今日、会える?
お昼の休憩中。
届いたメッセージに、にやける頬を抑えながら、彼に電話を掛けた。
『はーい』
「もしもし黒崎くん?」
『そうでーす。黒崎くんですよー』
「お疲れ様」
『うん、めっちゃ疲れた』
いつもとは違う。
電話越しでも分かる憔悴しきった声に、一瞬なんと声を掛ければいいのか分からなくなった。
「黒崎くん」
『ん?』
「今日なに食べたい?」
どうしたの、なんて聞いても、きっと何も言ってくれない。
名前は何も知らなくていい。
そう言って、たった一人で戦うことを決めた彼の為に、わたしが出来ることは決まっている。
『ん〜 お肉かなぁ』
「じゃあ生姜焼きは?」
『最っ高』
「デザートは××のロールケーキがいいなぁ」
『は?それ県外じゃん』
「ふふ、夜まで暇でしょ」
『え〜 じゃあ黒崎くん大好き♡って可愛く言ってくれたら買ってきてあげるよ』
「黒崎くん大好き♡」
『はっや笑』
「よろしくね」
はいはい、と 電話の向こうで楽しげに笑う声が聞こえてホッとした。
『名前』
「ん?」
『俺も好きだよ』
不意打ちで言われる。
その優しい声に驚いて、思わず持っていたお弁当のおかずを落としそうになった。
「………ずるい」
『っふは、照れてる顔見たかったなー』
「もう!そろそろ仕事戻るから切るよ?!」
『嘘。まだご飯食べてるでしょ』
「食べてないもん!」
『俺はまだ切りたくない』
「う……」
『ははっ、名前ほんとチョロすぎ』
「もう!」
落としかけたおかずを口に運びながら、ケラケラ笑う彼の声を聞く。
楽しそう。
ちょっと高めの独特な笑い声に、もう一度耳を澄ませて名前を呼んだ。
「黒崎くん」
『ん?』
好きだよ。
早く会いたいね。
ぽつりと呟いたその言葉に、電話の向こうで彼が天を仰いでいたことを、わたしは知らない。