AM0:00

大学一年の私は居酒屋のバイトをしている。
友達からの誘いで入ったバイトだけどみんな良い人ばかりで楽しい職場だ。

そして私の好きな先輩がいる。









AM0:00
あなたに出会って好きになった時間。








居酒屋は金曜日、土曜日が一番忙しい。平日に比べて人は入るし、宴会する日だってある。
17時に入って19時ごろには走り回ってるような状態。

『いらっしゃいませー!ご予約はされていますか?』

初めての頃に比べたら、だいぶ慣れてきた。

「美月〜!四番テーブルにお願い〜!」
『はーい!』

友達も忙しそうにジョッキを持って走りまわる。

『お待たせしました!カシスオレンジ2つです!』
「あのー、串カツまだですか?」
『申し訳ありません!確認してまいりますので、少々お待ちください!』


人が多いと料理が出てくるのも遅くなるのは当然で、こんなこともよくある。

『すみません、四番テーブルの串カツまだできてないですか?』

厨房はもう戦のよう。

「おい、揚げ場ー!どうなってるー!」
「もうできるからまっとけー!」

そんな声が響きながら厨房はドタバタ状態。

「赤葦!これ、渡してくれー!」

赤葦さん。
そう、この人が私の好きな人。

「おつかれ、そっちも大変だね。
はい、お願いね。」
『はい!!』

赤葦さんは優しい。
一見、無愛想だけど、話すととても優しい笑顔を見せてくれる。

走り回ること数時間、時刻は23:50

「美月ちゃん、もう上がっていいぞー!」
『あ、ありがとうございます!お先です!!』

まだ忙しそうに手を動かしながらも気をつけてと言ってくれる人たちを見ると、ここをバイト先に選んで良かったとつくづく思う。

『ふぅー、疲れた。』
「お疲れ様。」

驚いて振り返ると、私服を着た赤葦さん。

『お疲れ様です!もう上がりですか?』
「うん、明日用事があるから…早めにお願いした。」

自転車を押しながらこちらに向かってくる。

「家、どのへん?」
『駅の近くなので、ここから歩いて10分ぐらいです!』
「送るよ。」
『でも、用事があるなら早く帰った方が…』
「俺も駅方面だからいいよ。」


優しく微笑む赤葦さん。
今日はなんて幸せな日なんだろう。

『はー、疲れた!』
「今日は多かったね。」
『お客さんハイペース過ぎて…深夜隊の人達、処理が大変だなってため息ついてましたよ。』
「さすが金曜日だね。」

今日あったことを話しながら歩く。もう少しでついてしまう。まだ話したいって思いながらも進むしかない足。

『そういえば、明日の予定って彼女さんとデートですか?』
「彼女なんていないよ。バレーの練習試合があるんだ。」
『あ、そっか。赤葦さんバレー部でしたね。』
「そうそう。」
『じゃあスパイクとか打つんですか?』
「いや、俺はセッターだからトスを上げるだけ。」
『じゃあ司令塔なんですね!』
「まあ、そんな感じだね。」
『きっとかっこいいんでしょうね〜』

間違いない。かっこよくないわけがない。
むしろその姿を拝みたいくらいだ。

「…じゃあ、見にくる?」
『え?』

今、来るって言った?

「駅ついたよ。電車来るんじゃない?」
『え、あっ、あのっ!』
「10時から俺の大学でやってるから。また明日ね。」


聞く間も無くたたみかけるようにして言われた場所と時間。
帰って行く彼の姿を見て私は動けなかった。





end


Noah