正体がバレなくなる不思議アイテム
みょうじなまえは大層お人好しな人間である。お人好しも度が過ぎて、教師や周りに推されるがまま二年連続で生徒会、三年に上がった今年はついに生徒会長に就任してしまった。頼まれたら断れないのか、はたまた生来の質なのか、恐ろしいまでに面倒見が良い彼女は、どちらにしても周りから好かれ頼られる存在だった。
「宮地くん、数学のノート出した?」
「やべ、忘れてた。今日までだっけ?」
「うん、今日の放課後までに集めるんだけど間に合いそうかな?」
明らかにこちらに非があるのに、申し訳なさそうに眉尻を下げるのだから居心地が悪い。放課後までには必ず渡す旨を伝えれば、みょうじはホッとしたように柔らかく笑った。
普段家でも部活でも男所帯のため、邪気のない女子の笑顔に気恥しさを感じる反面、どうしても気になることがある。聞いたところで何となく答えに察しは付いているのだが、気恥ずかしさを誤魔化すついでに訊ねてみた。
「みょうじって眼鏡かけてたか?」
「ああ、これ?今日の私のラッキーアイテムなんだって」
予想通りの答えに思わず机に突っ伏してしまった。普段掛けない黒縁眼鏡を持ち上げながら似合う?なんて冗談めかして聞いてくるみょうじは可愛らしいと思うが、自分の後輩が迷惑を掛けていると思うと顔が引き攣る。
「なんかわりぃな、毎日毎日うちの後輩が」
「むしろ私こそ申し訳ないよ!バスケ部って朝練も放課後も遅くまでやってて忙しいだろうに……」
「いや、アイツのおは朝信仰は病気みてーなもんだから……」
恐らく遠い目をしたオレに色々察してくれたらしいみょうじは「宮地くんも大変だね」と苦笑いを零した。
「緑間くんもすごいけど、宮地くんもスタメン入りしたんでしょ?おめでとう!」
「おー、さんきゅ。一年に負けねーよう頑張るわ」
「応援してるよ。テスト前とか力になれることあったら言ってね」
ふんわり笑いながら席に戻るみょうじの後ろ姿を、優等生を絵に描いたような奴だなぁとぼんやり思う。クラスメイトとして何とか迷惑を掛けないようにしなければと、緑色の変人を頭に思い浮かべ、人知れず頷いた。
(170512)