勝ち負けが全てではないとは言うけれど、それでも負けるのは悔しい。
どう考えても、私のチームは弱い。
朝練は決まって私を含めて5人集まればいい方。
放課後の練習だってバイトやら塾やらで全然集まらない。
だけど、
『私はこのチームが好きだったよ。』
「……おう。」
『弱かったけどね。』
「…。」
『ここで終わりか……』
誰も知らない戦い
勝手も負けても、
私達も真剣だったから。
泣き顔の私を見て彼は何も言わずにただ隣にいてくれた。
『このユニホームも違う子が着るんだね。』
‘‘1”と書かれたユニホーム。
あぁ、また泣けてきそう。
「確かに、他の誰かが着るかもしれねーけど……」
『?』
「お前がそのユニホームを着て堂々と戦った事は変わりねーよ。」
『黒尾……』
「よくあいつらをまとめてたと思う。俺ならとっくの昔にキレてた。」
『ふふっ…黒尾はそうだよね。』
少しだけ嬉しかった。
こんな弱小校なんて、誰一人見向きもしないだろう。
だけど彼は見てくれていた。
『ありがとう。黒尾。』
「俺は何もしてねーよ。」
『ううん、黒尾のお陰で元気が出た。』
すると少しだけ微笑んでこっちを見てくれる。
「じゃ、俺そろそろ行くわ。」
『……見てるから!』
「おう!」
別れたあと、観客席に行くと既に部員たちは音駒高校の戦うコートの前にいた。
「あっ、美月!早く!始まるよ!」
『うん!』
ーー音駒高校?強いの?
ーー昔は強かったらしいけど。
ーーとくに強い選手がいるわけでもねーしな。
なんて言われているのを大会初日に耳にした。
弱小校のレッテルを貼られるとそれはなかなかとることはできない。
だけど、それを剥がすほどの実力は彼等にはあった。
『すごい……』
大胆ではないけれど、天才もいるわけでもないけれど、
繋ぐ。
それはこのチームの努力の量を表すものに他ならなかった。
『私達も…頑張ればあんな風に戦えたのかな。』
「美月…」
『もっと…したかったな…』
彼らのように。
大好きなバレーを。
その試合は圧勝。
相手が弱いわけじゃない、
彼らが強いのだ。
『おめでとう、黒尾。』
「おう、サンキュー。」
『私たちの分も勝ちなさいよ。』
「そんな事、当たり前だろ。」
ニヤッと笑って見せた彼に私も笑って見せた。
私達のバレーは終わった。
これからは違うバレー部となり、新たなチームで戦うのだろう。
だけど、彼が見てくれていたから。
私は何度だって胸を張って言えるよ。
『私もバレーしてたから。本気で勝つために頑張ってたよ。』
頭一個分以上違う彼に頭を撫でられる。
それだけで十分な気がした。
誰も知らなくても、たった一人の貴方が私の戦いを見ていてくれてたから。
fin