、黒髪の男の子。
「美月!」
いつも楽しそうに笑っては、私を連れ出し、研磨の家に行き、バレーをした。
『クラブに入ればいいのに。』
「研磨が嫌っていうしな〜」
「…クロだけすればいいのに。」
そう言いながら三人でボールを空へと上げた小学生の頃。
『あと5分…』
「あと5分…じゃねぇ!」
半ば無理やり入れられた男子バレー部のマネージャー。
朝練の時はいつもこう。
『なんでお母さん、クロ入れるの!?』
「人望があるんです。」
ニヤニヤ笑いながら言う彼は同じ背丈だったのに。
『ムカつく〜』
今じゃ見上げなきゃいけない。
「好きな人出来たか?」
『できません。』
「早く作れよ〜彼氏!」
『煩い!クロもできてないじゃん!』
「俺はすぐ出来るからな〜」
自信ありげな表情。
確かに、私の学年でもイケメンな先輩ランキングで5本の指に入る。
少し、胸が痛くなった。
『クロ卒業か〜』
「まあな。」
『音駒だっけ?』
「おう。」
『なんでまたあんな進学校に…』
「俺は頭いいからな〜」
ニヤニヤ笑いながらそう言う彼。
本当はバレーの強い梟谷学園とかに進学したかった事。
そして私立からの推薦が来ていた事。
だけど私立に入ればお金はとてもかかる。梟谷のような強豪になれば、遠征費だってそこらの高校よりかかる。
そうやって、悩んでいた事、全部知ってたの。
『ふん、赤点とって留年してしまえ。』
「それもいいかもな。美月と研磨いるし。」
一切、顔には出さなかったけれど
私や研磨の前では強がっていたけど、
『そんな事言って、赤点なんて取らないんでしょ。』
泣きそうになる私は下を向く。
いつだってそうだ。
クロは隣にいるのにいつも一歩先を歩いてる。
それは、走っても走っても追いつけない時の流れ。
「…美月。」
放っておいていいのに、
いつも私が泣くと辛そうな表情で頭をそっと撫でる。
「音駒で待ってる。」
そうして一年という月日を恨んだ中学時代。
「ヘイヘイヘーイ!元気か?美月!!」
『えぇ、元気ですよ。木兎さんは周りが疲れるくらい元気ですね。』
「…美月、それ、暴言。」
「…多分、暴言とは捉えられてないので、大丈夫ですよ。」
「おう!俺は元気だぜ!!」
「うるせーよ、木兎。」
「ヘイヘイヘーイ!元気ねーなー黒尾!!」
音駒高校に進学し、男子バレー部のマネとして活動する私。
そしてクロと研磨。
いつもの三人。
猫又監督が復帰して、音駒は弱小から強豪への道を歩み始めた。
そして、今では強豪の梟谷学園と合同練習を何度もしている。
「俺、昨日告白された。」
「まぢかよ黒尾!!」
「木兎さん、黒尾さんが前にも言ったら同じ事言いましたよ。」
「なんだよ〜モテるのかよ黒尾〜」
しょぼくれる木兎をケラケラ笑う黒尾。
胸がギュッと締め付けられた。
『クロ、一体どこにいるの。』
部活の事で校内を探し回る。
三年の教室もいない、体育館にもいない。一体どこだよ。
階段を登り、屋上へ行けば、クロがいた。
クロ!そう呼ぼうとした声が押し戻る。
「黒尾くんのこと、ずっと前から好きだったの。」
ずっと前から好きなのは私の方だよ。
胸が痛むたびに、知らないふりをしたけれど、もうそんな事出来るわけない。
「ごめん。」
そう言った彼。
女の子は泣きながらクロの横を通り過ぎる。
「いつから覗きが趣味になったんだよ。」
冗談で言った彼の表情が私わ見て一気に真剣な表情になった。
「なんで泣いてんだよ…」
『うるさい!放っておいて!』
「ダメだ。」
逃げる私を抱きしめる。
『なんでっ』
「は?」
『なんでクロはいつもいつも…』
「…美月。俺は好きでもない女を抱きしめるほど、女好きじゃねーよ。むしろ女と話さねーんだよ。」
『うそ…だってクロ、もててる…』
「そりゃ、話しかけられたら話すさ。でも、俺から話しかけるのは美月だけ。」
放っておいて。
その言葉をいつも無視してきた彼の理由。
「好きだ。好きなやつを放っておけるわけねーだろ。」
fin