会いたかった。
話したかった。

ずっと、あの時のことを謝りたかった。

ようやく見つけた彼女に、このぐちゃぐちゃな感情の何から伝えれば良いのか。
ろくな答えも出ないまま、ただ一緒に過ごせることが幸せで、肝心なことからは逃げていた。











朝、仕事の前。
昼、撮影の合間。

時間が開けば、無理にでも会いに来る俺のことを、彼女はどう思っていたのか。

自分のことは、怖くて何も聞けんかった。


それでも、会う度少しずつ笑顔が増えていく彼女は、昔と何も変わらなくて。

唯一変わった“廉くん”という呼び方でさえ、口にしてもらえるだけで嬉しかった。








だから、なんでも話した。

自分があの時、あの場所にいた理由。
今までのこと。
現状。
好きなもの。
ハマっているもの。

会えなかった分だけ、彼女が知らないであろう自分のことを、なんでもいいから知ってほしくてーーー。

そうして、会う度少しずつ増えていく彼女の笑顔が、ただ嬉しかった。



きっと戻れる。

このまま、こうして彼女と少しずつ時間を重ねていけば、いつかはまた、昔のように笑い合えるはず。









久しぶりの再会から数日。
もう何度目の、強引な誘いの後だっただろう。

ふと訪れた沈黙の中で、話を変えた。



「お前、雰囲気変わったよな」

それは、知らない彼女にまだ慣れていない自分の精一杯だった。















「なに。急に黙るやん」
「え、いや……」
「女は化けるもんなあ、昔はただのちんちくりんやったくせに」
「ち、!?」
「なに?ちゃうん?」
「ち、違わない、けど……」

自分でも分かる。
低くなった声と、鋭く細めた目元。

誰がどう見ても機嫌を損ねた俺に、大人しい彼女が怯えないはずがない。


理解はしていた。
急に雰囲気が変わった俺のことを見て、困った様に笑う彼女の気持ちは、手に取るように分かっていた。


そう、分かっていたはずなのに、止められなかった。











ずっと昔からーーー自分が守らなければと、大切に思っていた彼女の変化が悔しかった。



俺の知らない間に、変わった彼女。

そんな彼女の隣に、いるかも分からない自分以外の誰かを想像し、心底腹が立った。











似合わんよ。


その言葉を聞き、それまで怯えた様子でこちらを見つめていただけだった彼女が、諦めたように笑う。



「廉くんは、勝手だよね」
「は?」

見たこともない表情で、俺といても楽しくないと言い切った彼女に、返す言葉も見つからなかった。








「もう会いに来ないで」



再会した彼女と、こうして会えるようになり、少しずつでも見せてくれるようになった笑顔が、嬉しかった。

時間をかけ、あと何回会いに来れば、彼女はまた、俺のことを廉と呼んでくれるだろう。


控え目な彼女が、たまに見せるほころんだ笑み。

その幸せそうな笑顔が、自分に向けられることは、きっともう無い。

一瞬で理解してしまった事実に、目の前が真っ暗になった。